3月上旬、寒さも緩くなりお散歩をするのに丁度いい季節に入ろうとしていた時だった。「コロナウィルスの拡散により在宅勤務期間となりました。内定者アルバイトの皆様には申し訳ございませんが、自宅での待機をお願い申し上げます」
昨今世界中で蔓延しているコロナウィルスの感染を恐れた就職先からのメールだった。

正直なところ人生最後の長期休みを謳歌できると思う一方で、3月丸々暇になり困っていた。街や友達に会いに出かけても自分が感染するかもしれない恐れがあるため、そう簡単に外出はできない。かといって学業を終え特に勉強することもない。どうすればいいんだ。
そんなことを考えながら皿洗いをしていた。「あれ?皿洗いって結構時間かかるじゃん。明日から暇つぶしがてら家事やろう~」。母に翌日から家事をする旨を伝えたら大喜び。しかし、この時の私は現実の厳しさを知らなかった。

家事をしない父に腹が立って仕方がなかった

翌日から家事生活が始まった。大体は、洗い物、洗濯、布団を畳む、掃除機、洗濯ものを干す、お風呂掃除の順で行う。その後たまに夕飯を作る時もある。妹が家にいる時は、二人で家事を分担してやるから少し楽だ。かといって家で一人家事をするのも悪くはない。一つのことに集中してすぐに時間が過ぎるから暇つぶしに丁度良いからだ。

ただ一番つらいのは、父が家にいる時だ。後から食事をした父が、洗っているそばから一言もなく無言で洗い物を追加する。「ん?!」と言ったら、「洗えよ、どうせ暇だろ?」と怒り気味で言う。
寝室の掃除機掛けを終え、リビングに移ろうとしたら「そこの壁汚いからやれ」と食卓の上にある少し出っ張った壁みたいなところを指さしながら命令。「後でやる」と言ったら「ホコリが落ちるだろ、順番を考えろよ」と掃除機を奪い全部やるのかと思いきや、「こうやれ、わかったな」と結局は私が全てやることに…。
家を片付ける系の仕事を終え、カレーを作っていたら「俺が求めるカレーを作れよ」。「いや、父さんの求めてるカレーなんて知らないから!自分で作れよ!」そう思いつつも、父に文句を言ったら頭ごなしに怒鳴り散らかされるだけだと知っているため、沈黙を貫いた。「俺が求めてるカレーはこれだ。今度からお前はカレー当番な」。

いくら冗談ぽい口調でも、ここ1カ月間父によるストレスが重なったせいか、腹が立って仕方がなかった。なんで私がこんな苦労をしないといけないのか、父も家事をやれば考え方が変わるだろうに…

家のことと書いて家事。家族のだれもがやるべき事だろう

そんなこんな思ううちに、以前母が「もしあんたたちが息子だったら、勉強より家事を教えるわ」と言ってたのを思い出した。なるほど、今になると母のいう事が本当によく分かる。家事は女の仕事と思われがちだが、一人でやるには負担が多い。特に、私のような家庭であれば女性の精神的負担と肉体的負担が大きいだろう。

「母さん、よく今までやってたよな…学生時代あんまり手伝わなくてごめんなさい…会社までちょっと遠いから在宅勤務期間、帰宅後、土日休日しかできないかもしれないけど、今後も家事やるね」
直接言うのは少し恥ずかしいけど、心の底から本当にそう思う。だって、家のことと書いて家事だ。家族のだれもがやるべき事だろう。
だから、私は今後も家事を続ける。もし自分に子供が生まれたら母の言葉に少し訂正を加えて、男女関係なく家事を教えて、その子達が将来ストレスフリーで協力し合える家族関係を築けるように育てたい。