かがみよかがみでは、「私のふるさと」をテーマにエッセイを募集しました。たくさんのご応募の中から、編集部が一番心に響いたエッセイを「かがみすと賞」として選ばせていただきました。

今回は、かがみすと賞1本、編集部選として3本のエッセイをご紹介いたします。

◆かがみすと賞

「遠くに行ったら守ってあげられない」と親は言うが、私守られている(ぺた)

あらすじ:夜、母がベランダで洗濯物を干している隣で、いろんなことを話した。ふるさとを離れる決心を告げたとき、両親は反対した。でも、両親にどれだけ守られてきたか気がついたのも夜のベランダだった。

◆担当編集者からのコメント

両親の愛情を感じながらも、離れたい気持ち。ふるさとを離れたからこそ気がつく切なさ。どちらも身に覚えがある気持ちです。

それと同時に、もう十分に与えられたと唐突に思った。これからは与える人間になろうと、その時決意した。

新天地では、ふるさとの話をすることが増えた。ふるさとを知るために、外へ出たのだとすら思うようになった。どこへいても、ふるさとと似ているところと、違うところを自然と見つけようとした。

与えられてきた側から、与える側になろうとする決心。ぺたさんが大人になった瞬間だったのかも知れません。

◆次点①

大丸に行かない?子ども時代と変わらないあの場所から逃げたかった(焼き茄子)

あらすじ:中学生のころ、地元にできたイオンモール。それ以来、買い物も、遊びも、デートも生活すべてがイオンに支配された。そんな地元が大嫌いだった。大人になりできた恋人はイオンモールを知らない人だった。

◆担当編集者からのコメント

別な場所なのに、全く同じ要素と雰囲気でできたモールへの嫌悪感は、共感する人も多いのではないでしょうか。

大嫌い。大嫌い。みんな大嫌い。そんな街を構成するわたしも、イオンの中に埋もれてる。

嫌いながらもその一部である自分と、イオンモールを知らない恋人との対比が印象に残るエッセイでした。

◆次点②

父の死を経て、いつも今いる場所から逃げようとしていた私と向き合う(たなかあかり)

あらすじ:父が癌になり、東京から地元に帰ってきた。日に日に弱っていき、噓のようにこの世を去った。葬式が終わり、実家でぽっかりできた時間。私は地元からずっと逃げ出したくて上京した。だけど…

◆担当編集者からのコメント

失って初めて、過去の幸せに気づくものなのでしょうか。

今考えたら、なんて貴重な時間だったんだろうと思う。私は今ここにある幸せを受け取れきれていないのだ。今ここにいる自分は不幸だ、この場所には何もないと決めつけて新しい場所を探そうとしてしまう。

最後の食事のシーンに、胸が詰まりました。いまある幸せを大切にすることを教えてもらった気がします。

◆次点③

ティファニーの結婚指輪を持って訪れた地は私と彼の「ふるさと」になった(さらりん)

あらすじ:両親ともに東京出身。「ふるさと」に憧れていた私。そんな私に返るべき場所ができた。今年結婚する私と彼の思い出の地、川越だ。彼に告白され、プロポーズされた場所なのだ。

◆担当編集者からのコメント

都会生まれだと、「ふるさと」に憧れますよね。

生まれたときにふるさとがなくても、地方で帰りを待っていてくれる家族がいなくても、大人になれば、どちらも自力でつくることができるのだ。

思い出をふるさとにして、ふるさとを自らつくっていく。とても素敵な考え方だと思いました。

以上、「私のふるさと」のかがみすと賞、編集部選の発表でした!たくさんの素敵なご投稿を、本当にありがとうございました。
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