私は「夢を持つ者」だ。キラキラしてて素敵、と思う人もいるかもしれないが、光の対には闇がある。夢に関するこのエッセイを読んだとき、私のことを書かずにはいられないとパソコンを立ち上げた。
どうしてお給料が低いのかはわからない。本作り以外の業種に転職はしたくない。お金の心配をせずに好きな仕事をしたい、というのは、わがままなのだろうか。
本を作りたい、生活はくるしい 「天職」とお給料の理不尽な関係
夢を叶えた先にある苦しみ
幼いころから夢見がちな女の子だった。アイドル、漫画家、小説家。いつだっていろんな未来を想像していた。そして成長した私が抱いた夢は、「テレビディレクター」だった。人間関係や恋愛に悩んでいた私はテレビを見ることで救われた。いつか私もテレビ番組を作りたい、絶対テレビ番組を作る仕事につくんだと思うようになり、高校卒業後東京へと旅立った。普段見ているようなメジャーなテレビ番組を作るとなると、東京しかないと思ったからだ。
その夢は4年後無事叶うこととなる。だけどそこからが地獄の始まりだった。
入社したのは小さなバラエティ番組制作会社だった。寝られない、帰れない(会社で寝泊まり)が当たり前だと事前に知っていたけど、いざ現実にぶち当たるとちょっと動揺した。だけど、すぐに平気になった。会社にある椅子はふかふかなものが多くてベッドにするには最適だったし、寝袋やエアベッドを持ち込む同期もいて、会社で寝ることに関しての抵抗は徐々に減っていった。いや今思うと大問題だが。
あっという間に生活が追いつかなくなり、借金
私を苦しめたものの1つに「金欠」がある。
テレビという斜陽産業、更に私の会社は小さかったのもあり毎月手取り16万程度、残業代なし、ボーナスなしだった。加えて番組に必要な小道具などを購入する際は、自分で前払いしなくてはいけなかった。
ただでさえ安い給料。必要な小道具のために消える貯金。あっという間に生活が追いつかなくなり、実は借金をした。今でも少しずつ返している。
常に襲いかかる飢餓感。今月はなんとか生活できる。けど来月は?再来月は?息切れしている状態が3年近く続いた。エネルギーはエンドロールに流れる自分の名前、SNSでの番組の評判、そして「テレビで人を元気づけたい」という私の夢。ボロボロになろうとも、夢をどうしても捨てられない、私の強い思い。
だけどその日は突然訪れた。
ある時給料の支払いが半日遅れた。たった半日だったけど、瞬間的に脳内でアラートが鳴ったのを覚えている。この会社まずい、本格的に生活できなくなる、と。そしてその瞬間、ざあっと私の中からナニカが流れ落ちていった。夢が、融解したのだ。
高校生の頃から追い求め、努力し、辛い思いをして、3年近く頑張ってきたのに。
お金という現実的問題が真正面から襲いかかってきた瞬間、夢はあっという間に溶けた。きっと生きていくための本能が働いたんだ。だけど、夢を失った私は、これからどうすればいいの。
一度ゼロになった私の心。しばらくして気づいた、心の奥底に残るカケラ。よおく見てみると、それは「誰かの心を救いたい」という想いだった。私の、夢の本質だった。
そう、それはテレビじゃなくてもいい。音楽でも、映画でも、演劇でも、なんでもいい。エンタメで私が救われたように、私も誰かを救いたい。新たに広がった夢を抱えて、私はその会社を辞めた。その1年後、会社は倒産したらしい。遅かれ早かれ、夢は消えていたんだと思う。
夢を追ってるんだから仕方ない?そんなことない
最後に私が伝えたいこと
夢を追いながら貧困に苦しんでいるあなたへ。
「夢を追ってる(自分のやりたい仕事をやりたくて選んだ)んだから、仕方ないよ」なんて言われちゃうあなたへ。
「やりたい仕事をやる!」というワガママを言ってるから、お金を貰えなくてもいい?そんなわけない。
もしかして将来、生活が苦しくなって、私のように夢が融解してしまう時がくるかもしれない。だけど大丈夫。あなたの夢は消えません。夢を持つ者であるあなたは、きっとまた溶け出した心の中から新しい夢のカケラを見つけ出して、また追い始めます。
だから、あえて苦しい環境に身を置く選択は避けて。あなたには、選択する自由がある。健全に生きていれば、また夢を追えます。苦しかったら、他の選択肢だってあるんだと、逃げ場があるんだってこと、どうか頭の片隅に置いておいてほしい。
環境を変えることを強要しているのかと思うかもしれないけど、それは違います。今のままが一番なら、そのままでいい。私は捨てざるを得ない状況になってしまったから新たな選択をしたけど、あなたの夢を、本当に大切にしてください。
ちなみに私はその後、音楽イベント関係の会社で、システムエンジニアとして採用されました。夢もお金もちゃんと保てる仕事でした。
私のこの言葉で金欠を解決できるわけではないけど、どうかあなたの心が救われますように。
ペンネーム:なつぺぃ
ぺーいと鳴くネコ、もとい普段は仕事に追われる社会人。
書くことで、君も、私も、救われればいいのに。
20代最後に足掻いていきたい。
Twitter:@ntpeeeei288