かがみよかがみでは、「一人暮らし/実家暮らしに思うこと」をテーマにエッセイを募集しました。たくさんのご応募の中から、編集部が一番心に響いたエッセイを「かがみすと賞」として選ばせていただきました。
今回は、かがみすと賞1本、編集部選として3本のエッセイをご紹介いたします。
◆かがみすと賞
ノー家事、ノーライフ。ひとりで暮らすことは、ひとりで生きること(Anne)
あらすじ:「お手伝い」がずっと苦手だった私が、二十歳なり一人暮らしをすることになった。掃除も洗濯もさぼるとすぐに酷い有り様。家事は終わりがないから嫌になる。でも家事は、ママに怒られないためじゃなくて、生きていくためのものだ。
◆担当編集者からのコメント
等身大の言葉で語り変えるように綴られていて、友達と「そうそう」とおしゃべりしているような気持ちになりました。
生きていくのは大変だなあと思いながら、掃除機の紙パックを忘れずに買ったり、残り湯で洗濯したり。
つまり、家事は生きることそのものだって、分かってきた。
ちゃちゃっと生きてちゃちゃっと死ねたらいいけどそうもいかないもんね。ノー家事、ノーライフ、これはマジ。
面倒くさいなあ、と思いながらも繰り返す、死ぬまで終わりのないものが家事。だから家事はそのまま生きること、なんですね。まあなんとか頑張っていこう、と前向きになれるエッセイでした。
◆次点①
洗濯機で見つけた黒い「それ」は、親と自分を見直すきっかけになった(千葉)
あらすじ:洗濯機のクズ取りネット。その存在すら知らなかった。一人暮らしをして四年。何気なく「ここ取れるのかな?」と開けたら真っ黒なそれがあった。新しいネットと専用の洗剤を買って、洗濯機の掃除に取りかかった。
◆担当編集者からのコメント
誰もが心当たりのある驚き、絶望、情けなさ…そんなものを呼び起こさせる「水面を埋め尽くす黒」の描写が秀逸でした。
そりゃあ洗濯機だって使えば汚れるのだ。汚れたものは掃除しなければきれいにならない。自然の摂理、この世の理だ。大げさだがそれこそ真理だろう。真理を知れば人は変わる。
現にこの事件をきっかけにして、私は掃除に対する認識を改めた。大切なのは表面ばかりでなく、その裏側なのだ。
真理を知り、変わった…と思ったら最後のオチで笑いました。それでも人間、少しずつ進歩するのだと信じましょう。
◆次点②
一人暮らしは絶対だった私が、6畳1Kの部屋で二人暮らしできるまで(午睡)
あらすじ:私は今、4つ年下の恋人Mと一緒に、都内の6畳1Kの狭いアパートに住んでいる。2年前まで、誰にも頼らない1人の生活が居心地が良く「絶対」だった。でもMと出会って、その純粋な愛情を注がれるうちに、私は徐々に変わっていった。
◆担当編集者からのコメント
Mさんの愛情によって、固いガードが緩んで少しずつ変化していく午睡さん。お二人の関係にときめきました。
2人で生活する中で、Mの優しさや寛容さの程度はいつも、私の予想を遥かに超えてきた。
私はその度に驚き、感心し、そして言うのだ。
「Mって私のことめちゃくちゃ好きやんな」
「うん、そうですけど?」
当然でしょうという表情で、Mはさらっと言ってのける。
自分がここまで愛される価値があるのか?という疑いを、その都度解消してくれるMさんの愛情が素敵です。
◆次点③
別人になった私は、ほんの数ヶ月前まで日常だった実家に落ち着かない(やまきよ)
あらすじ:実家では、朝はギリギリまで寝ていて、帰ればご飯ができるまで好きなことをしているような人間だった。大学の卒業直前に内定が出た会社は、実家から通うには遠すぎたので、一人暮らしをすることに。夏休み、久しぶりに実家に帰ってみると…
◆担当編集者からのコメント
普段は何とも思っていない日々の生活や環境。そんなものが自分を形作っていると、ふと気がつくときの様子が、落ち着いた文章でつたわってきました。
ほんの数ヶ月前までは日常だった風景が、別の家庭としてドラマのワンシーンのように見える。部屋の明かりはもっと白く鮮やかなものが好みだから、こんな古めかしい電球は目に悪い気がする。ああ、居心地が悪い。この女性は、白髪が目立つ。私の毎日見慣れている風景にはいない。でも、その目の横の皺はなぜだろう、とても懐かしいのだ。
「別人」になれた自信と、センチメンタルな気分がないまぜになっているこの文章が、とても印象的でした。
以上、「一人暮らし/実家暮らしに思うこと」のかがみすと賞、編集部選の発表でした!たくさんの素敵なご投稿を、本当にありがとうございました。
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