◆特別審査員・辻愛沙子さんからのメッセージ

「Be a lady, they said. 」

女性らしくありなさい、と人は言う。
あなたのスカート短すぎじゃない?胸元が開きすぎ。肌を隠しなさい。誘惑しちゃダメ。でもセクシーさも大事。魅力的でいなくちゃ。着飾りすぎ。でもオシャレでいなくちゃ。女を捨ててるって言われちゃうから。

女性らしくありなさい、と人は言う。
太りすぎてはダメ。細すぎてもダメ。そんなに食べるのはやめなさい。早食いは良くないよ。サラダを頼まなきゃ。炭水化物を食べちゃダメ。デザートなんて論外。もっともっと痩せるべきでしょ。そのドレス入らないの?ダイエットしなよ。食べるものに気を使って。お水はたっぷり飲むべし。そのジーンズくらい履けなくちゃ。やだ、痩せすぎて骸骨みたい。なんでちゃんと食べないの?痩せこけて見えるよ。病気みたい。男性はむっちりした女性が好きなんだから。でも細さも大事。華奢じゃなきゃ。小柄に。フェミニンにね。Sサイズの体型になりなさい。いや、やっぱりXSくらいじゃなきゃ。

女性らしくありなさい、と人は言う。
脱毛しなきゃ。傷は隠して。唇はふっくらさせて。シワはボトックスで直して、顔はリフトアップして。たるんだお腹は引き締めて、でも胸は盛ってふくよかに。ナチュラルでいなきゃね。ちょっと頑張りすぎだよ。やりすぎじゃない?男性は頑張りすぎてる女性は引いちゃうよ。

女性らしくありなさい、と人は言う。
ちゃんとメイクしないと。チークしてアイライナーを引いて眉毛を描いて、まつげはもっと長く、唇は華やかに、ファンデに、パウダーに、ブロンザーに、ハイライトも。髪が短すぎ。髪も染めなきゃ。でも青はだめ。清楚じゃないから。若くいなきゃ。老けてはいけない。男性に好かれるには綺麗でいなくちゃ。

女性らしくありなさい、と人は言う。
体は大事にしなきゃ。純粋でいなきゃ。ふしだらであってはいけない。いろんな人と寝ちゃダメ。男性は軽い女性を嫌うから。お堅くいるのもダメ。ガードが固すぎるのもウケない。笑顔でいなきゃ。男性を喜ばせなきゃ。経験がないとね。エッチでいなきゃ。ピュアでいなきゃ。でもセクシーさも必要。クールな女性でいなきゃ。周りと一緒はダメ。

女性らしくありなさい、と人は言う。
レイプされないように気をつけなきゃ。飲みすぎちゃダメ。1人で歩いちゃダメ。夜は出歩くべきじゃない。そんな格好してちゃまずいよ。自己責任だよ?知らない人に笑いかけちゃダメ。YESって言っちゃダメ。NOもダメ。

女性らしくありなさい、と人は言う。
喋りすぎちゃダメ。怖そうって思われちゃダメ。惨めに見えてもダメ。優しくなきゃ。威張っちゃダメ。感情的になっちゃダメ。泣き落としはやめて。大声を出すのはやめなさい。汚い言葉もダメ。彼の洋服は畳んであげて。彼のために料理して喜ばせてあげなきゃ。それが女性の仕事なんだから。いい奥さんにならなきゃ。自分の苗字を捨てて、彼の苗字に変えるのが当然。選択的夫婦別姓?クレイジーなフェミニストなのね。子供は産まなきゃ。子供が欲しくない?女性なんだし、いつか欲しくなるよ。
自己主張はだめ。控えめに。わきまえなさい。

“女性らしく”ありなさい、と人は言う。

これは、Girls.Girls.Girls.Magazineという海外の雑誌のプロモーション動画にて読み上げられた「Be a lady, they said. 」という詩です。
これを読んで、この国で生きる女性たちはどう感じるでしょうか。大袈裟だなぁ、と思うでしょうか。

昨年「わきまえない女」という言葉が、あるニュースをきっかけに話題になりました。
「わきまえない」という言葉が多くの女性たちの背中を押したのは、きっと上記のような「女性たるものこうであれ」の嵐を、小さい頃からずっと日常の中で浴び続けてきた女性が多かったからではないかと感じています。ジェンダーギャップ指数120位のこの国で、今日もあなたの歩もうとする道を阻もうとしてくる声があるかもしれない。
それでも、そんな無責任で抑圧的な声に耳を傾けず、ただひたすらに我が道を歩もうとするわきまえない女たちだって、きっと確かにいるはずだから。
何か特別なことでも特殊な人なわけでもなく、私たちがただ私たちらしく生きている、そんな「わきまえない皆さんの日常」を聞かせてください。
“私たちは1人じゃない”と、この企画を通じて皆さんにも感じてもらえたら嬉しいです。

◆辻愛沙子さん プロフィール
株式会社arca CEO / Creative Director
社会派クリエイティブを掲げ、「思想と社会性のある事業作り」と「世界観に拘る作品作り」の二つを軸として広告から商品プロデュースまで領域を問わず手がける越境クリエイター。リアルイベント、商品企画、ブランドプロデュースまで、幅広いジャンルでクリエイティブディレクションを手がける。2019年春、女性のエンパワメントやヘルスケアをテーマとした「Ladyknows」プロジェクトを発足。2019年秋より報道番組 news zero にて水曜パートナーとしてレギュラー出演し、作り手と発信者の両軸で社会課題へのアプローチに挑戦している。

締め切りは1月30日(日)です。
また、エッセイが掲載された方全員に、「お年玉」としてアマゾンギフト券1000円分をお贈りいたします。「かがみすと賞」に選ばれた方には賞金5万円をお贈りします。

<応募要項>
◆対象:女性(今回のテーマに限り、年齢制限はありません)
◆1500字程度
自身の体験に基づいたもの(創作は認められません)
◆ほかのSNSやブログなどに掲載したり投稿したりしていないオリジナルコンテンツに限ります

エッセイ本文の冒頭に必ず「辻愛沙子賞」と記入してください。
「お年玉」は、企画の対象である募集テーマに限られますので、お気をつけください。

締め切り:辻愛沙子賞 1月30日(日)

<応募方法>
応募規約を読んでご同意いただき、下記の応募フォームから、タイトル、エッセイ本文、サイト掲載用のプロフィール、住所などを記入してください。