女性らしさを出して得することへの違和感。自分らしいフェミニストとは
【03】小野美由紀さん×かがみすと
※早川書房よりご恵贈いただきました。 4月16日に発売された作家・小野美由紀さんの短編小説集『ピュア』。「出産するためには女が男を食べなければいけない」という異様な世界を描きながらも、現代と通底するテーマは「性別によって役割が固定された社会での、女の(あるいは男の)生きづらさ」です。かがみよかがみでは、著者の小野美由紀さんを招いて、読書会を開催。参加したかがみすとの感想を紹介します。
※早川書房よりご恵贈いただきました。 4月16日に発売された作家・小野美由紀さんの短編小説集『ピュア』。「出産するためには女が男を食べなければいけない」という異様な世界を描きながらも、現代と通底するテーマは「性別によって役割が固定された社会での、女の(あるいは男の)生きづらさ」です。かがみよかがみでは、著者の小野美由紀さんを招いて、読書会を開催。参加したかがみすとの感想を紹介します。
美由紀さんの「奢りはお布施」「バカにされている、不平等と感じなければOK」このワードたちは私のガチガチに固まった頭の中を少しほぐしてくれた。
私は、男性から荷物を持ってもらったり、何かをしてもらうことを素直に受け入れられない。受け入れたとしても、違和感があった。この違和感は何から来ているのか、ずっと分からなかったけど、美由紀さんの「おごられる、荷物を持ってくれる=バカにされるのを受け入れるという気持ちがあるからモヤモヤする」という指摘に納得した。
あとは、男性だから重い荷物を持たないといけない、奢らないといけない。この風潮に納得いっていないからなのかもしれない。
ある時、男友達から荷物持つよ!と言われた。私が断ると「女性に物を持たせてるって周りの目が気になるから持たせてよ」と彼は私を女性として下に見た訳ではなく、男性の使命感から荷物を持つと言ってきたことを「受け入れることでバカにされるのを受け入れる訳じゃない」「相手からしてもらうことはありがとうと言って受け取ったらいい」「バカにされた、不平等だと感じたらNOと言えばいい」という美由紀さんの言葉とともに思い出した。
けど、やっぱりこの申し出を受け入れると舐められていることを受け入れるように感じる時もあるし、単純に男性だからって、女性に対してそこまでしなくていいよねって思う。
というよりはただ負けず嫌いなだけかもしれない。
ある日、飲み会に誘われて、顔を出すだけのつもりが実際に行くとお酒を勧められた。断ってもビールがどんどん注がれるグラスを見て、どうすれば回避できるのか頭の中が猛スピードでぐるぐる回転した。気がつくと、私はビールを注いでくる男性の目を上目遣いでジッと見つめてニコッと微笑んでいた。女性らしさを無意識に出した自分に驚いた。だけど効果は抜群だった。男性は、キュンとした、やられたぁと言ってビールを注ぐのをやめた。そのビールは、横にいたお酒に弱いといっていた男の子のコップに注がれてしまった。
ここでは、3つの問題があると美由紀さんは指摘して下さった。
・お酒を勧めると言うことは男女問わずハラスメントである
・女性が男性に強くNOと言っちゃいけないという社会的抑圧がある
・女性らしさを出して得してはいけないという(女性間の?)抑圧がある
私は特に3番目に違和感を持っていたけど、女性らしさを出してNOと言ったことに違和感を持ったのか。もしくは、女性らしさを出したら簡単に身を引いた相手に違和感を持ったかは正直私にも分からない。
もしあの時、女性らしさを出していなかったら私はきっとあの場を回避できなかっただろう。女性らしさを使って自己防衛をしたけど、私の代わりにビールを注がれてしまった男の子は、女性じゃなかったから回避ができなかった。(それ以前にお酒を強要するのはハラスメントですよね)
私の中で女性らしさを使って得することはルール違反と思ってきた。女性らしさを強要されたり、不平等に扱われるのは嫌だから、女性らしさを出して得することもやめる。そうしないと女性だからと後ろ指をさされてしまう気がするから。けど、ファム・ファタール的な女性への憧れもない訳ではない。
読書会が終わってから、女性らしさで得をすること、男性に奢られる、荷物を持ってもらうことについて考えていたけど、まだ答えは出ていない。私どうしたいんだろ?でもフェミニズムはこうでなければいけないという勝手な呪縛が私の中にあることは間違いない。あと、社会にこびりついている男性だから女性だからという価値観からも解放されたい。何にも囚われることなく、自分が納得いくフェミニストになりたいな。
かがみよかがみは「私は変わらない、社会を変える」をコンセプトにしたエッセイ投稿メディアです。
「私」が持つ違和感を持ち寄り、社会を変えるムーブメントをつくっていくことが目標です。
恋愛やキャリアなど個人的な経験と、Metooやジェンダーなどの社会的関心が混ざり合ったエッセイやコラム、インタビューを配信しています。