【練馬区立開進第四中学校(東京)/2021年11月30日実施】
講師 未来をつくるkaigoカフェ代表高瀬比左子さん
ゲスト 安藤なつさん(メイプル超合金)
田村侑久さん、平松賢人さん(BOYS AND MEN)

左から講師の高瀬比左子さん、ゲストの田村侑久さん、平松賢人さん、安藤なつさん

介護や福祉のしごとに就いてみたいと思ってくれる仲間を増やしたい

「皆さん、こんにちは」と講師の高瀬比左子さんのあいさつに、「こんにちは!」と、元気な声で応えた練馬区立開進第四中学校の1年生たち140人。高瀬さんは、介護福祉士・社会福祉士を経験したのちにケアマネジャーとして勤務しています。現在は介護に関わる人々が思いを語り、学ぶ、対話の場である「未来をつくるkaigoカフェ」も主宰しながら、未来の日本を担う子どもたちに介護のしごとを伝えるイベントなども開催していると自己紹介をしました。

「今日は、飛び入りでGO!GO!KAI-GOプロジェクトの応援団のメンバーが来てくれています」と高瀬さんからの紹介で、副団長のお笑いタレントのメイプル超合金・安藤なつさんと、東海地方発アイドルグループのBOYS AND MENから田村侑久さん、平松賢人さんが登場。生徒たちも歓声と拍手で迎えました。GO!GO!KAI-GOプロジェクトの応援団は、団長であるアナウンサー・福澤朗さんを中心に、「福祉・介護の世界で活躍する人々の力になりたい!」と集まった著名人たち。介護・福祉のしごと体験レポートなどを、BS朝日特番「GO!GO!KAI-GO応援団」や、定期配信WEB動画で発信しています。今回も生徒と一緒に介護・福祉を勉強するために参加しました。

「私は今、ケアマネジャーというしごとをしています。ケアマネジャーとは、介護保険という制度でその利用者の方が自立した生活を送るために、ケアプランというプランを作成するしごとです。このしごとで必要なことは、相談に乗る力です。一対一で話を聞く中で何ができるか、何に困っているのか、観察力や想像力、コミュニケーション力が試されます。私は介護の出張授業を通じて、介護や福祉を知ってもらいたい、イメージを変えたい、しごとに就いてみたいと思ってくれる子どもや仲間を増やしたい。また、地域のことも知ってもらいたい。そして、困ったときは“お互いさま”と、つながれる機会を増やしていきたいという思いで、出張授業を行ってきました」と高瀬さん。

きっかけは「介護って楽しいな。うれしいな」

生徒とともに授業に聞き入るゲストの3人

日本はいま、超高齢社会といわれています。2007年に全人口のうち65歳以上(高齢者)が21%を超えました。13年には、その割合が25%となり、25年には約3人に1人が65歳以上となると予想されています。

「日本の平均寿命は戦後から延び、これからも延びていきます。高齢者が増えて子どもは減っている状況です。これは若い人が少ない人数で高齢者の生活を支えていかなくてはならないことを意味しています。そこで、高齢者の生活を支える専門職が、これからの日本には求められています」と高瀬さん。

ここで、介護歴20年以上という安藤さんが、自身の経験を通して感じた介護のしごとのやりがいについて紹介しました。

「私が介護に携わったのは、中学1年生からです。週1日、土曜日に介護施設に泊まりがけで遊びに行っていました。認知症のおばあちゃんがいて日曜日の朝は着替えを手伝うのですが、うまくいきません。『どうしようかな。また今日も着替えてくれなかったから、朝ごはん遅れちゃうな』と思いながら通っていたんですが、ある日、ぱっと着替えてくれたんです。それを見て、めちゃくちゃうれしかったことを覚えています。振り返ると多分それが『介護って楽しいな。うれしいな』と、思ったきっかけです」

安藤さんの話に、生徒たちからも自然に拍手が起こります。高瀬さんも、「訪問介護という現場でしごとをしていたときに、私が来るのを楽しみに待っていてくれた利用者さまがいました。『私を必要としてくれている人がいる』ということは、やりがいになります。高齢者の方に『笑顔になってもらえるような瞬間をつくること』、『気持ちよかった、楽になった、安心した、といった瞬間』を、これからも大切にしていきたいと思っています」と話しました。

お年寄りとギネス記録に挑戦? 楽しいアイデアが続々

グループワークでは、ゲストも生徒たちと一緒にアイデアを考えた

「ここで、みんなにグループワークをしてもらいたいと思います。困ったときに助け合える関係をつくるには、地域の人とつながる必要があります。地域でいろいろな世代の人が交流するためのアイデアをグループで複数考えてください」と高瀬さんが促しました。安藤さん、BOYS AND MENの田村さん、平松さんも生徒たちのグループにそれぞれ加わり、ディスカッションを行います。

約5分間のグループワークが終わり、各グループからアイデアを発表してもらいました。最初は安藤さんが加わったグループから。
生徒「ゲームセンターでお年寄りと一緒に遊ぶ」
高瀬「ゲームセンター?」
安藤「今のゲームと、お年寄りが昔遊んでいたゲームも並べて……。刺激があっていいかなと」
高瀬「なるほど」

ほかにも「お年寄りと校舎巡りをする」「地域のおばあちゃん、おじいちゃんとゴミ拾いをする」「みんなで世界一大きなおでんをつくってみるなど、ギネス世界記録に挑戦する」「福祉施設でお祭りを開催する」など、様々なアイデアが発表され、高瀬さんも「いいですね」「すてきですね」と一つひとつに感想を述べ、「今日出たアイデアをぜひ実践してもらいたい」といって、グループワークを締めくくりました。

長生きしてよかったと思える人を増やすことがミッション

講師の高瀬さんに今日の授業の感想を伝える生徒

「イギリスのリンダ・グラットン教授によると、日本の場合、07年以降に生まれた子どもの約半数が107歳まで生きる可能性があるといわれています。そのために、これからはすべての人が元気に活躍し続けられる社会、安心して暮らすことができる社会をつくることが重要な課題となってきます。介護に関わる資格は、超高齢社会で注目されている資格です。介護福祉士やケアマネジャー、社会福祉士などが介護のしごとで必要な資格です。ぜひ、関心がある方は詳しく調べてみてください」と高瀬さん。「介護業界はこれからいくらでも変革していける業界です。介護は、尊厳を守ることができるしごと。とても大事なことですし、奥深い、やりがいのあるしごとです。長生きしてよかったと思える人を増やすことが、私たちのミッションです。ぜひ、一緒に取り組んでいきましょう」と語りかけました。

続いて、GO!GO!KAI-GOプロジェクトの応援団の3人から生徒たちへのメッセージが贈られました。

「今日一日皆さんと一緒に勉強ができてよかったです。皆さんを必要としてくれる方が実際にいると思うので、ぜひ、興味がある人がいたら介護のしごとをちょっと覗いてみてください」(安藤)
「皆さんの積極性に感心しました。僕自身も介護の経験はありませんが、人と関わることが好きでこういうしごとをしています。介護も深く人との関わりを持てるすばらしいしごとだと、改めて感じました」(平松)
「介護のしごとは、ちょっと難しいなとか思っている方もいるかもしれませんが、まず一度行動を起こしてみるといいのではないでしょうか。介護のボランティアなど、ぜひ体験してみてほしいと強く感じました。ぜひ、みんなで体験しに行きましょう!」(田村)

生徒からも、「今日の授業を通して介護のしごとの内容や、必要性、やりがいなども知ることができましたし、趣味や特技などが介護に生かせるということを聞き、とても驚きました。将来的には、自分が介護をすることも、されることもあるかもしれないので、今日の授業で得た知識を活用したいです」と、感謝とともにあいさつがあり、会場からは拍手が湧き起こりました。

授業の最後は、みんなで記念撮影

【授業を終えて】

練馬区立開進第四中学校 丸髙将貴教諭

本校では例年、1年生が介護施設に訪問してボランティアをするという体験学習を行っていましたが、コロナ禍により活動ができなくなってしまった中で、何とか介護や社会福祉についての学習ができないかと考え、今回の出張授業に応募させていただきました。

生徒のアンケートを見ると、楽しく介護を学ぶことができたようです。中学生にとって自分の将来、キャリアを形成していく中でいろんな体験をしていくことは重要です。本校では、総合的な学習の時間において、社会福祉、職業、国際理解などについて体験的な学習に取り組んでいます。様々な観点から自分を知る、社会を知る機会になってほしいと願っています。これから社会がますます高齢化していく中、子どもたちが大人になったときに、介護と接する機会は必ずあると思います。そのような必要性からも、介護に関する学習を学校でも取り入れています。

【静岡県立沼津商業高等学校/2022年1月21日実施】
講師:未来をつくるkaigoカフェ代表高瀬比左子さん
ゲスト講師:(株)3C代表取締役・焼津市議会議員/石原孝之さん

講師の高瀬さんのいる部屋から見た、リモート授業の様子

介護のやりがいは「暮らしをデザインすることの楽しさ」

新型コロナウイルス感染症の第6波の影響により、静岡県立沼津商業高等学校ではオンラインでの開催となった特別出張授業。今回は1年生5クラスが参加しました。

「私は、ケアマネジャーのしごとをする傍ら、介護に関わる人々が思いを語り、学ぶ、対話の場である『未来をつくるkaigoカフェ』を主宰しています。今日は皆さんに介護について身近に感じてもらい、わくわくしてもらえればいいなと思っています」と高瀬比左子さんがあいさつします。

続いてゲスト講師である石原孝之さんを紹介しました。石原さんは、土木現場から介護業界へ転職した異色の経験の持ち主。現在は、介護施設を運営し、焼津市議会議員でもあります。また、介護についての講演活動にも積極的です。

石原さんは介護職のやりがいについて、「高齢者の方が生活をする上で、できなくなったことを支える、暮らしをデザインすることの楽しさを感じています」と話しました。建築家が家をデザインするように、高齢者を取り巻く暮らしを、コーディネートする役目だと、石原さんはいいます。

「目がどんよりしていた人が、目を輝かせたり、『あんたがいい』って指名されたりすると、自分が必要とされていると感じてとても楽しい」

「心が動けば体が動く」を介護の現場で実感

現在の介護のしごとは多様化しているといいます。特に様々な世代が交流し、共生できる場づくりが増えています。以前、石原さんが運営していた介護施設では、高齢者施設と保育園を併設しました。ほかにも、障害者施設と老人介護施設などの“共生型”といわれる福祉施設に流れが変わってきています。

「僕たち介護スタッフがどれだけ声をかけても、目をつぶったままだった寝たきりの人が、子どもの声を聞くとぱちっと目を開ける。どれだけ子どもたちの力がすごいか思い知らされます」と石原さん。さらに保育園では施設に入居している高齢者がエプロンをかけて「おばあちゃん先生」となって、子どもたちに読み聞かせや食事の取り分けをしているといいます。子どもたちの世話をすることが、高齢者の生きがいになっているようです。「心が動けば体が動く」。この言葉を強く思わずにはいられないといいます。

「介護業界はどんどん進化しています。これからは多様化するニーズに応える運営が求められる。自分や大切な家族が『この施設なら入ってもいいな』と思えるような施設にしていかなければならない」と石原さんは話しました。

介護は暮らしをデザインするしごと

グループワークでは、クラスごとに代表がアイデアを発表した

ここで開進第四中学校でも行ったグループワークを実施。「地域でいろいろな世代の人が交流するためのアイデア」に高校生も挑戦しました。

「地域のデイサービス施設で小中学生と食事会」「お祭りなど高齢者の方と一緒に遊べる」「カルタやババ抜きをして遊ぶ」「高齢者とゴミ拾いなどボランティアを行う」など、5クラスからそれぞれ三つのアイデアを出してもらいました。石原さんは、「高齢者との食事会といっても、ただセッティングするだけではなく、やはりそこに介護スタッフが話の橋渡しをしてあげると、話が弾むはず」「運動してもらおうと思っても、ただの散歩は高齢者もつまらない。ゴミ拾いなど地域の役に立つことを取り入れることで、目的が生まれる。このようなことを考えるのもやはりデザイン力」と、一つひとつアドバイスを入れながらも、高校生の案を高評価していました。

「皆さんのうちの半分以上が100歳以上生きられるとしたら、どんな社会になってほしいでしょうか。これからの未来の社会を見据えて、しごと選びに生かしてほしいと思います」と高瀬さん。「介護の現場は様々な職種が関わってチームでケアの現場を支えています。ぜひ関心のある方は、詳しく調べてみてください」といい、オンライン出張授業は終了しました。

中高生ともに、「介護」という若い世代にはあまり現実的ではないテーマにも関わらず、高瀬さんの話に真剣に耳を傾けている姿が印象的でした。介護職員の確保は、日本の社会課題となっています。昔のイメージを払拭し、新しい試みや、やりがいを発信していく場が必要になっています。石原さんが「介護は暮らしをデザインするしごと」と話していました。今回の出張授業も、介護は自分の趣味や経験を生かしてより良い社会のために欠かせないしごとの一つだと感じてもらい、中高生たちの将来の職業の選択肢の一つを考える時のきっかけになったのではないでしょうか。

GO!GO!KAI-GOプロジェクト(テレビ朝日映像)

「GO!GO!KAI-GOプロジェクト」は、年間を通じて様々なイベントを実施し、福祉・介護の大切さや未来の可能性を発信していきます。
本事業は、厚生労働省補助事業「令和3年度介護のしごと魅力発信等事業(体験型・参加型イベント)」を活用して、テレビ朝日映像が主催します。