私は関西に住む26歳だ。母と妹と三人で支え合いながら生活している。
ちょうど一年前、私達にとって事件が起きた。父の母に対する暴力だった。
口下手な父は、家でほとんど会話をしなかった。父の感情を読み取るのは、表情と雰囲気。

暴力を振るう数日前から、父と母の雰囲気が悪くなった。その雰囲気を感じ取っていた私は、父に「ちゃんと母と話した方がいい」といったけれど、「貴女には関係ない」と無視されてしまった。私はショックで食事が喉を通らなくなり、精神的にも限界だったので、父に「家を出ていく」と、宣言した。

私が家に帰ると、母は殴られた後だった

宣言した日の夜、私が仕事から帰宅すると、父は玄関先で煙草を吸っていた。いつもは挨拶を交わさないのだが、この時ばかりは「おかえり」と言われた。違和感を感じた私は、すぐリビングへかけ上がった。母は殴られた後だった。左頬は腫れ、口から血が流れ、無言で帰って来た私を見つめて、「もう限界だ」と訴える母。私はすぐに警察に電話を掛けた。

警察署で、今日はどうするのかと、今後はどうしたいのかと聞かれたけれど、母はもう何も考えられない状態になっていて、状態を聞き付けた妹が、バイト終わりに警察署へ来てくれた。父が親戚の家に行くと言うので、私達は自宅へ戻ることになった。その後、行政や友人たちの力を借り、父に居場所を知られることなく、引っ越した。

離婚のタイミングで母が彼氏を連れてきた

さあ、これから離婚に向けて色々と準備だ!というときに、母が連れてきたのが、以前から付き合っていた彼氏だ。
彼が独身なら印象が違ってたかも知れないが、彼にも家庭があった。母がずっと辛い思いをしているのは、私も分からない訳ではない。母に友達では無く、特別な人がいるのだろうなと感じていたし、私の第一印象では「めっちゃ強面の誠実じゃ無さそうな人」だった。私自身も新しい生活を始める不安なタイミングで、なぜ私に彼を紹介したのか、全く理解できなかった。
私は母に、「なんで家に連れてくるの?今からが一番大変で危機感持たないといけないのに、しかも、家庭を持ってる人なんてありえへん」と言った。母は「お母さんだってしんどいの!こんなに頑張ったんやから、好きにしていいでしょ?向こうも離婚するって言ってるから」と。

彼は毎晩家に来て、晩御飯を食べたり、シャワーを浴びたりして帰っていった。彼が家に来た後は、母と毎日言い合いになった。私は親友に話を聞いてもらって、「やっぱり、一人暮らしを始めるべきかな?」と思っていたら、彼は来なくなった。奥さんにバレたのか、別の理由かは分からない。その後、両親は離婚し、母の彼氏も最初から居なかったの様な暮らしが始まった。

母と本音でぶつかって、本当の家族になれた気がする

父と暮らしている間は、両親の話す姿を見ていないせいもあり、中々、自分の気持ちを素直に伝えきれなかったし、人の顔色ばっかり伺っていた。でも、勇気を出して話してみると、心が凄く軽くなった。今では、母とコイバナが出来るような関係性になった。当時はとても辛かったけれど、今思うと、母とあの時ぶつかったからこそ、本当の家族になれた気がする。少し勇気は必要だけれど、家族だろうと、伝えるというのは大事なことだと改めて感じる。この文章を読んでくださったひとにとって、勇気を出す、後押しになれますように。