2015年12月、電通に新卒9か月目であった高橋まつりさんが過労と様々なハラスメントの末に自ら命を絶ちました。
そのおよそ一年前、同じく新卒9か月目の私はやっぱり仕事がしんどくて自殺未遂をしていました。

状況が似ていたあなたの死に自分を重ねることもありました

私は東大卒でも美人でもないし、電通ほどの名のある企業に入ったわけでもないけれど。
同じ1991年生まれで、入社一年目、労働時間や女性ゆえの悩みやハラスメントの状況が似ていたあなたの死に自分を重ねることもありました。

まつりさんがこのツイートを打っていた一年ほど前、忘年会に参加していました。私も仕事ができないイジリ枠として一気飲みさせられ、路上にうずくまりながら同じようなことを思っていました。
このいいねの数から察するに、同じ経験をした方が多数いるのでしょう。女性だけでなく、男性も。

一方で、「もしもあの時死んでいても、高橋まつりさんほど話題にならなかっただろうな」といった居心地の悪い想像をしたりとか、生活の断片で彼女のことをふと思い出しては「自分は生き残ってしまった世界線を生かされているな」と、なんとも言えない嫌悪感にも悩まされたりもします。

一時期は「生き残ってしまった」プレッシャーからか「あなたの死を無駄にしないようにしなければ……!」と鼻息を荒くしていたこともありました。
彼女やお母さまのTwitterや資料を読み漁ったり、過労死裁判の傍聴に行ったりしては、自分が働いていた時のことがフラッシュバックし、グズグズに泣きはらしては寝込んだりしていました。

この5年で働く環境が良くなったかというと、「YES」とは言い難い

「今は向き合うべき時じゃないんだろう」と逃げ、目に入る物、関わる人々……なるべく自分をいたわるような生活を心がけました。
手に入れた夢への喪失感や働く環境の歪さへの怒りに蓋をして。
そんなこんなで過ぎた5年間です。

その間、日本の働く環境が良くなったかというと、とてもじゃないけど「YES」とは言い難い状況です。
2017年には国立競技場の建設現場で働いていた23歳の新卒社員が自殺に追い込まれていたし、#KuTooなんてアクションが起こりもしたけどその反発には目を背けたくなりました。

そういったことになるべく目を向けないようにして、ようやく安定的に働くことができるようになった私についにボールが回ってきました。
いわゆる「働き方改革」が担当業務になってしまったのです。
「やっぱりこの問題からは逃げられないのかな」と思いました。

「働く」のしんどさに向き合い、改善していけるように行動することを宣言します

この5年で当たり前だが私はきっちり歳をとり、自分より年下の社会人が増えていくのを見るにつれ、「この人達には同じ思いをしてほしくないな」と思うことも増えています。

というわけで、死にぞこない歴5年目を迎えた私は、自分と次世代のために、「働く」のしんどさに向き合い、改善していけるように行動することをここに宣言します。

自分の目と手の届く範囲ではありますが、ハラスメントの現場に遭遇したら注意する(できなくても人事や偉い人、労基署なりNPOなり社外の団体にチクる)、おかしな労働環境で働いている人がいたら多少力づくでも休ませる・仕事から離すようにする……そんなことはしてきました。

今年はもう一歩、踏み込んでみたいと思います。
それは表現して広く届けること。
会社で与えられた仕事をきちんと誰かに届く形に仕上げていくことも重要です、自分が死なない程度に。

どうか仕事のために自分をすり減らさないでください

そして、このエッセイを書くこともそうです。
今こうして書きながらも、やっぱり過去を思い出しては涙腺が緩み、鼻水がズビズビになってきたりもしました。
でも、5年経った今は当時の経験をようやく少しずつ、このように書き切り、誰かに見せようとしています。

私が自殺未遂したことは家族や医者、当時の会社の一部の人しか知りません。
20年来の親友にもどんなに心を許したパートナーにも言えていません。
知らない誰かにだからこそ伝えられることもあるでしょう。

たまたまこれを読んでくれた人に伝えたいです。
どうか仕事のために自分をすり減らさないでください。
もし、身近に仕事や会社に殺されそうな人を見つけたら手を差し伸べてください。
あの日生き残った私からのお願いです。

最後になりますが、高橋まつりさんがあの世で安らかにすごせていることを心から願います。