「GDPがマイナス成長」。私たちの暮らしにどう影響がある? 仕組みを理解しよう!
お金の専門家 / 経済評論家の横川楓さんが、日々のニュースを切り口に、身近な暮らしにつながる経済の話や、知らないと損するお金にまつわる知識を解説します。4回目のテーマは、「GDP(国内総生産)」についてです。
お金の専門家 / 経済評論家の横川楓さんが、日々のニュースを切り口に、身近な暮らしにつながる経済の話や、知らないと損するお金にまつわる知識を解説します。4回目のテーマは、「GDP(国内総生産)」についてです。
5月18日に内閣府が発表した2021年1~3月のGDPに関する速報値によれば、前期と比べて年単位の換算で5.1%もマイナスであることが大きく話題になりました。
今年1~3月期の国内総生産(GDP)は、新型コロナウイルスの再拡大で日本経済が急減速している現状を浮き彫りにした。内閣府が18日に発表した1次速報は、物価変動の影響を除いた実質(季節調整値)が、前期(2020年10~12月期)比で1.3%減、年率では5.1%減。3四半期ぶりのマイナス成長となり、20年度の実質GDPも前年度比4.6%減と、事実上、戦後最悪の落ち込みとなった。
GDP再び下落、年5.1%減 1~3月期 プラスの米中と差:朝日新聞デジタル(2021年5月19日配信)
その後、6月8日に内閣府が発表した2021年1月~3月期のGDPの2次速報で、物価変動の影響を除いた実質(季節調整値)は年率3.9%減で、年率5.1%減から上方修正されました。
しかし、緊急事態宣言も延長となり、まだまだ以前のような生活に戻らない中で、GDPがコロナ禍前の水準に戻るにはまだ時間がかかるとされています。
このように様々なニュースで経済の状況を伝える指標として用いられるGDPですが、実はどういうものなのかあまりよくわかっていないという人も多いはず。
GDPというのは世界共通の経済指標である「Gross Domestic Product」の略で、日本語だと「国内総生産」と表します。GDPがどんな意味かを簡単に説明すると、「日本国内で生み出されたもうけの合計」です。
たとえばコンビニでは様々な商品が売られており、みなさんがそれを買うことでコンビニへ売上としてお金が入ってきます。しかし、コンビニで商品を販売するためには、売るための商品を仕入れたり、家賃や電気代、働く人のお給料を支払ったりしなければなりません。
そこで、売上からそういった必要経費を引いた金額が生み出されたもうけとなります。日本中の会社のもうけを合計した金額がGDPです。
さらにGDPは「名目GDP」と「実質GDP」の2種類に分かれています。
名目GDPは単純にもうけの合計を足して計算したもので、物価があがればその分合計金額である名目GDPも増えることになります。この場合の合計金額の増加は、私たちが生み出したもうけが増えたというわけではなく、物価自体があがったことによる増加であり、経済の規模が拡大したわけではありません。
一方で、物価の影響が反映されてしまう名目GDPと異なり、実質GDPは物価の変動を反映せずに計算されます。物価の変動が反映されないことで、値段があがったことが理由ではなく、実際にどのくらいのもうけを生み出しているのかを表すことができます。
日々いろいろな出来事があり社会が変化している中で、「もうけをどのくらい生み出すことができるか」ということも変化しており、実質GDPが増えたら経済も拡大している、減ったら縮小している、と判断をしやすくなります。そのためGDPの状況を説明する際には一般的には実質GDPが使われています。
また、似たような言葉で「GNI」という単語が使われることがあります。
GNIは「Gross National Income」の略で、「国民総所得」のことです。GDPが国内で生み出されたもうけの合計に対して、GNIは海外のもうけも含めて日本国民が生み出した所得の合計のことを言います。そのため、日本国内での状況を表す指標としてはGNIではなく、実質GDPが使われる場面が多いのです。
新型コロナウイルスを受けた首都圏などの緊急事態宣言の延長が確実視されるなか、2021年4~6月期の国内総生産(GDP)が2四半期連続のマイナス成長に陥るという見方が強まっている。
GDP、2四半期連続マイナスの見方強まる 宣言延長で:朝日新聞デジタル(2021年5月28日配信)
意味を理解していないとスルーしてしまいがちですが、GDPは頻繁に発表されており、もうけの合計額が増えているか、減っているかの経済成長を示す実質GDPの伸び率についてはそのたびにニュースでもとりあげられています。
国内で生み出されたもうけは結局お給料として私たちの生活に分配されていきます。当たり前のことですが、もうけが多ければ私たちに届くお金も多くなり、少なければ私たちに届くお金も少なくなります。伸び率が回復している国もある中で、引き続きGDPが減っているというのは、とても怖い状況なのです。
しっかり意味を理解して、今自分たちが置かれているのがどういう状況なのか当事者意識をもってまずは考えてみるようにしましょう。
(朝日新聞社の経済メディア『bizble』から転載しました)
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