個人の体験から社会問題を考えるエッセイを投稿してくれている「かがみすと」の皆さんから、「社会問題をもっと勉強したい、インプットもしたい」という声からスタートした「かがみ学びタイム」。7回目の開催となる今回のテーマは「途上国での『結婚』にまつわる現状と課題を考える」。朝日新聞社のニュースサイトの一つで、グローバルヘルスや途上国の開発課題について報じ、様々な立場の人々とともに解決策を探るwith Planetとのコラボ企画として、編集長の竹下由佳さんをお招きし、途上国での「結婚」にまつわる現状と課題を考えました。また、学びタイム後半では「結婚と幸せ」をテーマに募集したエッセイの大賞発表もありました。

「2030年までに児童婚をなくす」は可能なの?

はじめに、世界の児童婚の現状について説明しました。児童婚とは、男女問わず18歳未満での結婚を指します。UNICEFによると、毎年18歳未満で結婚している女の子は約1200万人おり、児童婚を経験し、現在生きている女性の総数は6億4千万人に及ぶと推計されています。この数は、2022年は5年前の21%から19%に減少しているものの、このままのペースでは「2030年までに児童婚をなくす」というSDGsのターゲットを達成することはできない現状です。

児童婚がなくならないのはなぜなのでしょうか。様々な要因がありますが、多くは、貧困により食料や経済的支援の見返りなどとして女の子が嫁がされるという背景があるそうです。

このような状況で結婚させられた女の子たちは、学校に通い続けることが難しくなり、十分な教育を得られないケースも。また、若年妊娠による健康障害や死亡のリスクが高まったり、家族や友人から切り離されたり、メンタルヘルスに影響を及ぼす可能性もあります。

私たちには何ができるのでしょうか。竹下さんは「まずは知ること。声を上げて連帯すること。プラン・インターナショナルなど、児童婚の問題にアプローチしているNGOのホームページを見たり、寄付をすることもひとつの支援のかたち」と話しました。

「誘拐婚」という言葉をご存じですか?その成り立ちは

また、女性が突然誘拐されたり、略奪されたりして無理やり結婚させられる「誘拐婚」も起きています。誘拐婚は、中央アジアのキルギスを中心に行われており、現地の言葉では「アラ・カチュー」(キルギス語で『奪って去る』)と呼ばれているのだそうです。

かつての「アラ・カチュー」は両親に決められた相手との結婚を拒否した恋人たちが駆け落ちする「合意のある誘拐結婚」という意味で使われていたものの、現在では「合意のない、暴力的な誘拐結婚」に実態が変化しています。国内では禁止されていますが、有罪判決を受けることは極めてまれ。当事者の女性も、暴力の脅威や汚名を恐れて訴えを起こそうとしないことも指摘されています。

日々のもやもやの生きづらさを深掘ると、世界の課題につながっている

「どうしたらこの状況が変わると思いますか?」という竹下さんからの質問に対して、参加者からは「私が我慢すれば…が風習となり皆の我慢につながっているのかもしれない。”私が我慢すれば”を積み重ねないように『私は嫌』と声を上げることが大事だと思った」などの意見が寄せられました。

竹下さんもその意見に対して、「本当にそのとおりだと思います。自分が耐えることが次の世代に同じ思いをさせることにもなりますよね。私の場合だと『子どもはいつ?』って聞かれたり。そんな日々感じる生きづらさやモヤモヤを深掘りしていくと、ステレオタイプによる慣習があったりして、世界の課題とつながってくることがあります。1発で解決できるような特効薬はないけれど、NOを伝えることは大事ですよね」と話しました。

参加者からの質問コーナーでは、「誘拐婚を受けやすい身分や階層などはあるのか」などの質問が寄せられました。

「結婚と幸せ」大賞はなつめの抹茶さん

後半には、募集テーマ「結婚と幸せ」に寄せられたエッセイの講評と、大賞作品の発表も行いました。大賞作品は「父がいなくなった私の家族は欠陥品で、独身の叔父は不良品だった(なつめの抹茶)」。

全体講評として竹下さんは「寄せられたエッセイに通じるのが『結婚とは幸せであるものだ』『結婚は男女がするものだ』といったステレオタイプに基づく制度へのモヤモヤでした。今回の学びタイムのテーマにもつながるなと思いながら拝読しました。どれも本当に素晴らしかったです。今回の大賞作品は特に、そうしたモヤモヤが実情をもってつづられていて、手に取るように感情が伝わってきました」。

伊藤編集長も「私もこのエッセイを読んだあと、しばらく考え込んでしまいました。エピソードもすごく丁寧に書いてくださっていましたし、ステレオタイプをなくしたいって思ってるけど、捨てきれない葛藤、綺麗ごとじゃない部分まで描かれていて、すごく共感しました」と話しました。

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