かがみよかがみでは、「裏切りの記憶」をテーマにエッセイを募集しました。たくさんのご応募の中から、編集部が一番心に響いたエッセイを「かがみすと賞」として選ばせていただきました。

今回は、かがみすと賞1本、編集部選として2本のエッセイをご紹介いたします。

◆かがみすと賞

「もっと早く言ってほしかった」。嘘を重ねた半年、私は彼の人生を奪った(こめこ)

あらすじ:電車に乗っていると聞こえた懐かしい駅名。思い出したのは16歳から4年半付き合った彼のこと。穏やかで幸せな交際。でも別れるまでの半年間、私は彼を心の中で裏切っていたのだと思う。

◆担当編集者からのコメント

4年半、そして思春期からともに過ごしてこられた彼との別れは、こめこさんにとっても大変な決断だったはず。別れるかどうか、つい自分ひとりで考えて決断してしまうという経験に、心当たりのある方も多いのではないでしょうか。特に次の部分はとても心に残りました。

別れを切り出せず勝手に悩んでいたあの半年間、私にとって時間の無駄だったかもしれないとさえ思っていた。

けれどその半年間は、同じように彼の人生にとっても大事な時間に違いなかった。

当時は自分ひとりで決断を下したかもしれないけれど、今こうして相手の立場で「別れ」を考え、想いを綴ることは簡単ではなかったはずです。また、パートナーと楽しく付き合うだけでなく、言いづらいことであっても、様々な思いを共有することは大切なんだと改めて感じることができました。エッセイ全体としては、具体的なエピソードと、その思いや体験から得た気づきなどが上手くまとめられていて、とても読みやすくわかりやすかったです。グッとひき込まれる素晴らしいエッセイでした。

◆次点①

大好きな生まれつきの髪色。ある日、先生に黒染めを強要された(佐久間麻梨子)

あらすじ:生まれつきの明るい髪色が大好きで誇りだった。だけど高校最後の夏、「黒く染めるように」という校則指導が。信頼している先生に相談すると、帰ってきたのは期待とはかけ離れた言葉だった。

◆担当編集者からのコメント

私も地毛が明るいほうなので、読んでいて共感が止まりませんでした。髪は、色以外にも、生まれつきウェーブがかかっていたり。当たり前に多様なはずなのに、見た目に関する校則は、いまだにそうした生まれつきの違いも統一しようとするものが多いですよね。

そんな環境の中で生徒指導の先生に想いを伝えた佐久間さんの勇気や、担任の先生の言葉はとても印象的でした。感情の乗った文章でありながら、読者を置いてけぼりにしない丁寧な文体が素敵だなと感じました。想いの詰まったエッセイを、ご投稿ありがとうございました!

◆次点②

別れた彼が、私と結婚したがっていたと聞いた。また裏切ってしまった(naonanne)

あらすじ:私の帰国を待つと言った彼には、留学から3カ月で別れを告げられた。そして私から別れを告げた恋人に、「ずっと一緒にいたいね」と言ったのは私だった。恋人の間で交わされる約束と、そして裏切りって…。

◆担当編集者からのコメント

「別れることはイコールで約束を破ること」そう考えるに至った経験やneonanneさんの想いが丁寧に綴られているエッセイです。特に次の一文は印象に残りました。

恋愛経験が豊富な人に、年を重ねるにつれて憧れなくなった理由は、自分の中で守れなかった約束が増えていくのが嫌だから。

このほかにも、恋人との関係の重みをわかりやすく表現されている描写が印象に残りました。温かみのある文体、そして複数の経験を語りながらも読みやすい構成も素敵です。多くの方に届いてほしいエッセイです!

以上、「裏切りの記憶」のかがみすと賞、編集部選の発表でした!たくさんの素敵なご投稿を、本当にありがとうございました。
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