国際結婚でイギリスに移住してから初の一時帰国は突如として取りやめに
コロナウイルスの感染拡大はとどまることを知らない。連日、感染者数や死者数がただの数字のように報道されると感覚が麻痺してしまうが、それでも「実際に人が病気になり、亡くなっている」ということを考えると、本当に恐ろしい事態だと感じる。
私は2018年に国際結婚をし、2019年9月にイギリスに移住した。イギリスでも、感染拡大のスピードをこれ以上速めないため、および医療崩壊を防ぐため、ロックダウン(都市封鎖、いわゆる外出制限など)が出された。
2020年2月には日本に一時帰国をする予定でいたが、そのころちょうど日本では市井での感染拡大が始まったところだった。夫や日本にいる両親と何度も相談を重ね、泣く泣く帰国はキャンセルすることにした。今回の一時帰国は、渡英後初めてのものであり、何か月も前から予定していたので、キャンセルは大きなショックだった。
慣れない土地でのロックダウンは精神的につらい
一時帰国キャンセルを受けての今回のロックダウンは、さらに私の気持ちを落ち込ませ、滅入らせた。夫は在宅勤務ができる職種で今も仕事ができ、私自身もオンラインでの仕事をしている。世界中を見渡せばより大変な状況にいる方々がたくさんいるのはわかっているが、それでも慣れない土地でのロックダウンは精神的につらいものがあった。
いつまで続くかわからないロックダウンを、気持ちを滅入らせたままにせず、何とか乗り切ろうと、いろいろな方法を考え、実践している。身体と心の双方へのアプローチが必要と考え、まず、健康面については早朝に散歩をしたり、家にもともとあったエクササイズバイクを漕いだりしている。また、庭に出て日光浴をするなど、積極的に日差しを浴びるようにしたりもした。次に、精神面については、読書をしたり、ポッドキャストを聞いたり、なるべく気持ちが感染症のニュースから離れるように気を付けている。特に、ポッドキャストを聞くことは、自身にとってとても大きな効果があった。ポッドキャストは以前から聞いており、馴染みはあったが、サブスクリプション登録をしていたのは、勉強のための英語の番組ばかりだった。この機会に、他にももっとおもしろい番組がないかと検索してみたところ、日本語の番組をたくさん見つけた。
遠く離れた日本とつながっているような気分にもなれた。
その中でも、和歌の朗読・解説をする番組(「一首一会」、という、名前も素敵なものである)や古典文学の朗読をする番組があり、それらを聞いてみることに。早速エピソードを聞いてみると、どれも知的好奇心を満たしてくれる内容で、とても楽しめた。和歌の朗読・解説をする番組は、久しぶりに聞く五・七・五・七・七の日本語独特の音のリズムが身体に心地よく響いた。古典文学の朗読の番組は、高校時代に大好きだった古典の授業を思い出させてくれたのだ。高校時代の授業では、古語の意味を一生懸命に勉強し覚え、文章を読み解き、昔の人の感受性の豊かさに驚いたり、今を生きる自分とも共通する悩みや喜びを感じたりしていることに感動したことを覚えている。そんな楽しく充実した時間を思い起こすことで、気づけば心が軽くなっていた。現在、周りに日本人がいない環境で生活するなか、日本語のポッドキャストを聞くと、心落ち着き、とてもリラックスできていることに気がついた。大げさかもしれないが、遠く離れた日本とつながっているような気分にもなれた。
イギリスのロックダウンは、いつまで続くかわからない。3月23日に3週間ということで始まったが、先日、外出制限などの条件は緩まることなくその延長が発表された。コロナウイルスの感染拡大は、本当に早く収まってほしい。この状況はしばらく続くと思うが、その間、自分の身体と心をきちんと律しなければと思っている。そのために、これからも、私の心を救ってくれ知的好奇心を満たしてくれる古典のポッドキャストを聞きながら、心身ともに健康に過ごしていきたい。