たくさんのご応募ありがとうございました。すべて大事に読ませていただきました。
ありきたりな感想になってしまいますが、どの失恋も全て無駄じゃないな、血肉となっているなと思いました。失礼を承知でいうと、ちょっと羨ましいなとすら思いました。地球が壊れるほど泣くことも、誰かを愛しいけど憎いという感情も、もう何年もしてないなあと。

先日、この企画にあわせて「失恋女子会」を開催しました。

そこで、「みんな失恋したら何をする?」という問いの中で「詩を書く」「音楽にする」…と、失恋のもやもやで何かを生み出そうとしているんだなと思いました。私が失恋したときに一番うれしかったアドバイスは「これで良い文章が書けそうだね」と言われたことでした。これは物書きの宿命なのでしょうか。失恋すら肥やしにする!むしろ、失恋でしか見つけられない言葉があると思うのです。と、いうことを今回のみなさんのエッセイを読みながら、改めて確信しました。

長くなりました!いや、本当に読むたびに泣いちゃって選考が進まない進まない(笑)。全員に感謝の言葉をお送りしたいのですが、きょうはいくつか編集部選としてお届けさせていただきます。

「別れの瞬間」かがみすと賞

◆初めて参加した結婚式。好きな人は、ドレス姿で輝いていた(お嬢さん)

わたしはあの人にとって、恋愛感情を向ける対象にすらなれなかった。なれなかったというより、最初からその対象に含まれていなかったし、これからも一生なかっただろう。 もしわたしもあの人も大人だったとしても。 だけどわたしは別に男の人になりたかったわけじゃないし、あの人が女の人だから好きになったわけでもない。縁がなかったと言ったらそれまでだけど、まあ、そういうことなんだろう。 誰かを好きになるのに性別を意識したことがなかったし、小さい頃から性別自体を意識したことが全然なかった。自分のも他人のも。 初めて参加した結婚式。好きな人は、ドレス姿で輝いていた

初めて参加した結婚式。好きな人は、ドレス姿で輝いていた

誰かを好きになるのに、性別も年齢も関係ない。
そうした気持ちが素直に書かれていて、すっと心に入ってきました。エモーショナルになりすぎず、たんたんと。現在から過去の気持ちを振り返る文章がすてきだなと思いました。引用文以外もぜひ全文通して読んでいただけるとうれしいです。

【編集部選】
「かがみすと賞」1本だけではもったいない!あれもこれも読んでもらいたい!ということで、それぞれの編集部員が気に入ったエッセイも紹介させてください。
こちらもたくさんの人に読まれました。

その人は私ではなく、「日本人の女の子」とキスしたかっただけだった(薄荷さん)
冒頭の「映画のような夏だった」の言葉通り、美しい描写が目に浮かびます。

それからの日々は、好きだったのにほとんど忘れてしまった映画のように、美しくぼんやりした思い出になっている。ものすごい速さで回る移動遊園地の観覧車に乗ってきゃあきゃあ騒いだこと。暮れない夏至の陽のもと、いつまでも港で船を眺めたこと。砂浜に寝転んで一緒に本を読んだこと。パーティーで飲み過ぎて頭が回っていないはずなのになぜかドイツ語がいつもより流暢になって、「きみはずっとお酒を飲んでいるべきだね」とからかわれたこと。

その人は私ではなく、「日本人の女の子」とキスしたかっただけだった

イエローフィーバーという、いやな感じのテーマを大きくしすぎずに個人の体験にまとめているところもうまいなあと思いました。

◆ 卒業式、1枚だけ撮ってくれたツーショット「これがもう最後なんだ」(HOKUさん)
高校時代に大好きだった「彼女」のお話。甘酸っぱい3年間を、一緒に振り返らせてもらっているようなエッセイでした。

最後の思い出に写真を一緒に撮りたいとお願いした。 あっさりといいよ、と言われた瞬間に、「あ、本当に最後なんだ」とストンと胸に落ちた気がした。本当に最後なんだ。もうこの人、私と会うつもりないんだ。 返事がこないからと新着メール問い合わせを30分くらいし続ける日々も、3回に一回くらい来る返信を保護する日々も、もう来ないんだ。私の人生に彼女はもう現れないんだ。そう思ったら悔しくて、鼻の奥が熱くなってどうしようもなくなった。唯一手元に残るツーショットの私はすごくすごく変な顔をしている。

卒業式、1枚だけ撮ってくれたツーショット「これがもう最後なんだ」

LINEの返信が来ていないか何度もスマホを確認したり、違う人からの返信にがっかりしたり……。大好きな人の一挙手一投足に一喜一憂してしまうのが、「焦がれる」ってことなんだなぁと改めて感じて、切なくなりました。でも、大切な思い出なんですよね。

「スクールカースト」上位の初恋の彼に「可愛い」と言われたけど (えてちゃんさん)
中学時代に好きだった男の子と再会したときに、「私、君のこと、すごく嫌いだった」と答えてしまった話。客観的で淡々とした描写で、「スクールカーストの下位にいた」自分と、好きだった男の子との苦い思い出を振り返ります。
好きだったはずの人に、なぜ冷たい答え方をしたのか。
最後の締めくくりに、すとんと腑に落ちるものがありました。

数年経って、彼に「あの時はごめん」と言われたとしても、当時誰にも打ち上げられずにいた私の気持ちは、決して報われることはない。私が彼に「嫌い」と言ってしまったのは、快諾することであの時苦しかった自分の気持ちを無きものにしたくなかったのかもしれない。彼が好きだったという事実以上に、あの時の自分を守ってあげたいと思ったからなのかもしれない。

「スクールカースト」上位の初恋の彼に「可愛い」と言われたけど 

まず何よりも、自分を大事にしようと思うその姿勢が、ステキだな、と思いました。

編集部選としてお届けさせていただきましたが、こちら以外にも、今のあなたの気分にぴったりの失恋エッセイもあると思います。
ぜひこちらの「別れの瞬間」特集から読んでみてください。

甘酸っぱい(だけじゃない超ビターもありますが)失恋体験を筆者と一緒に味わっていただければと思います。
次回は「捨てたい就活体験記」のかがみすと賞を発表させていただきます!投稿いただいた方々、すみませんがもう少しお待ちくださいませ。大事に拝読しております!

現在は「わたしと東京」「髪型変えたワケ」で募集中です。お待ちしております。