別居婚の私たちに突如として訪れた同居生活

夫がわたしの自宅で在宅勤務をすると聞いたとき、正直不安だった。

わたしたちは入籍したときから別居、いわゆる別居婚である。別居していると言うと大体怪訝な顔をされるが、夫婦仲は至って良好だ。お互いに割と1人の時間を楽しめるタイプで、1人でどこへでも行けるので、遠距離恋愛中もそんなに困ったことはなかった。特に不自由もなかったので同居の予定もないまま結婚したが、今さらになって同居によって生じるあれこれについて考え始めた。

確かに、この非常事態に1人で家に居るよりかは、家族と居るほうが安心である。それに、もし事態がより深刻になったら、全く会えない状況にもなりかねない。
ただ、わたしにとっては日記を書いたり、読書をしたりして思索に耽る1人の時間が大切で、それを奪われるのは、ちょっと嫌な気がする。それに食事だって、1人だったら適当に済ませるところを、夫がいるとそうもいかない。いつもは十分な大きさのシングルベッドも、夫がいると狭い。洗濯物は2倍になって、その分回数も増える。・・・なんて挙げるときりがないが、不安要素のほうが圧倒的に大きかった。

こんなふうにただの毎日を楽しめる夫と結婚して良かったなと改めて思った

実際、夫がやってきて数日の間は、小さなことで頻繁にイライラしていた。元来優しい性格の夫は、わたしが小言を言う度に小さく「ごめんね」と謝っていて、それが罪悪感だった。また、夫なりに考えがあるのか分からないけれど、食事の買い物は必ず2人で行きたがるので、それがちょっと鬱陶しくもあった。「そもそも、わたしには結婚向いてなかったのかな?」とか「このまま、夫のことを嫌いになっちゃったら、どうしよう」とか、そんなことを思ったりもした。

けれどしばらく経った今、夫への愛しさは増していく一方だ。

色々な不自由さはあるけれど、毎日一緒に夕食を作って「美味しいね」と笑い合うことができるのは、たぶん今だから。いつもみたいに会社に通勤していたら、ゆっくりと夕食を作ることもできないし、明日のことを考えてさっさと食べて寝てしまうだろう。

イライラすることもあるけれど、一緒に住んでいる以上仕方がない。違う人間なのだから、価値観が違うのも当たり前だ。やってくれないことを怒るのではなく、やってくれたことを見つけて「ありがとう」と伝えるようにした。

一緒に過ごす時間が増えたことで、外出できなくても、こんなふうにただの毎日を楽しめる夫と結婚して良かったなと改めて思った。それを夫に伝えると、夫は「それが自分の良いところだ」と言ってドヤ顔をされた。

こんな状況だからこそ、不自由さの中にある幸せを見つけていきたい

今日も、夫婦揃って在宅勤務。夫はソファに座り、ソファ用のデスクを使って仕事をしているのに、一方のわたしは床に座布団を敷いて、食事用のローテーブルで作業している。狭い部屋に2人、やっぱり快適とは言い難い。

たぶんこの不自由な生活はしばらく続くのだと思う。一緒に過ごせる人のいるわたしはまだ恵まれているけれど、いつもと違う生活には誰だって戸惑うし、ストレスが溜まる。でもこんな状況だからこそ、自分のことを大切に想ってくれる人がいることに感謝しながら、不自由さの中にある幸せを見つけていきたい。