飢えている。愛に飢えたこの気持ちから目を背けるために秋を感じるのだ。いま8月中旬。夏真っ盛りではあるが、徐々に秋が近づいているのを感じている。
19時半まで明るかった空も19時半にはもう暗い。
4時半には明るくなりかけていた空もまだ薄暗い。
季節は着実に秋に近づいていっているのだ。
今年こそは、夏を感じに海に行こうとか花火を見に行こうとか考えていたのに、結局何もしていない。
秋こそは、秋こそは……。充実した日々を過ごしたい。
そう思って視線を手元に向ける。
◎ ◎
部屋の中で1人涼んでいる手元には1冊のノートがある。
ページを1枚めくると、緑のペンで大きくこう書いてある。
<2023叶えたい100のリスト>
叶えたい100のリストを今年になって何度書いたかわからない。
毎日がとても辛くて、周りの人が輝かしく見える。
仕事は辛いし、プライベートでも特別楽しいことなんてない。
日々医療の現場で働いているから、毎日を家で過ごせることの素晴らしさやこの日常が当たり前じゃないことなんて知っている。でも、でも、私は今の生活がなぜか辛くてたまらない。
好きなことはない、趣味もない、彼氏もいない、一緒に遊びに出かけるような友達もいない。
『好きなことで生きていく』そんな言葉が流行っているけど、好きなことがない私はそのスタート地点にも立てないんじゃないかと勝手に思う。
だから、少しでも現状を変えたくて、このリストを定期的に書くのである。
このリストの中に絶対叶えようと取り組んでいる3つのことがある。
1つ目は、ラジオに出演すること
2つ目は、新聞に掲載されること
3つ目は、月1で旅行して、1年で12箇所を回ること
いつも1人でいるからか私は認知されることを求めているのかもしれない。
◎ ◎
旅行は月1で予定をたてて行くだけだからこのままいけば叶えられるだろう。
でも、問題はラジオと新聞だ。スキルも知名度もない私がラジオに出演したり、新聞に掲載されたりなんてまあない。
ラジオは何とか収録をさせてくれる人を見つけて、インターネットラジオだけど、出演することができそうだ。さて、問題は新聞だ。あと3ヶ月の間に新聞に掲載されるようなことが我が身に起きるとは今の時点で想像できない。
考えていても月日は過ぎるだけだ。秋のイベントを楽しんでいれば、そのイベントに新聞社が取材に来ているだろうか。献血の日に献血に行ってみようか。この秋収穫する予定のさつまいもで子供対象の焼き芋パーティを開こうか。そんなことを考えて、1日が終わってしまう。
この秋は新聞に載ることを目標にたくさんの場所に出歩き、秋を感じようと思う。
果たして秋を終えた時私は、新聞に掲載されることを達成できているのだろうか。
でも、正直新聞に掲載されても、私の心の中の黒いモヤモヤした気持ちは消えないだろう。私は知っている、自分は愛に飢え、秋を満喫するふりをするのだ。