個人の体験から社会問題を考えるエッセイを投稿してくれている「かがみすと」の皆さんから、「社会問題をもっと勉強したい、インプットもしたい」という声からスタートした「かがみ学びタイム」。6回目の開催となる今回のテーマは「自分の快感とどう向き合う?」、ゲストには、生理やカラダに向き合う「ランドリーボックス」代表の西本美沙さんをお招きしました。

はじめに、「セクシュアルウェルネス/セクシュアルヘルス」の定義について説明しました。日本語にすると「性的健康」。強制、差別、暴力がないという「安全であること」はもちろん大事ですが、それに加えて、「楽しむ」という要素も必要だといいます。そこで次に紹介されたのが、性の健康世界学会(WAS)が発表したという「セクシュアル・プレジャー宣言」。
「プレジャーが性の健康・ウェルビーイングに寄与するには、自己決定、同意、安全、プライバシー、自信、そして性的関係についてコミュニケーションしたり交渉したりする能力が重要」としています。

西本さんは「プレジャーを日本語にすると『喜び』ですが、日本だと『快感』のイメージが強くなってしまう。ちょっとみだらな感じがしますよね。もっと健やかな言葉で和訳できるといいんですけどね」と話します。
続けて、言葉が変わることでイメージが変わった例について触れました。
「マスターベーションやオナニーというと、ちょっと、声にしにくいけれど、セルフプレジャーだと発しやすくなりますよね」
伊藤編集長も「快感というよりは、ご自愛に近いイメージですね。寝る前のホットミルクと高いチョコレートと同じようなイメージがします」と話しました。

よく寄せられる性のお悩みとは?

西本さんが代表を務めるランドリーボックスには

・気持ちよくない、楽しめない
・セックスレス
・いったことがない
・セックスが痛い
・パートナーに本音が言えない

などの相談がよく寄せられるそうです。

これに対して西本さんは「相手に言えない、嫌われたくない。その場の空気を悪くしたらどうしようとなって、パートナーと話せない人が多い。セックスレスに関しても、自分がつらいというよりは、社会的にセックスレスってよくないらしいと不安になってしまっていることもあるなと思います。
性のお悩みも紐解いていくと、実はセックスうんぬんではなくてパートナーとのコミュニケーションがうまくいっていないなど、その前段階だったりするんですよね。自分がどういう気持ちになっているのか、何が好きなのかを『私』を主語にして考えてみてほしい。
みなさん、『誰かのために』は得意なんですけど、『自分のために』を考えるのが苦手なんですよね。まずは自分が一番の理解者になってほしい」と話します。

チャット欄には参加者から「性の悩みにも社会からの視線が組み込まれていることにびっくりした!」という声が寄せられました。

セルフプレジャーのアイテムも様々!

まずは自分と向き合うために、セルフプレジャーのアイテムをいくつか紹介しました。

セルフプレジャーアイテムのほかに、性交痛を和らげるものや、膣トレのアイテムなども紹介。男性器の挿入深度を調整する「OHNUT」は、アメリカ人女性が、性交痛がひどいことから自身で3Dプリンターを使い作成。それをクラウドファンディングで販売したところ、同じような悩みをもつ方からの賛同の声が集まったそうです。

前回の学びタイムで、辻愛沙子さんが「言語化することで、問題が可視化される」ということを、「名もなき家事」を例に話してくれましたが、セクシュアルプレジャーに関しても同じことが言えそうです。

西本さんは「これはうちのサイトでもすごく売れていて、男性が買ってくれていることが多いようです。どうしても体の特性上、痛みを受けるのは女性側になってしまう。それを防ぐには女性が潤滑ゼリーを塗るなど、女性側の対策しかないと思っていたけど、女性側の痛みを緩和させるために男性側ができることもあると知って購入してくれているみたいなんですよね。コミュニケーションがしっかりとれている良い例だと思います」と話しました。

ほかにも、潤滑ゼリー(ルブリカント)とローションの違いについても解説。「ローションは体に塗って楽しむものなので、性器まわりに使うのはNGです。ローションとして売られているものには『ポリアクリル酸ナトリウム』が入っており、これは膣内を乾燥させてしまうので痛みの原因にもなります。潤滑ゼリーとローションは全く別物なので、裏面をしっかり確認してから使ってください。パートナーが持ってきたものを、よくわからないまま使うのではなく、自分の体を守るためにも、何を使われているのかはしっかり確認してくださいね」と注意をうながしました。

今回の居残りタイムでは、「パートナーにどうやって伝えれば良いですか」「西本さんが性の話をする際に気をつけていることはありますか」など多岐にわたる質問が寄せられました。