◆辻愛沙子賞 大賞

「私の人生は私のもの」と反抗した日、なめられてきた私が成仏した(soko)

あらすじ)背が低くて童顔で、よく男に舐められる私。「かわいいね」と言われるのが気持ち悪かったが、そんな期待にも応えて「かわいい女」であり続けてきた。しかし、新しい職場で同僚になった男は私を感情のはけ口にしたため、私はついに彼と正面から激しくぶつかることになった。

講評

相手の属性を見定めた上で、若い女だから、自分より弱そうだから、と軽視し踏みつけてくる姑息で卑怯な人たち。あまりにそんな人たちと出くわすことが当たり前なこの国で、その加害性とどう戦っていくか。実体験から生まれたコラムだからこそ、わきまえない女の強い姿勢を学び背中を押してくれる文章でした。

一方で、そういった敵味方の二項対立だけでない、自分自身に内包されたバイアスもまた、彼らと同じように偏見を温存し増幅させる要因かもしれない、そんな気づきがこのコラムの真髄のようにも思います。自分の中に根を張る「かわいい女」を自覚し向き合っていく、そんな誠実さと真っ直ぐさと強さをsokoさんから感じました。

「わきまえない女」というのは、常に戦っていけるような強い人だけじゃない。悩んで葛藤して時に押し流されながらも、日常の中にすこしずつ、わきまえない自分を宿していくということ。それこそが「わきまえない女」のリアルなのかもしれない、そんな気持ちにさせてくれるコラムでした。

◆辻愛沙子賞 大賞

「だからダメなんだよ!」と舞台で叫んだ日、客席は笑いに包まれた(ぽにょはら)

あらすじ)大学生のとき、お笑いサークルに所属していた。学外のライブで外部の学生と交流するようになると、女の演者であるということで違和感を持つようになった。女性芸人をセクハラめいた言動でイジるなど、女の枠にはめ込まれ、役割を押し付けられるのだ。そして年に2回ある大きな大会で、決勝に進出した私は舞台で…。

講評

「ただの冗談じゃないか」「たかが言葉尻でしょ」「そんなに怒る事?」「気にしすぎだよ、面倒臭い奴だな」

声を上げると、そんな風に揶揄されることすらある、日常の中にあまりに当然のごとく溢れている小さなバイアスの棘たち。その小さな棘を、それぞれが波風立てないように見て見ぬ振りをしてやりすごしていく。その積み重ねがいつのまにか沢山の傷を生み、偏見の根を深く太く肥やし、社会の不均衡へと広がっていくのだと、そんな事をよく考えたりします。このコラムには、まさにそんな小さな"見て見ぬ振り"を拒否し、連鎖を断ち切る強い意志が宿っていました。

舞台の上での彼女の叫びは、私の声でもあり、あなたの声でもあり、また別の誰かの心の声でもある。社会にその叫びを届けてくれてありがとうございます。心の底から連帯します。

以上、「辻愛沙子賞」の発表でした!たくさんの素敵なご投稿を、本当にありがとうございました。
現在募集中のテーマはこちらから。みなさまからのご投稿、お待ちしております!