私は「1人でも大丈夫、乗り越えられる」ことを増やして生きることが「人」だと思っていた。

今の会社に新卒として入社したのが2年前。短期大学を卒業し、ずっと働きたいと思っていた会社に見事内定をもらい、入社できた。
「なんて有難いことなんだ、幸せだ」入社前はずっと明るい気持ちでいっぱいで、少しの不安はあったものの、好きな場所で働けることへの希望が不安な気持ちを上回っていた。

そして入社式を迎え、1週間研修をし、いざ配属となった。自分が希望していた部署と全く違う部署に配属された。最初は戸惑ったが、配属先には同期の人数も多く、入社当初から同期と仲良くできていたから、「なんとかしていくしかないか」と割り切って仕事をスタートさせた。

私は「1人で乗り越えるしかない」と諦めていた

出来て間も無い企業ということもあり、本当に慌ただしい毎日を過ごした。覚えることが多く、着いていく事に必死だったが、自分なりに考え、仕事と向き合ってきた。半年程過ぎたあたりから、上司から目の敵にされるようになった。もちろん、褒めてくれることもあったが、小さなことや理不尽なことで怒られる日が増えた。私が少し抜けているところがあるのは十分わかっていたが、他人のミスまで私の責任として叱られる日まであるくらい、毎日当たられていたような気がする。みんな心配してくれていたが、他のみんなも怒られたりしているのは同じだから、「さ、耐えよう」と負の感情を押し殺して笑顔で過ごしていた。

だが、限界がきていたのか、帰り道で涙がでてきたり、仕事中に涙を堪えることが増えて、私の表情は無に近くなっていった。私は「1人で乗り越えるしかない」と諦めていたから、余計みんなに相談しよう、話そうという気持ちが無くなっていた。

突然、状況が変わった。1人の先輩がその上司のことについて、更に上の立場の上長や違うセクションの上司に話してくれたのだ。そのお陰もあり、理不尽なことで怒られることが一気に減り、私も少しずつ元気を取り戻していった。「助けてくれる人っているんだな。有難い」ひたすらそう思っていた。だが、私の思考に「人に頼ってばっかりでどうする、なんで1人で我慢できなかった」「みんな辛いのに」と責める気持ちが芽生え始めていた。

1人で抱えることを普通にしてしまって、とうとう限界を超えた

入社して1年が経とうとした頃、ある程度仕事を任せてもらえるようになったり、パートやアルバイトの方の指導をすることも多くなっきた。そんな中、私は違うセクションに移動することになり(部署の中にいくつかセクションがある)、今までとは違う仕事もするようになった。そして、また新しい壁にぶち当たることになる。

そのセクションの方々は、各々の仕事の仕方を貫きすぎて、統一感がなく、簡単な仕事が終わっていかないという悪循環を繰り返していた。「これは自分がしっかりしよう」私は、必死に仕事を早く覚えよう、人に頼る前に1人でこなせるようにならなければここは回っていかない、と自分にムチを打って仕事に食らいついていた。元々病気をしやすい体質の私だか、どんなに体調が悪くても必ず出勤し、絶対仕事を終わらそうと意志を持って仕事をした。

そんな日々の中、上司や同期、先輩が一気に辞めていき、私は「誰かに頼る」という考えを完全に忘れ、1人で抱えることを普通にしてしまっていた。とうとう限界を超えた。精神的なダメージから引き起こる病気にかかってしまい、今まで通りに動けなくなってしまった。「なんで私は弱いんだろう」すごく辛くなった。そして、少ししてから大怪我をしてしまい、踏んだり蹴ったり状態である。私の表情は気づかないうちにどんどん暗くなっていった。「希望なんて持つんじゃなかった」暗闇に閉じ込められたような毎日を過ごした。

今まで私が思っていた「頼る」とは一体なんだったのだろう

苦しみは長いようで、短い。また状況が好転し始めた。今のセクションの上司や先輩と話をする中で、私の性格や考え方についてはっとさせられた。
「頑固すぎる。もっと周りを頼れ。だれも嫌な顔をしないし、絶対助けてくれるから」
これを言われた瞬間、私は自分でもびっくりするくらい心が揺れ動いて、号泣してしまった。今まで私が思っていた「頼る」とは一体なんだったのだろう。考え直すことにした。

昔から私は、環境のせいもあってか、1人でなんでもすることが当たり前で、自分の失敗や自分のすべきことは自分の責任だと思って、違和感なく生きてきた。言われた一言で、自分の中に少しずつ変化が生じた。自分にとって簡単な仕事や、今まで1人でしていた仕事を少しずつ手伝ってもらうようにしてみた。案外みんな普通に受け入れてくれて、「他は大丈夫?」とどんどんやるべきことを引き受けてくれるようになった。先輩も「これやるから、これは頼んだ!」と分担してくれるようになり、自然と仕事が進むようになった。

未だに、「頼る」ことについてはっきり答えが見つかった訳ではない。簡単に見つかるとも思っていない。だが、1つ言えるのは、
「頼っていいという環境を自然と作ってくれる人もいるし、声に出すことで手を差し伸べてくれる人もいる」
ということだ。
やっと気づけた。まだまだ、1人で突っ走る癖は直らないが、少しずつ人に頼ることを心掛けて、自分の中の思考回路を良い方向に変えたい。そしてもっと年数を重ねて、人として成長できたら、「頼っていいよ」という環境を作れるようになりたい。