在宅勤務で広がる地方移住。地方に住んだら「住民税」は変わる?
お金の専門家 / 経済評論家の横川楓さんが、日々のニュースを切り口に、身近な暮らしにつながる経済の話や、知らないと損するお金にまつわる知識を解説します。2回目のテーマは、「地方移住と住民税」についてです。
お金の専門家 / 経済評論家の横川楓さんが、日々のニュースを切り口に、身近な暮らしにつながる経済の話や、知らないと損するお金にまつわる知識を解説します。2回目のテーマは、「地方移住と住民税」についてです。
コロナ禍をきっかけに、必ずしも会社へ出社をして仕事をするという働き方ではなく、在宅勤務という働き方が普及しつつあります。そんな中で、注目されているのが「地方移住」です。
総務省は29日、住民基本台帳に基づく2020年の人口移動報告をまとめた。東京都は、転入者が転出者数を上回る「転入超過」が3万1125人で、前年よりも62・5%減った。新型コロナウイルスの感染拡大によってテレワークが広がり、都市部から郊外に転出する動きが続いたことなどが影響したとみられる。
東京への転入超過、約3万人に半減 郊外への転出続く:朝日新聞デジタル
地方への移住希望者を支援する認定NPO法人「ふるさと回帰支援センター」のアンケート結果によれば、40代以下の移住相談者の割合も増えています。
また、個人が自分自身で地方へ移住してテレワークでの仕事をメインとするだけではなく、大手芸能事務所のアミューズが山梨県に、人材サービス大手のパソナグループが兵庫県に、といったように、企業も本社機能を地方へ移すという動きも増えており、それに伴っての地方移住というケースも考えられます。
東京23区に在住または通勤する人が東京圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)外の地方創生移住支援事業を実施している都道府県・市町村へ移住し、起業や就業を行う場合に最大100万円(単身の場合最大60万円)もらうことができる移住支援金という制度もあります。
「ふるさと回帰支援センター」のアンケート結果にもあったように、出勤時間よりも「もう一部屋」の余裕を求めての引越しも選択肢の一つでしょう。
このように今いる場所から別の場所へ移住して働くという選択肢も広がっている中、住んでいる場所が変わるということは、住民税にどう影響するのでしょうか。
まず大前提として、住民税は住んでいる自治体へ納めるもの。厳密に言えば1月1日に住民票のある住所地の自治体に対して納めます。
会社勤めであれば年末調整後に、個人事業主であれば確定申告後に、1年間の所得が決まります。そのあとに、前年の所得をもとに計算され決定した1年分の住民税を6月から翌年5月まで支払っていく形となります。
前年の所得によって金額が決まるものなので、社会人になる前の学生のうちにたくさん稼いでいたという人以外は、社会人1年目は通常住民税が引かれず、2年目の6月分のお給料から住民税が引かれます。
先ほど住民税は前年の所得で決まると説明しましたが、さらにくわしく説明すると、住民税は所得によって変わる「所得割」という部分と、所得に関係なく定額の「均等割」という部分で構成されています。
「所得割」の部分は、決まった税率のもと所得に応じて計算され、当然所得が高ければ税金の金額も高くなります。一部自治体で標準税率以外の税率を採用しているところもありますが、基本的には住んでいる場所によって変わるわけではありません。
一方で、「均等割」の部分は標準税額が決まっており、基本は全国一律です。ただ、自治体の裁量で金額を設定することができるため、同じ所得であっても、住んでいる自治体の均等割の金額が大きいと住民税の金額も増えるということもあり得ます。
しかし、住んでいる場所によって変わるといっても、万単位の金額ではなく、年間で1,000円程度。実際に住民税の金額に大きく影響を与えるのは、住む場所よりも所得金額となります。
会社勤めである限り、基本的にはお給料から天引きした住民税を会社が自分の代わりに納めてくれているので、あまり住民税を自分が払っているという実感がないという人も多いはず。
しかし、個人も、会社も、従来の「拠点」にとらわれなくなってきた今だからこそ、自分が払っている住民税の納め先や仕組みについて、改めて理解を深めておきましょう。
(朝日新聞社の経済メディア『bizble』から転載しました)
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