かがみよかがみでは、「知りたくなかった『あのこと』」をテーマにエッセイを募集しました。たくさんのご応募の中から、編集部が一番心に響いたエッセイを「かがみすと賞」として選ばせていただきました。

今回は、かがみすと賞1本、次点として2本のエッセイをご紹介いたします。

◆かがみすと賞

老け役ばかり演じる私は、いないも一緒。それでも夢を見ていたかった(しろくろ)

あらすじ:演劇部で6年間舞台に立って来た私。老け役ポジションで舞台に立てるのは、演技派の証だと思っていた。憧れの声優を目指して俳優養成所に入った。ダメ出しをされて、何度も心折れそうになったが必死に稽古に打ち込み、終了公演では準主役級の配役に。でも、劇団には入れなかった。

◆担当編集者からのコメント

追い続けた「夢」と、その現場で頑張っているからこそ見える「現実」が伝わってくるエッセイだと思いました。「観劇おじさん」たちのあからさまな態度は、役者という仕事ではなくても容姿で評価されがちな多くの女性たちが経験したことのある不条理だと思いました。

地味でもコツコツ活動していればいつかは大舞台に立てるし、芝居で食っていける。
流石にそんなもの夢物語だともう理解している。

それでも、「夢」をみていたかったなあ、と寂しさを感じる私がいる。

演劇や芸能界はとても大きな、そして華やかな「夢」ですよね。現実は厳しいですが、そこまで打ち込んだ経験はきっとこれからに生きるのと思います。しろくろさんが、小さくても、華やかでなくても、新しい「夢」を見つけられますように祈っています。

◆次点①

ラーメンを食べると感じる寂しさ。私にとって最高のスパイスとは(たぬきちゃん)

あらすじ:ラーメンが大好きだ。いろんなバリエーションがあって、値段もお手頃。いままで何杯ものラーメンに元気をもらってきた。だけどラーメンを食べると、満腹感と同時に心にぽっかり穴があいて、そこに冷たい風が吹くように感じることがある。思い出すのは大学受験お疲れ様会のラーメンだ。

◆担当編集者からのコメント

美味しくてお腹が満たされるのに最高なラーメン。心がほっこりとするエピソードと、「ああ、分かる…」という共感性の高い素敵なエッセイでした。

一口目のラーメンをすする。私は「このラーメン美味しいね」と話しかける。友人たちは「やろ~?」と得意げに微笑む。
一緒にラーメンを頬張り、たわいもない話をする。会話の内容はほとんど覚えていない。友達の笑い声や笑顔は覚えている。

ラーメンを友人たちと食べたことが、実は一番心を満たしてくれるものだった。そのことに気がつくと、1人での食事に寂しさを感じるものですよね。たぬきちゃんさんが、またお友達と一緒においしいラーメンを食べられますように。

◆次点②

一目惚れと同時に失恋した。食べ物を粗末にしたバチは男子トイレで(まよ)

あらすじ:「食べ物を粗末にしたらバチが当たるよ」。幼い私はそう言われても「知らんがな」だった。だけどこれが痛い教訓になった。それは高校生のときに出かけた牧場でのジンギスカン。男子の悪ノリで、牛乳やお茶や調味料が肉に混ぜられ、激マズに。そして帰りのバスで、私のお腹が危険信号を発信した。

◆担当編集者からのコメント

いわゆる「黒歴史」をユーモアたっぷりに書いていただきました。男子の悪ノリから始まる展開に「まさか…」の連続でした。

私は、男子トイレに誰もいないことを確認して、男子トイレの個室に飛び込んだ。これで3年間の人権は守られた、と間に合った安堵感で、私は用を足したあとも立ち上がることができなかった。闘いを終えたボクサーのような気分であった。

最悪の事態は避けられた、と真っ白に燃え尽きてからの逆転劇。こんな出会い(と失恋)もあるとは。展開にひきこまれ、どんどん読み進めてしまうエッセイです。

以上、「知りたくなかった『あのこと』」のかがみすと賞、次点の発表でした!たくさんの素敵なご投稿を、本当にありがとうございました。
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