「あるべきフェミニスト像」に悩む方へ、ジェンダーを学んだ私たちが伝えたいこと
「フェミニストなのに、私はどうして男に守られたいと思ってしまうんだろう」「私はフェミニストだけど結婚したいし夫からは守られたい」――。そんな思いをつづったMAYさんのエッセイ「フェミニストでも、守られたい。フェミニストだから、守りたい」が、6月に掲載されました。このエッセイのなかで取り上げられた「ジェンダーについて大学生が真剣に考えてみた ―あなたがあなたらしくいられるための29問」の執筆者たち3人とMAYさんがオンラインで集まり、エッセイが書かれた背景やフェミニズムなどについて意見を交わしました。MAYさんとの対談で考えたことを、執筆者である3人が綴ってくれました。
Aさん「ジェンダーに関する話を切り出すのは、身近な人にこそ難しいこともある」
今回MAYさんとのトークの機会をいただけたことで、自分たちの本の読者のリアルな声を聞くことができ嬉しかったです。リアルな声のモヤモヤから見えてきたのは、ジェンダーに関する話を切り出すのは、身近な人にこそ難しいということもあるということ。背景には、相手はジェンダーに興味がないのではないか、ジェンダーの話をすることで相手との関係を変えてしまうかもしれない、といった漠然とした不安があるように感じられました。
ジェンダーの話ってしづらい!と思っていらっしゃる方は、結構多くいらっしゃるのではないかと思います。私も特に関心を持ち始めた頃は、同じように思っていました。
そうしたときに、今回のトークであったように、「何でそう思うの?どうして?」と、相手の考えをときほぐしていくことが対話の重要な糸口になると同時に、対話を深めるコツであると再認識した次第です。ジェンダーの話ってしづらい!と思っていらっしゃる方は、相手の考えを聞いてみるところから、ジェンダーに関する対話を開くというのを実践してみてほしいなあと思います。
そうこうして真剣にジェンダーと向き合うほど、しんどくなることもあるかと思います。それぞれがそれぞれのペースで向き合っていけるといいなあと思います。
Bさん「簡単に『正解/不正解』を出すことができないのがフェミニズム、ジェンダー」
以前から読者の方と話してみたいと考えていたので、今回の対談の実現はとてもうれしいです。この対談のきっかけとなったMAYさんの記事を読んだとき、素直な戸惑いがとても伝わってきました。わたしはコラム5「ジェンダーを勉強するとつらくなる?」の執筆者ですが、過去の自分の経験もふまえて、フェミニズムやジェンダーを学びはじめると気持ちが揺らぐひとは多いのだなと、つくづく感じています。原稿を書いたときは、戸惑いや迷いを感じながらも続けてほしいな、後押しをしたいなと思っていました。あのコラムが形になってから二年、本が出版されてから一年たち、MAYさんとお話ししてふたたび、学びはじめたひとたちの戸惑いに思いを馳せてみました。もしかして、「こんなふうに感じるなんて、自分はフェミニストやジェンダーを学びたいと思っているのに矛盾してるのではないか」と、「正しくない」自分に混乱してしまうのかもしれません。けれどもそれは、裏返せば真剣に向き合おうとしている証だと思います。
簡単に「正解/不正解」を出すことができないのがフェミニズム、ジェンダーです。けれども、それに向き合おうとする自分に気づき、肯定して、続けていってほしいな、と思います。なによりも大事なのはその姿勢でしょうから。
Cさん「フェミニストを名乗る/名乗らないの違いを超えて…」
お話を聞いて感じたことについて、世間の「あるべきフェミニズム像」が大きな影響力をもつということがお話から伝わってきました。「完璧でないとフェミニズムについて語ってはいけない・フェミニストを名乗ってはいけない」という考え方が根強いようですね…。わたし自身は自他ともに認める男性ということもあって、さらに「フェミニスト」を名乗ることのハードルが高いですし、実際に名乗ってよいのかどうかの判断もつきかねているところではあります。ただ、フェミニストを名乗る/名乗らないの違いを超え、現在のジェンダーをめぐる状況をおかしいと思う気持ちを大切にして、まずは身近なところから少しずつ働きかけていけたらよいのかな、とわたしは思っています。
わたしたちの本については、対象を「ジェンダーについて興味のある高校生・大学生」と設定していたため、MAYさんに読んでもらえてうれしいです。とくに、ジェンダー研究に取り組むにあたって悲しい経験をされているときに手に取ってもらえたことは、わたしたち自身の出版のねらいでもある当てはまることでもあるので、その点でも頑張って本を出版してよかったなと思いました!
日常の中の素朴な疑問から性暴力被害者の自己責任論まで――「ジェンダー研究のゼミに所属している」学生たちが、そのことゆえに友人・知人から投げかけられたさまざまな「問い」に悩みつつ、それらに真っ正面から向き合った、真摯で誠実なQ&A集。
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