綺麗めで、なおかつカジュアルなトップスとスカート。髪の毛は暗めの茶色で艶のあるロングヘア。足元にはお洒落で華奢なパンプス。
一般的に働く女性と聞いて最初にイメージする姿は、きっとこのような恰好をしているであろう。実際、私の友人のほとんどもこのような姿だ。
大学生の私だって友人達の現在の姿と同じような、“よくいるOLさん”の恰好をしている社会人の自分を予想していた。しかし、いざ社会人となってみると、私の通常業務スタイルはいたって普通の作業着だ。
足元は長靴や安全靴といった機能性・安全性重視のもので身を固め、頭はヘルメットで覆われている。

“よくいるOLさん”の恰好をしていない自分への自負心と不安

そんな私の心の中を覗いてみると、良くも悪くも“よくいるOLさん”の恰好をしていない私自身への自負心が見え隠れしている。しかもフェミニンな服装よりも作業着の方が自分には似合っているとさえ思ってしまっているようだ。

だからか、私は東京の友人よりもラフな格好で出勤しているところを隠さずに話してしまうのは。メイクだって最低限の薄化粧。職場で男性職員に一人私が混ざっても大丈夫だと自分に言い聞かせている。
そして職場でやりたいことはたくさんある。社会人ドクターだって取得したいし、将来は私の上司(男性)のように仕事で多くの実績を積み上げたい。だから私は「この機械の使い方をおぼえたいです!」と元気よくアピールをする。多くの女性のように着飾っているわけではないけれども、自分なりに前に進んでいるはず。それが現在の私である。

しかし、すごく不安になってしまう。
このままで大丈夫なのか。いわゆる普通の女性として、“よくいるOLさん”の方が人生を上手に進めるんじゃないか。そんな不安がせき止められずに漏れ出てしまう。このままの人生を進んでいくという覚悟が、私にはまだ持てない。

突き付けられる現実を無視してかわすことは、今の私にはできない

どうしてそんなに不安なのか。ちょっと進んだだけでもグズグズと縮こまってしまうのか。
それは周囲の人や社会、そして自身の年齢から突き付けられる現実。こういった目に見えないものに立ち向かうどころか、無視して自分を貫くことも、ましてやひらりとかわすことさえも、今の私にはできないからだと思う。

言われたことがどんな些細なことでも、積み重ねれば次第に心を黒く覆い隠す現実となる。

「部長の秘書みたいだね」
ちょっと部長のパソコン操作の手伝いをしたからって、人をそんな部長のお世話係のように言わないでほしい。まだ未熟だが、ちゃんとした技術職員として私はここにいる。ほら見て、私は作業着を着ているでしょう?

「車持った方がいいよ」
ここは都会のど真ん中ではないし、現場がある場所は往々にして市町村の町や村。または市の端っこ。ここは車があった方が住みやすい世界だということも知っている。
だが少し考えてみてほしい。車を持つことはそう簡単じゃないはず。車本体の代金に加え、維持費や保険料も必要。定期的なメンテナンスも欠かせない。移動が多少面倒でも、車のためのお金と手間を私は自分のために使いたい。今はそのためのお金すらケチっているけれども。業務用の車を運転できれば十分だと思ってしまう。

こんな言葉を言われたとき、時間が経ってみればこんな風に言い返したくなる。でも実際は曖昧な笑みで返すことしかできない自分にモヤモヤが積み重なる。自分は自分!と言うことは、やはりできていない。

職場や社会での言葉たちは私をさらに不安に追いやる

そして、職場や社会での言葉も、そんな私をさらに不安に追いやるんだ。

「男性職場に女性一人。それって彼氏選り取り見取りじゃん」
同期(男性)よ、ちょっと待ってほしい。そんな夜9時から放送するラブロマンスみたいな奇跡がこの8割既婚者の職場で、しかも就業時間(残業規制あり)の間に転がっているわけないだろう。
そもそも職場には仕事をしに来ている。いや、私はまだそんなに仕事ができるというわけではないのだけれども……。

「そのうち転勤をしてもらうこともあるかも」
上司よ、ちょっと待ってほしい。私だってパートナーと出会い、あわよくば自分の子どもを育てる経験をしたい。自分の“女性としての人生でやりたいこと”を妨げる転勤はたまったものじゃない。
女性の妊娠能力は30歳〜35歳を超えて落ち始めるとも言われている。組織の都合一つでそんな簡単に私の人生のやりたいことを無碍にしないでほしい。そのうち転勤してもいいと思うが、そのタイミングは少なくともここから10年の間ではない。

「結婚したら苗字が変わるよ」
社会よ、ちょっと待ってほしい。私だってこの職場で、この国で、実績を積み上げたいと思っているんだ。特許だって論文だって書いてみたい。私の人生の目標や大切なものたちを、人生の途中過程で分断させないでほしい。
そんなの超人気冒険漫画のタイトルを、物語の一番大切な部分、主人公が仲間と出会い成長していく過程の真ん中で変えるようなものじゃないか。それはもう別作品だろう。

紅一点?そんな言葉はもう死語。好きだからこの仕事をしている

このような言葉はぐるぐると私の周りをまわってから私にザクっと突き刺さる。言い返したいけれども、私は「自分を過小評価しないでよ」と力強く歌う音楽を流したイヤホンで耳をふさぐことでしか自分を守れない。
でもやっぱり、

「紅一点?そんな言葉はもう死語。私はやりたいと思ったから、好きだからこの仕事をしているんだ」

そう言ってどんな職場でも輝ける自分になりたい。そのために頑張りたいとも思っている。
目指すは“家族での幸せも、仕事での幸せも、貪欲にすべてを掴む”そんな女だ。それが自分のためにも、将来を担う日本の若き女性達のためにもなると思うから。

作業着女は私らしく自分の人生を強く生きていきたい。みなさん、こんな私を応援してくれませんか?