特別審査員・佐々木ののかさんからのメッセージ

本はすてきな友達です。道に迷ったときの羅針盤で、知らない景色を見せてくれたり、とてつもない怪力で窓のない部屋の壁をぶち破ってくれたりします。

たとえば、前職で体調を崩して生きるのがつらかったとき、安部公房の『死に急ぐ鯨たち』(安部公房/新潮文庫)に収録されている短編のひとつを読んで命を救われたことがあります。とはいえ、生きることの素晴らしさが書かれていたわけではなく、死んでしまって肉体を失った兵士たちが叫んでも叫んでも生者に声を届けられない阿鼻叫喚が執拗に描かれていました。それまで死ねば楽になると考えていたことが浅はかに思え、死んでも楽にならないのかと絶望し、生を惰性で続けることにしたのです。

「死にたいときに命を救われた本」というお題を出したとしても、自分に近しい境遇の主人公が強く生きようとする物語に救われる人もいるでしょうし、さまざまな自殺の方法が客観的に書かれた『完全自殺マニュアル』(鶴見済/太田出版)を読んで「いつでも死ねると思うと楽になれた」という人もいるでしょう。「『私』をつくった本」を紹介しようとすると、自ずと「私」が出てきます。それこそが、私が知りたいことなのです。「私」に影響を与えた本について触れながら、「私」が浮き彫りになった文章を読ませてもらえるとうれしいです。

◆佐々木ののかさん プロフィール
文筆家。北海道在住。「家族と性愛」という看板を掲げた取材記事やエッセイの執筆をしてきたが、最近は新聞や雑誌に書評や作品論を寄せている。著書に『愛と家族を探して』(亜紀書房)がある。

◆今の「私」を作った本

・取り上げる本は一冊だけにしてください。
・簡潔でいいので、どんな本なのか読み手にわかるようにしてください。
・本を読む前と読んだ後の変化(行動に限らず、心境の変化でも構いませんし、スケールは問いませんが、あなたにとって切実な変化)がわかるようにしてください。※死にたいときに命を救われた本でなくてもちろん構いません。

締め切りは1月23日(日)です。
また、エッセイが掲載された方全員に、「お年玉」としてアマゾンギフト券1000円分をお贈りいたします。「かがみすと賞」に選ばれた方には賞金5万円をお贈りします。

<応募要項>
◆対象:18歳から29歳の女性
◆1500字程度
自身の体験に基づいたもの(創作は認められません)
エッセイ本文の冒頭に必ず「佐々木ののか賞」と記入してください
◆ほかのSNSやブログなどに掲載したり投稿したりしていないオリジナルコンテンツに限ります
「お年玉」は、企画の対象である募集テーマに限られますので、お気をつけください。

締め切り:佐々木ののか賞 1月23日(日)

<応募方法>
応募規約を読んでご同意いただき、下記の応募フォームから、タイトル、エッセイ本文、サイト掲載用のプロフィール、住所などを記入してください。