私がその猫の存在を知ったのは、約7年前の秋口だった。

約7年前の私は心底猫を欲していた

そもそも、当時付き合っていた彼氏が大のジブリ好きであった。
ご存知の方も多いが、ジブリ作品にはよく「猫」が出てくる。しかも各作品に登場する猫は、どの子も一筋縄ではいかない性格の持ち主ばかりだ。そこが愛すべきポイントでもある。(私は『耳をすませば』に出てくるムーン推し)

幼き頃は、サンタさんへの手紙に「ビーグルかミニチュアダックスフンドをください」などとしたためておきながら、ハタチ以降はこの通り…。男や世間の猫ブームや何やらに影響を受け、ちゃっかりと本格的な猫派になっちまった。ちなみに当時、動物とのお別れは悲しいという理由から、サンタさんはビーグルもダックスも授けてくれることはなく。セーラームーンの絵柄が入った身体を洗うタオルをくれた。いくらなんでも理想と現実との差が。けれどもそれはそれで嬉しかった。

話は少々逸れたが、とにかく約7年前の私は心底猫を欲していた。無性に。
iPhone4で猫の画像を検索しては保存するのが日課だった。容量は足りるはずがなかった。

雌のサビ柄をした子猫がご機嫌で玄関前まで走ってきた

そんなとある日。従姉妹の家の裏庭で、野良猫が2匹の子猫を産んだという話を母から聞いた。
…気付いたら近くに住む姉にコンタクトをとり、車を出してもらい、秒速でショッピングモール内に入るペットショップをめがけて出発進行!していた。到着すると一目散に子猫用のトイレセットを取りに行き、2人で必死に抱えながらレジに並んでゲット。そして車に運んだと記憶している。エサではなく、無我夢中でトイレを最初に購入したことは、我ながら猫と一緒に住むことへの執着心がすごかったなぁと思う。

出会いは必然な気がした。
従姉妹の家に着くとすぐ、裏庭側から雌のサビ柄をした子猫がご機嫌で玄関前まで走ってきて、「ニャーニャッ♪」と高い声で鳴いてお出迎えをしてくれた。まるで、私たちが来ることを知っていたかのように…。そのあとも何故かもう一匹の子猫や母猫とは一度も対面することはなく、刻々と時間だけが過ぎていった。従姉妹等協力のもと「まぁこの子でいいか」などとなんとも失礼な決め方をしたのち、その雌のサビ柄の子猫を引き取って帰宅した。

この子は絶対に幸せにしますと心に誓った

当時は映画やテレビ、ネットなどで耳が垂れているキュートな猫ちゃんとか、毛長の猫ちゃんとか、何か見た目が分かりやすく可愛くて、人懐っこくて、血統証明書があって…など。そういったあくまで表向きの猫の情報に気を取られてしまっていた。だから、友達にも格好をつけて「スウェーデンの猫だよ」と、ありもしない小さな嘘をつくこともあった。みっともない。見た目や種類、その命の出どころなんかにとらわれていた「猫飼い初期の自分」が憎いよ。

今思い出しても心が痛む。母猫や兄弟猫と急に引き離してしまったため、しばらくの間「ニャーニャー」と深夜まで鳴き止まなかった。ここはどこ、家族猫はどこ、と部屋の中をウロウロ。そのせいで成猫になった現在もなお、超絶ダミ声のマイベイビーだ。
この猫の一族には、本当に申し訳なくて…猛省の日々が続いた。その代わり、この子は絶対に幸せにしますと心に誓った。母猫と兄弟猫のことも、従姉妹家族がときたま面倒を見てくれていたから、少し気持ちが救われた。「ありがとう」しか思わない。

サビ猫やその子どもたちのことが大切でたまらない

さて、そのサビ猫は、今もどちらかといえば波乱万丈な人生(猫生)を送っている。
さかのぼること、あれは彼女(サビ猫)の避妊手術前日。何重ものドアを無理矢理こじ開けて脱走の末、雄の野良猫と朝帰りをしてきたり、まさか…とは思ったが案の定、安産のもと3匹の子猫を出産、突如「ママ」となったり。

小顔で、カラダはスマートだけど足が少し短くて、黒と茶色半分ずつに下腹部だけが白のサビ柄で、クールビューティーそうに見えてネチネチとしつこかったりオットットな鈍臭さもあったり。でも確実に賢くて。それでいて甘えん坊で。もう世界で一番可愛くて。

で、しまいには3匹のママになったのだもの。貫禄も増して、自身が母猫や兄弟猫と過ごせなかった時間をその子どもたちと…取り返すまではいかなくとも、毎日を丁寧に生きて。授かった子どものうち、唯一の男の子だったチャタは、2020年2月・ガンのため5歳の若さで先に旅立ってしまったのだから、また以前とは異なる「別れ」も経験することとなってしまって。

息子を喪う直前も、直後も。凛々しい母親の表情のままだったサビ猫。彼女が現実から目を背けることはなくて。最期も足とか舐めてあげていた。その優しさに余計泣けた。

私は、このサビ猫やその子どもたちのことがとてつもなく好きで、大切でたまらないという事実を、ペンを走らせた今、さらに思い知ってしまったようだ。

マイベイビーズへ
一つひとつの驚きを、喜びを、悲しみを、幸せをありがとう。君たちに「来世でもまた会いたいニャ」なんて思ってもらえるように、私ガンバるね。