ウェブメディア「かがみよかがみ」の主役は、10代後半から20代の女性たちが書いた投稿エッセイです。ですが、編集部には「どんな風に書いたらいいか分からない」「どうしたら文章がうまくなるの」という声も寄せられます。そこで、みなさんのエッセイを最初に拝読する立場から「こんなことに気をつけて書くと、もっと読者に伝わるかも!」というエッセイの書き方のコツをお届けしたいと思います。

1.「あなただけの体験」が読みたい

かがみよかがみのエッセイでは、ぜひ「あなただけの体験」を読ませてほしいなと思っています。

コンプレックスとの向き合い方、恋愛で感じた衝撃、就活のしんどい思い出や違和感……。もし「どんなことを書いたらいいか分からない」という人がいたら、まずは同世代のかがみすとたちのエッセイを読んでみることをおすすめします。

がぶさんの就活をめぐるエッセイは、21歳のリアルが詰まった描写に、ぐいぐいと引き込まれていきます。

いつもバイトが終わった後は、199円の枝豆とヨーグルトで2時までファミレスにいりびたり、閉店ですよと言われてから朝までは自転車置き場であくびもせずに話し、太陽がのぼったら学校へ行く支度。 18歳の時から続いたこのスタイルは、今もなんら変わらない。

内定も彼氏もお金もなし〝内定がある人〟にでも仮装してみようか


お母さんから言われた何げない一言が今も胸に刺さっているRuruRurikoさんのエッセイは、言われたシーンが目に浮かぶよう。

時に大人の何気ない一言が子供には大きいのだ。我ながら結構似合うんじゃない?と思った服は、試着室のカーテンを開けた私を見た母からの「もうちょっと痩せたらピッタリだろうね笑」という一言で、やっぱり私は太ってるんだと思わされた。

「痩せた方がいい」大人の何げない一言が子どもの私に響いた


「5年後の女の子たちへ」というテーマで投稿してくれた沙波さんのエッセイは、ショックだった体験からラストに向けて、だんだんと筆致が明るくなっていくようで勇気をもらえました。

一歩も踏み出せず燻っていた時代を思うと、この一歩は本当に大きい。だから、もう一歩、みんなで頑張って前進したい。まずはわたしが、きちんと周囲の友人に話すところから始めたい。一人歩きしてしまっている「フェミニズム」の言葉の意味を訂正し、性犯罪や女の子らしさに苦しむ子達の呪いを少しでも解きたい。

「たかが露出狂ごとき」と言われる社会から「痴漢って何?」となる社会へ

フェミニズムといった社会問題や大きなテーマを扱うときも、「女性は○○だ」「△△はこうあるべき」と主語を大きくせずに、自分の感じていることを書いてみてほしいなと思います。

皆さんの中に、きっとエッセイの種は眠っているはず。

ちなみに現在は、コンプレックスとあわせて、12月1日締め切りで「捨てたい就活体験記」のテーマでエッセイを募集しています。投稿お待ちしています。詳細はこちら

2.夜のラブレターは読み返せ

エッセイの種を見つけて、よし、「あの時の感情について書いてみたい」といざ書こうと思ったら、なかなか筆が進まない……。
エッセイを書くのって勢いも必要ですよね。気持ちがノッた時にばーーーーっと書き上げる。無事に書き終わったら、「よし、やりきった!出そう!」となる気持ち、分かります。

でも、ちょっと待って下さいね。「夜のラブレターは読み返せ」と言うじゃないですか。

わたしも記者時代から「あるある」の経験なんですが、「今ノッてるーーー」って時に書いたものって、ところどころ「経験した自分にしか分からない表現」になっていることも。

特にエッセイは、個人的な体験を書くので、5W1H(Who誰が、Whenいつ、Whereどこで、What何を、Whyなぜ、Howどのように)をほとんどすっ飛ばしてしまうこともあるんじゃないでしょうか。自分にとってはありありと思い出せる体験だからこそ、なんとなく書いたつもり(伝わってるつもり)になってしまう……。

だから、いったん「初めてこのエッセイを読む人」になったつもりで読み返す。
読者にとって分かりづらいかも?というところは、サービス精神旺盛になって、できるだけ具体的な情報を盛り込んでみましょう。

文筆家・佐々木ののかさんも、コラムを「10回は書き直す」と言ってました。
そこまでいかずとも、いったん「自分のことを知らない人が読んで分かるかな」という目線で読み返してみると、エッセイがグッと良くなると思います。

さらに、かがみよかがみでは投稿エッセイを「1500字程度」としていますが、それは読者に最後までエッセイを読んでもらいたいから。あまりに分量が多いと、読者が途中で離れてしまうこともあるからです。

Googleフォームを使っている方は「ツール→文字カウント」で自分のエッセイの文字数が分かります(ワードは校閲→文字カウント)。

3.そのタイトル、自分だったら読みたい?

記事のタイトルは、「かがみよかがみ」に来てくれた読者が最初に目にするエッセイの「顔」です。
たとえば、この記事のタイトルが
「記事について」
という5文字だったら「クリックしよう」って思いましたか?……たぶん思わないですよね。

みなさんがエッセイを書き上げたら、このエッセイを初めて読むいち読者になったつもりで、エッセイのテーマが伝わる、もしくは「うわ、読んでみたい」って思わせるタイトルを考えてみませんか。

実はタイトルを考えることって、文章がうまくなることにもつながります。タイトルがパッと思いつく人は、このエッセイのテーマや「伝えたいこと」が自分でもよーく分かっているからです。

……ってめっちゃ偉そうに言ってますが、「読まれるタイトルをつける」ってすっごく難しい。わたし自身も、紙面の編集者を経験して初めて意識するようになりました。

でも魅力的なタイトルの記事って、思わず読んでしまいますよね。編集部でもよりよいと思うタイトル案を提案しますが、せっかくの自分の言葉が詰まった大事なエッセイ。少し悩んでつけてみてもらえると嬉しいです。