自分の推しポイントは長距離型の集中力にある。
大学時代は提出期限を過ぎることはなく、むしろスピードと完成度には信頼ができていたくらい。その証拠に、大学時代の卒業制作は企画書提出が一番乗りだった。
私の所属していたゼミは、3つある中で特に人数が多く、アイデアの引き出しが豊富な人が集まっていた。

企画書の提出も皆が速いと思っていて、提出したのはゴールデンウィークに入った初日頃だった。翌週の月曜日には先生から「企画書のプレゼンは提出順でやります」と言われた。自分が回ってくるのは大体、中間くらいだろうと思っていたが、まさかのトップバッターー。

映し出されたプレゼン発表の順番に思わずお茶を吹いてしまった

ディベート式だから自分にとっては有難かった。企画書提出期限が迫り、プロジェクターにプレゼンの順番が映し出されて自分の名前を探す。思わずお茶を吹いてしまった。
そんなに提出したのが速かっただろうか。その日の帰り道は、仲のいい友達といつ頃提出したのかという話題になった。

私以外の2人はゴールデンウィーク入って2、3日後に提出したと言う。私が日付を答えると「早くない?!」と目を丸くしていた。
私の場合、ある程度描きたいテーマが固まっていたからというのもある。
卒業制作のテーマは大学2年の秋に決めており、少しずつ構想を練りながら各授業の課題にも取り組んでいた。

2人からトップバッターについて意気込みを聞かれ、「誰か代わって欲しい」「1週間前なのに今から緊張して眠れない」などと弱気なコメントを返す。電車のホームで1人と別れて、2人で続きを話し込む。残り少ない学生生活を名残惜しいという話に発展する中で、飲み会が楽しみだという結論に至ったところで、友達が最寄り駅で降りる時間になった。

1人になって帰路を辿る。1人で頭の中を卒業制作課題や他の授業課題について張り巡らせて、カフェに入ってプレゼンに備えて企画の内容を緻密に煮詰めた。

乗り越えたプレゼン発表。先生の激励もありテーマを書き進めたけど…

1週間後。自分の書いた企画書は、同じゼミの全員に配布された。プレゼンの時間は20分。心臓が跳ねて、良くも悪くも緊張感のあるコンディションで臨んだ。
自分の制作意図と登場人物の特徴についてを話してから、作品の全体のテーマとキーワードを説明。そこで20分が経過した。

プレゼンを踏まえて先生から「企画書のテーマとして、まとまっていて面白そうだと興味を引く。先行作品でいうと登場人物に色が入っているから村上春樹の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』という作品を参考にして欲しい」とコメントをもらった。

私の後に3人発表して、プレゼン初日は乗り越えることができた。
授業の総括として「トップバッターは特に緊張したと思うけれど、初回に相応しい発表でした」と先生が激励してくれたおかげで、企画構成からテーマに沿って資料収集をしたり、内容を少しずつ書き進めて夏休みを迎えると、私自身の中で書くことの厳しい現実を突き付けられた。

その関係で調子が上がらず、いわゆるスランプ状態になってしまい、夏休みは1000字程しか進まず、自分で卒業を危ぶんだ。

長距離型の私。卒業制作は集中力尽きず、脱落せず取り組めた

本当に焦ったのは2ヶ月後だった。例年通りの書き方であれば、空白の部分も文字数に換算されるのだが、私の代からは書いた文字だけをカウントすることになった。
意地でも新作を書き上げたくて、過去作に加筆をしたい気持ちや頼ることを考えずに締切まで集中して書いた結果、無事に最低文字数を2万字超えて作品が仕上がってくれた。

あとは、卒業制作を提出した際に不備がないかの確認が行われ、それが通れば卒業試験を対面式で終えるだけになる。

何人かはワードソフトが上手く仕事をしてくれず、印刷した時に文字列がズレるという事故が起きていた。私含めて全員が無事に卒業確定と知らされて本当の意味でホッとした。

水泳や球技の運動が苦手な私の推しポイントは、テーマを設けて書かせると集中力が尽きないところ。特に卒業制作のような長距離型の取り組みは、脱落しない。
色んな影響を受けながら考えを巡らせる時間を楽しめる自分は、最強に推せると思う。