ついこの間、二の腕、肩、脇の脂肪吸引を契約したが、結局翌々日にキャンセルすることにした。
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夏はノースリーブのワンピース、冬はタイトなリブニットを好んで着る私にとって、二の腕の太さは通年で気になる部分だった。
コロナ禍でダイエットにはまり、5kgの減量に成功したものの、二の腕が細くなることはなく、「ダイエットではなかなか細くするのが難しい部位なんだな」と実感していた。そんな背景もあり、「いっそのこと脂肪吸引してみよう!」と勢いでカウンセリングを予約したのだ。
二の腕が細くなれば、横から見たときのラインが綺麗になり、好きな洋服をもっと自信を持って着られるようになる。さらに、ダイエット時には他の部位に集中できるし、SNSでも「二の腕脂肪吸引は満足度が高い」という声をよく目にする。「二の腕が細くなったら、もっと人生が楽しくなるかも!」とカウンセリングの日を迎えるまで、術後の自分を想像して楽しんでいた。
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実際に医師のカウンセリングを受けると、筋肉のつき方から、希望していた「二の腕・肩」だけの脂肪吸引では効果が出にくいと言われた。
「よくある上乗せ提案だろうな」と思いながらも、「中途半端にやるより、しっかりやったほうがいいかも」と悩むことに。さらに、「カウンセリング当日に契約すればモニター価格で10万円安くなる」という、よくできた営業戦法で追い打ちをかけられた。
ありがたいのかなんなのか、「ゆっくり悩んで大丈夫ですからね」と温かいドリンクまで出され、個室で一人、1時間弱考えることに。
本当に施術を受けるのか、受けないのか。施術を受けるなら部位はどうするのか。そして何より、金額が高い…。冬のボーナスが出るし、ある程度の貯金はあるものの、この金額があれば海外旅行にも行けるし、買いたかったバイクも買える。
悩みに悩んだ末、「せっかくの機会だし!」と前向きな気持ちで契約を決めた。
……はずだった。
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自分が思っていた以上に高額な契約になったこともあり、「そもそもなんで脂肪吸引したかったんだっけ?」「二の腕を細くするだけで、このお金を払う価値があるのか?」という思いが頭から離れなくなった。
誰かに話を聞いて考えを整理したい気持ちはあったものの、整形に対する価値観は人それぞれで、誰に相談しても「そういう価値観の人だもんね」と思ってしまいそうで、誰にも相談できなかった。
そんなとき、ふと「ChatGPTに意見を聞くのはどうだろう」と思いついた。
仕事でアイデア出しに使うこともあるし、特定の価値観を持つ「誰か」の意見ではなく、「世間一般の」意見を聞けそうだと考えたのだ。
友達と話すような感覚で「メリットとデメリットを教えて」と頼んだところ、意外にもこれが役に立った。
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ChatGPTの回答を読むうちに、自分が脂肪吸引で一番望んでいたのは「自己肯定感を高めたい」ということだと気づいた。さらに、「正直な気持ちとして」という見出しで、「同じ金額を使うなら、まずは他の方法を試してみるのもいいかもしれません。運動や食事でじっくり体を変えるのも、達成感が得られ自信につながるし、それ自体が生活の質を上げる方法だと思います」と提案してくれた。
もしこれを特定の「誰か」に言われたら「うるさい!」と反発していたかもしれないが、機械からの回答だと素直に納得できた。
私が脂肪吸引で得たかったのは「自分をもっと好きになること」で、それはダイエットで努力して痩せたほうが達成できると思った。脂肪吸引のほうが確実に細くなれるかもしれないが、努力した自分も含めて自己肯定感を高めたいと思ったのだ。それに、パーソナルトレーニングのほうが脂肪吸引よりも断然安い。同じお金を使うなら、まずはそちらを試そうという考えに至った。
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もちろん、これはあくまで私の考えだ。整形も一種の努力だと思う。お金も時間もリスクもかけて挑むのだから。
「痩せたい」「可愛くなりたい」「理想に近づきたい」。それを叶えた結果、自分は何を手に入れたいのか。それは人それぞれだ。
だからこそ、その部分をよく考えたうえで後悔のないように「幸せ」を選び取りたい。キャンセル料10%と引き換えに、そんなことを学べた今回の整形騒動だった。