かがみよかがみでは、「思い出の一着」をテーマにエッセイを募集しました。たくさんのご応募の中から、編集部が一番心に響いたエッセイを「かがみすと賞」として選ばせていただきました。
今回は、かがみすと賞1本、編集部選として2本のエッセイをご紹介いたします。
◆かがみすと賞
服は誰かに着られることで完成する。きっと服も息をしているんだ(藤田膿)
あらすじ:他人からどう見られるかばかりが気になって、大量の服を買っては、フリマに出していた。本当に自分に必要な服って?フリマにも出せないゴミ袋二つ分の服を前に考えた。「ないなら作れば良いじゃない」
◆担当編集者からのコメント
フリマには出さないものの、衣替えをする度に大きなゴミ袋が出る私も、クローゼットと向き合わないと…と反省です。
そして袖を通すと、服が産声をあげた気がした。服は誰かに着られることで完成する。
今まで無下に扱ってきた服たちも声をあげていたのだろうか。
生地を選んで、型紙を当てて切り出し、ミシンで縫って…。手作業を経てできた服が、着ることで「産声をあげる」というこの表現が、とても印象的でした。身近だけど忘れがちな日常を大切にすることを思い出させてくれるエッセイでした。
◆次点①
女三世代で奔走した成人式の振袖探し。それは祖母の一声で始まった(初夏のアリス)
あらすじ:17歳の誕生日を迎える前、祖母の鶴の一声で私の成人式の振り袖探しが始まった。「一回しか着ないのに」という私の反論は無視され、祖母・母・私の女3世代で月2、3回呉服屋をはしごすることになった。
◆担当編集者からのコメント
京都の人の心意気、三世代の会話。ユーモアたっぷりで、心温まるエピソードでした。
予想していたよりも、ずっときれいな私が鏡の中にいた。
賭けてもいい。これを馬鹿馬鹿しいナルシシズムだと笑う人は、本当に大好きな服を、着たことがない人だ。自分をいちばんよく見せるメイクに、出会ったことがない人だ。
鏡の中に、いままで出会ったことのない自分がいたときの高揚感。自分を一番きれいに見せてくれる晴れ着との出会い。着ることの幸せがつまった文章でした。
◆次点②
私、綺麗なんだ。オシャレに興味がなかった私が買った人生で1番高い服(夏目わか)
あらすじ:周りがオシャレするのを滑稽だと思うほど、興味がなかった私。けれど、成人式用の振り袖を見に行って、目にとまった白とピンクの美しい着物に引きつけられた。試着すると当時の彼が「すげぇ、似合う」とぽつりと言った。
◆担当編集者からのコメント
素敵な一着に出会うことで、変わっていく夏目さんの気持ちの変化に共感しました。
成人式の日、気に入った振袖に手を通し、キレイに髪をセットしてもらい化粧をした。
その姿を見た家族は「すっごくキレイ!写真を撮る!」とはしゃぎながら私の周りをぐるりと囲んだ。
この場面が目に浮かぶようです。身近な家族からの称賛は何より嬉しいし、これをきっかけにご自分の「綺麗」を発見していく様子が微笑ましかったです。
以上、「思い出の一着」のかがみすと賞、編集部選の発表でした!たくさんの素敵なご投稿を、本当にありがとうございました。
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