4月から18歳が成人に。株もローンも? 大人も知っておきたい、お金にまつわる変化
お金の専門家 / 経済評論家の横川楓さんが、日々のニュースを切り口に、身近な暮らしにつながる経済の話や、知らないと損するお金にまつわる知識を解説します。最終回は「18歳への成人年齢引き下げ」がテーマです。
お金の専門家 / 経済評論家の横川楓さんが、日々のニュースを切り口に、身近な暮らしにつながる経済の話や、知らないと損するお金にまつわる知識を解説します。最終回は「18歳への成人年齢引き下げ」がテーマです。
今年4月は、お金に関して大きく変化するトピックが2つあります。
1つ目が高校の家庭科の授業で、「資産形成」の内容が必修化すること。2つ目が、成人年齢が18歳に引き下げられることです。
高校生のうちから投資についても学べる環境が整えられるのはいいことですが、そのぶん知識が必要となります。さらに、成人年齢が引き下げられることで、親の同意なしでさまざまな契約ができるようになり、トラブルに巻き込まれてしまうリスクも増えることになります。
成人年齢が来年4月から18歳に引き下げられることに伴い、消費者トラブルの増加が懸念されています。保護者の同意なく結んだ契約を取り消すことができる民法の規定が、これまで適用対象だった18歳以上20歳未満の人に適用されなくなるためです。 (2021年8月20日付朝日新聞記事)
(2021年8月20日付朝日新聞記事)
そこで、特に成人年齢引き下げに伴い「お金」の面ではどんなことが変わり、何に気をつけていかなければならないのか、一緒に考えてみましょう。
まずはクレジットカードです。今までは20歳にならないと作れなかったクレジットカードが、18歳で作れるようになります。
クレジットカードは後払いの仕組み。決まった引き落とし日に口座に必ずクレジットカード支払い分のお金を入れておく必要があります。
「後から支払えばいいや」と放置してしまうと、延滞金、つまり余計なお金を支払うことになるだけでなく、信用機関に「この人は支払いを延滞する人ですよ」という情報が登録されてしまうのです。そうすると、新しいクレジットカードを作れなくなったり、大きなローンを組めなくなったりすることがあります。
また、クレジットカードを作りすぎてしまうと、たくさんの後払いを抱えてることになり、いつ、いくら払うのかという管理も大変になります。「支払える金額以上の利用はしない」というのは、クレジットカードの鉄則です。
そして、もう1つ気を付けたいのが、リボ払いの仕組みです。毎月の引き落としが定額や、定額に近い金額となるリボ払いは、1回あたりの引き落とし額が少なくお得に感じてしまいますが、買い物をした元の金額に加えて手数料も支払う仕組み。
気が付いたら元の金額を払いきるまでとてつもない時間がかかってしまった、なんてことがないように、うかつにリボ払いにするのはやめましょう。最近では、契約当初から支払い方法がリボ払いの設定となっているクレジットカードもあり、カードを作る際にも注意が必要です。
大きな金額の支払いをする際に分割で支払うことができるローンなども、親の同意なく契約できるようになります。
エステや脱毛、スクール、高額な商品など、ローンを組んでの分割払いの契約を持ちかけられたときに、誰かに相談することなく契約をしてしまえるのです。そこで知っておきたいのが、クーリングオフの制度です。クーリングオフ制度は、一定の期間内であれば無条件で契約を取り消せる仕組み。
エステや語学教室、結婚相談所などは8日間、マルチ商法などは20日間の間に、はがきを送付して通知をすることでクーリングオフをすることができます。
期間内に手続きをしないとキャンセルができないので、どうしたらいいのかわからない場合はとりあえず消費者ホットラインに電話するなど、すぐに行動に移すようにしましょう。
また証券口座も、多くの証券会社で18歳から親の同意なしで開設できるようになります。
18歳から投資ができるようになるというのは、若いうちから積極的にお金を増やすことができる半面、学校の授業だけでは理解しきれない知識や投資のためのお金をどう捻出していくかなど、自分自身で学んでいかなければなりません。
そのほか、携帯電話の購入や賃貸借契約なども親の同意なくできるようになるなど、色々なリスクにさらされる年齢が下がります。それだけに、より若いうちにお金に関する知識をつけることの大切さが説かれています。
学校でも習う機会はあるにせよ、それがしっかり身についているかというのは、また別問題。周りの大人がしっかりと、これらの知識を教えてあげる環境を整えることも大切です。
そして、成人年齢の引き下げはひとつの大きな出来事ではありますが、一方で、知識がないままの大人だって、リスクにさらされていることに変わりはないということを、今回の改正を受けて、私たち自身もしっかりと自覚する必要があります。
お金を増やしていくためにも、そして自分のお金を守るためにも、能動的に知識をつけることを、これからも意識していきましょう。
(このコラムは今回で終わります。朝日新聞社の経済メディア『bizble』から転載しました)
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