かがみよかがみでは、「クリスマスの思い出」をテーマにエッセイを募集しました。たくさんのご応募の中から、編集部が一番心に響いたエッセイを「かがみすと賞」として選ばせていただきました。
今回は、かがみすと賞1本、編集部選として3本のエッセイをご紹介いたします。
◆かがみすと賞
毎年届く図書カード。差出人を知って、初めて涙を流した(Lil'Mii)
あらすじ:クリスマスにはおもちゃではなく、毎年図書カードとクリスマスカードが届いた。物心つく前に母をなくし、父と祖母に育てられた私。父からのクリスマスプレゼントも、たくさんの本だった。小学4年生のとき、図書カードの送り主を祖母に尋ねてみると…
◆担当編集者からのコメント
たくさんの人の愛情のこもった素敵な贈り物ですね。その図書カードで本を好きになり、豊かな人生を歩んでこられたことが伝わります。
祖母は、私の目をしっかりと見つめながら、
「それはね、家族を交通事故で亡くした子どもたちに送られてくる物なの。大きく立派に育ちますようにって。沢山の人があなたの成長を見守ってくれているんだよ。もちろん、天国のお母さんも」
と、静かに話してくれた。
亡くなったお母さまのことを思って、初めて泣いたとき、同時に支援者たちの大きな愛を知ることができたという巡り合わせに心を打たれました。
◆次点①
世界で一番幸せな朝をくれた病床の父へ贈ったクリスマスプレゼント(佐藤すだれ)
あらすじ:クリスマスは一番好きなイベントだった。マメな父は、サンタの代理人として、私たち姉妹が大きくなってもプレゼントを枕元に置いてくれた。そんな父が3年前、病に伏した。病床でふと「クリスマスには、時計がほしいな」と言った。
◆担当編集者からのコメント
家族がそれぞれを思いやる気持ちが胸に響きました。お揃いの時計が欲しいとおっしゃったお父様の気持ちを考えると涙が出ますね。
「今日、渡すべきだと思う。だって、その、あれじゃん。早くしないと……」
お父さんが死んじゃうかもしれないから。
言い切ることなく、私はまた泣いた。母は黙って私の目を見ていた。涙をこぼしながら、私は必死に続けた。
「だって早いほうがさ、うれしいじゃん。プレゼント、早く来るのはさ、うれしいから」
私は私に嘘をついた。自分を守るためで、誰も傷つけないための嘘を。
大切な人を思いやる母娘のこのやり取りは、痛切でありながらも美しいと感じました。いつまでも記憶に残りそうなエッセイです。
◆次点②
「痩せたほうがいい」と言われたクリスマス。私は自分であり続けた(chikoto)
あらすじ:バイト先のバーで迎えたクリスマス。接客をしていると、呂律の回らない声が聞こえてきた。「おねえシャン、もっと痩せた方がいいよ」。隣ではミニスカサンタの女性たちが笑っていた。あの言葉から10年経ったが、女性の美に対する価値観は変わっていない。
◆担当編集者からのコメント
いつ聞いても腹が立つような言葉ですが、疲れているときに酔客から言われたら耐えられないですね。でもそこからの冷静な考察に引き込まれます。
少女の強いダイエット思考を変えさせるのは不可能に近い。
だが、それが誰かのため、特に男性のために抱いているのであれば、私のあのクリスマスにもらった望まないプレゼントである発言を忘れることはできないだろう。
あの酔客の価値観を内面化してしまっている少女たち。先輩として彼女たちを心配する優しい視点が際立つエッセイでした。
◆次点③
サンタの種明かしはしないから、今年も家族みんなにプレゼントが届く(中島ウユ)
あらすじ:クリスマスの朝。我が家では、子どもだけでなく父と母の枕元にもプレゼントが置かれていた。母がプレゼントにあまりにも喜ぶので、私は周りよりも長くサンタの存在を信じていた。小学5年生のとき、祖母からネタばらしをされても、信じることにした。
◆担当編集者からのコメント
サンタクロースを巡る優しい噓に心温まります。家族への感謝や愛情を、こうして伝え会うのって素敵ですね。
家族みんなで喜んで、喜ぶ姿をみてほっとしたり、うれしかったりするクリスマスの朝。これを幸せと呼ばずしてなんと呼ぶのか。
その証拠に私は、なにをもらったかは忘れてしまっても、家族みんなでプレゼントを喜んだことばかりを覚えている。
プレゼントする/されることの醍醐味が詰まったこの部分がとても印象的で、自然に笑顔になりました。
以上、「クリスマスの思い出」のかがみすと賞、編集部選の発表でした!たくさんの素敵なご投稿を、本当にありがとうございました。
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