私はフェミニズムを学ぶ大学生です。いまはモラトリアムの真っ只中にいて、どう社会に出るか大いに悩んでいます。私は大学院に行ってアカデミックな道に進みたいと思っています。もっとフェミニズムを学び、社会の構造を変えて女性の地位を向上させる一助となりたい。そしてフェミニズムを学ぶ学生の手助けをしたい。
しかしご存知かと思いますが、大学院は期間が長いですし、通ってもお金をもらえるわけではありません。周りの友人は大学4年間を終えたら就職して自立していくのに、私は一体どうなるんだろう。大学院に行きながらバイトをしている人は大勢いる。社会人として働きながら大学院に通ってる人もいる。それは重々承知なのですが、私は周りと足並みを揃えられないことが本当に怖いです。モラトリアムが長くなるほど、社会に出る一歩が重くなるだろうとも思っています。
男性に守られたいと、フェミニストの私が思うのはおかしいこと?
こんな不安が大きくなるほど、私は誰かに守られたいと思ってしまいます。
結婚して、夫に経済的に支えられて好きな研究だけしていたい。他の先生たちのように塾の講師などしないで研究だけできたら、なんて楽しいだろう。何も隠さずに言えばこうなります。しかし、私が学びたいフェミニズムは家父長制のもと家事労働に従事させられた人々から生まれた考え方です。夫に経済的に守られているのは確かだけれど、その代わりに家庭という鳥籠に入れられて、社会という大空に飛び出して自立することを許されなかった。そんな女性たちのあげた声を、私は今まで大事にして学んできました。
私が守られたいと思ってしまうのは、夫に養われたい、すなわち家父長制の保護に入りたいと言っているのと同じです。フェミニストなのに、私はどうして男に守られたいと思ってしまうんだろう。
モヤモヤした気持ちを救ってくれたのもフェミニズムだった
しかしこんな私を救ってくれたのもまたフェミニズムでした。
一橋大学の佐藤文香先生はゼミ生たちと『ジェンダーについて大学生が真剣に考えてみた あなたがあなたらしくいられるための29問』(明石書店)という本を出しておられます。その中で「専業主婦になりたい人もいるよね?」という問いがあり、先生からの答えも掲載されています。先生は、フェミニズムの観点で問題なのは、職場での男女差別や賃金の非対称性によって専業主婦にならざるをえなかった女性たちだと答えています。専業主婦になるならないという選択は、「性別にとらわれず、自由に生きられる社会の実現」というフェミニズムの観点からすればいずれも間違ったものではないのです。
自分自身の気持ちを捨てないで。どんな選択をしても尊重される社会に
私はフェミニストだけど結婚したいし夫からは守られたい。そしてフェミニストだから夫も守りたい。男に守られたいという考えは、私が戦うからあなたは私の背中を守って、という考えにもできないだろうか。フェミニストだから絶対に男に頼らず自立しなければいけないわけじゃない、フェミニズムは女性の総「男性化」を求めているわけじゃないから。
自分自身の気持ちを捨てずに、フェミニズムを取り入れていく。ジェンダーによって選択肢を諦めることがなくなり、どんな選択肢を選んでも尊重される。それが今後の社会のスタンダードになりますように。