飲み歩くどころか、居酒屋に気軽に入ることもできない。
私の趣味は飲み歩くこと、それなのに流行りのウイルスの活躍で、我が趣味は不要不急の代名詞に。
その他の趣味もあるけれど、酒の場が好きすぎる。
酒の場が好きなのに退屈な日々。コンビニでお疲れ様の缶チューハイ
1人で飲むのも、女友達と集まって「女子会」なんてのも、一番好きなのは打ち上げ。
打ち上げが楽しくて今の仕事をしているようなものなのに。
その寂しさを紛らわせてくれるお酒は、今は缶や、瓶の中に閉じ込められたまま。
不衛生な店がこんなに恋しくなるなんて。
指先ばかりが衛生的になり、肝臓は健康値を突破する勢いで、なんなら飲み代がかからないもんだから貯金が潤ってしまって。
まったく退屈な日々を過ごしています。
仕事終わりの帰り道、最寄り駅と我が家の中間にあるコンビニで缶チューハイを買って帰る。
どこもかしこも時短営業で、コンビニの灯りは以前より目立って光っている。
缶チューハイ2本とカニカマと、乾き物以上4点をカゴに入れレジに並んだ。
住宅街なだけあり、帰宅の時間帯は結構混んでいる、
レジは2箇所、私の前には3人。
サラリーマン、部屋着のギャル、男子高校生、みんな背中がくにゃっとなりながら、立っている。
一日お疲れ様。
サラリーマンの会計が終わり、男子高校生が左側のレジへ。おにぎりと、お菓子をいくつか抱えてる。食べ盛りだな、いいな。
缶チューハイのひんやりが体温に寄ってきた。
早く家に帰って飲みたい。
50円足りなかった高校生。隣の私はとっさに動けなかった
会計中の男子高校生が何やら慌てている。
店員さんとの会話から推測する限り、どうやら男子高校生の手持ちが会計に足りないらしい。
慌てて財布の中、ズボンのポケット、スクール鞄の中を確かめている。
ギャルの会計が終わり、私は右側のレジに「どぞー」された。
左側レジのに聞き耳を立て続けると、50円足りないらしい。
男子高校生は、
「じゃ、これ会計から抜いてください」
とお菓子の箱をひとつレジ袋から出した。
彼の会計は店員さんが打ち直し、終わった。
「ありがとーございましたー」のあと、また左側のレジが「どぞー」された頃、私の会計も終わった。
どうして私はさっき彼に、
「出すよ、いいよ私が出す」
と声がかけられなかったのだろう。
声をかける役が、あの時の私に与えられていたのに全うしきれなかった。
知らない子だし、別に私もお金持ちじゃないし、きっと彼は「いいです、大丈夫です」と断ると思う。
だけど、声をかけられなかったことを私は死ぬまで後悔する。
いつもよりほんの少し大きな声を出せば聞こえる距離にいたのに、どうして言えなかったのか。
悔しくてぼーっとしていたら、冷蔵庫に入れ忘れられた缶チューハイたちは汗をかいてぬるくなっていた。
別の店で遭遇したあのお菓子をアテに、家で一人晩酌した
昨日のことがあって、あのコンビニに行くのがなんだか気が引けてしまって翌日の帰りは、駅の反対側にあるのコンビニに寄って帰ることにした。
家と反対側の駅の出口は大通りに面しているので、駐車場がある広めのコンビニ。
この時間帯はそれほど混んでいない。
慣れていないコンビニなので、売り場の配置に慣れず店内をウロウロ、キョロキョロしながら物色する。
コンビニ内部の構造は大体同じなのに、店やブランドが違うだけで置いてある商品が違うので面白い。
お酒のコーナーからいつもの缶チューハイを2本カゴに入れ、さて、今日のアテはと悩んでいると、いつもなら絶対に立ち寄らないお菓子の棚の並びに入り込んだ。
入り込んですぐに、昨日のコンビニで高校生の彼がレジ袋から戻していたお菓子と目が合った。
思わず1人なのに「ウッ」と声が出てしまい、更には咄嗟にそのお菓子を手に取り、カゴに入れ、レジに行き、会計を済ませ、早歩きで家に帰って、玄関の鍵を閉めて、手を洗って、すぐに缶チューハイのプルタブを開けて酒を飲んだ。
喉がクッと締まって苦しくなるまで飲んだ。
息を整えながらもう一本を冷蔵庫に入れ、レジ袋からお菓子を取り出し、居間のローテーブルに置いて、その隣にお酒を置いて、お菓子をアテに晩酌をはじめた。
彼が抜いたお菓子は、昔から売ってるチョコレート菓子で、久しぶりに食べるものだった。
記憶より美味しくて、一気に全部食べてしまった。
お酒もずいぶん進んで、お菓子以外何も食べずに飲み続けてしまったので、その夜は随分酔いが回って、化粧も落とさずに寝てしまった。
朝起きて、着替えなかったことと化粧をそのままにしたことは随分後悔したけれど、昨日の夜はそれでよかったのかもしれない、そう思った。
昨日あまり食べずに寝たのでお腹が空いた。
今日は休日なので、シャワーを浴びて、簡単に着替えたら、あのコンビニへサンドイッチでも買いに行こう。
あそこは朝の仕入れも早いから、もう棚に並んでるはず。