かがみよかがみでは、「けんかの思い出」をテーマにエッセイを募集しました。たくさんのご応募の中から、編集部が一番心に響いたエッセイを「かがみすと賞」として選ばせていただきました。
今回は、かがみすと賞1本、編集部選として2本のエッセイをご紹介いたします。
◆かがみすと賞
「弟」に怒って家を飛び出した日は、「弟」と会えた最後の日になった(相沢エマ)
あらすじ:10歳から児童養護施設で育った。そこにいた一人の「弟」は歌が好きでムードメーカー。ある朝、おしゃべりが止まらない彼に怒って家を飛び出した。「言い過ぎたな」と後悔しながら過ごした一日。学校から帰ってくるとか「弟」の姿はなくて…
◆担当編集者からのコメント
「弟」さんが突然いなくなるなんて、思ってもみなかったでしょうね。ずっと続いていくと思っていた日常が、突然変わってしまうことがあるなんて、実際に経験しないと分からないものですね。
「あたりまえ」の尊さと儚さを胸に刻んで、同じことを繰り返さないように生きていくことが、唯一私にできることだと信じている。
できることは今の日常を大切にすること。何度も「弟」さんを思い出しては、そうやって過ごしてきたのでしょうね。私も読者も自分の日常を大切にしたいと思わせるエッセイでした。
◆次点①
父が不倫、家族を捨てた。怒りと悲しみと好きが混ざる、初めての喧嘩(ひみつのあっちゃん)
あらすじ:高校1年の夏。母から父の不倫と二人の離婚を告げられ、奈落の底に落とされたようだった。夏休みの終わり、父と三姉妹で食事をした後、私の悲しみは怒りになった。その思いを父親にぶつけた。
◆担当編集者からのコメント
ひどい、許せない、でもやっぱり好き。お父様への複雑な思いが丁寧に書かれていて、胸に迫りました。
相変わらず父親は許せないけど、正面から嫌な気持ちを伝えたことによって、未来の私はスッキリとした諦めを抱くことができた。
怒りという感情を使っても、伝えておかない気持ちやタイミングというのがあるのですね。今振り返って必要なことだったと、前を向いているひみつのあっちゃんさんに、なぜか励まされた気持ちになりました。
◆次点②
反抗期の頃、戦いを仕掛けた私に、真っ向から「ぶつかってきた母」(そらた)
あらすじ:中学から高校まで反抗期まっさかり。母子家庭で鍵っ子。「私の話を聞いて欲しい」という思いが言葉の棘になり、母にぶつける。そんな私に、母は私と同じ力でぶつかってきた。
◆担当編集者からのコメント
振り返ると「どうしてあんなことで?」と思う反抗期ですね。そしてお母様は親というより、同じ人間としてぶつかったんでしょうか。
母からすれば迷惑極まりない話だが、そんな母だったからこそ私は全力でぶつかることができたと思っている。
あの時、私を蔑ろにせずに受け止めてくれる人がいたから今の私がいる。
母と娘の関係は、同性だからこそ難しいこともありますが、一番の理解者になれる関係でもありますね。最後に暖かい気持ちになれるエッセイでした。
以上、「けんかの思い出」のかがみすと賞、編集部選の発表でした!たくさんの素敵なご投稿を、本当にありがとうございました。
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