かがみよかがみでは、「仕事とわたしの関係」をテーマにエッセイを募集しました。たくさんのご応募の中から、編集部が一番心に響いたエッセイを「かがみすと賞」として選ばせていただきました。

今回は、かがみすと賞1本、次点として3本のエッセイをご紹介いたします。

◆かがみすと賞

終電を逃し乗ったタクシー。涙が出た私に「運転手やってみません?」(名塚あみ)

あらすじ:店長の説教から解放されたのは午前2時。タクシーの車窓から街を眺めながら、店長から浴びせられた暴言や痛みを思い出し、気がついたら涙を流していた。「何かありました?」と気にかけてくれた運転手さんに、私は愚痴を吐き出した。

◆担当編集者からのコメント

転機というものは、何でも無いような日常の中に転がっているんですね。 追い詰められた閉塞感が、深夜のタクシーと街の描写で映画のように映し出されます。タクシーの運転手さんの一言は、閉じ込められた部屋の窓を開けてくれたようですね。 

私はこの言葉で思考を取り戻した。

仕事なんてたくさんある。たまたま今の仕事、今の職場が私に合わなかっただけ。

店長の暴言で「自分は他の場所ではやっていけない」と思わされた呪いが、運転手さんの言葉でをきっかけに解けましたね。転職、昇進、おめでとうございます!

◆次点①

「飯が食える」をめざしてきた私に、「働かなくてもいい」と彼は言う(振りむけば雪国)

あらすじ:「誰のおかげで飯が食えると思ってんだ!」という台詞を誰にも言わせたくなかった。でも新卒で正社員で入社した会社を辞めざるを得なくなった。その後交際している男性と結婚を前提に同棲し、契約社員として働いたが、給料では一人で生活できない。

◆担当編集者からのコメント

小学生の頃に聞いた言葉。そこから始まった、振りむけば雪国さんが抱える悩みと葛藤が丁寧に描かれていて、引き込まれました。

小学生の私が軽蔑した目で問いかけてくるのだ。
「いつか独りになるかもしれないのに?」
「相手の態度が変わらないって保証できるの?」 
わかっている。痛いほど。

どうにもならない現状と、そんな自分を見つめている子どもの頃の自分。そんなイメージが想起されて、とても鋭く胸にせまる文章でした。最後にふと現実に戻る部分も効果的で、余韻が残ります。

◆次点②

一日自由に過ごしてこい。入社直後に教えられた「仕事をしない選択」(西港)

あらすじ:入社して間もない、研修期間中のある日、支店長から新人4人に「自由に過ごしていい」と言われた。私は指示通り、仕事のことは一旦忘れた。ふらっと歩きながら喫茶店で本を読み、古本屋に入り絵本をめくった。この町が好きだと思った。

◆担当編集者からのコメント

仕事にメリハリをつけること。その効果を感じてもらうための素敵な指示ですね。ふらっと町を歩き、時間を過ごす様子の描写で、西港さんがとても満たされていく様子が伝わりました。

社会に出ることは決して大変なことばかりではないと、背中をあの日から今でも押してもらっている。

あなたがいたから私は、いまを楽しく生きていられてます。また、コーヒーを飲みながら顔を合わせて話したいです。

いまでも背中を押してくれている、とても貴重な出会いと時間だったのですね。

◆次点③

「せっかく学んだ語学力が無駄」。私の悩みを、屋久島の森が解放した(レッツィング マナ)

あらすじ:大学で英語が専門。「英語を使った仕事」を探したが、求められたのは「英語じゃない何か」だった。せっかくの語学力を生かせないことにモヤモヤしていた私は、リフレッシュしようと屋久島へ。そこで宿の主人の夫妻と話したら…

◆担当編集者からのコメント

 自分が思い描いていたものと違う仕事にモヤモヤする気持ち、分かります。でもちょっと視点を変えると、前に進めるものなのかも知れません。

「英語の仕事に就くより、英語でマナさんの人生が豊かになったほうが、周りの人は報われるんじゃないでしょうか。習得したものは、もうマナさんの一部ですから」

この言葉そのものもとても素敵ですし、屋久島の森から受け取ったメッセージと合わさって、マナさんに響くところがとても印象的でした。

以上、「仕事とわたしの関係」のかがみすと賞、次点の発表でした!たくさんの素敵なご投稿を、本当にありがとうございました。
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