生理=負の象徴? 生理への考えを180度変えた言葉
年末特別企画
「かがみよかがみ」が8月29日にオープンしてから、4カ月がたちました。18~29歳の女性を対象にエッセイを募集しているのですが、年代や性別を問わず、多くの方からも投稿いただきました。素晴らしいものばかりで「たくさんの人に読んでいただきたい…!!」と、まさに文字通り「泣く泣く」断念している状態です。そのなかからいくつか、「年末特別企画」として紹介させてください。
「かがみよかがみ」が8月29日にオープンしてから、4カ月がたちました。18~29歳の女性を対象にエッセイを募集しているのですが、年代や性別を問わず、多くの方からも投稿いただきました。素晴らしいものばかりで「たくさんの人に読んでいただきたい…!!」と、まさに文字通り「泣く泣く」断念している状態です。そのなかからいくつか、「年末特別企画」として紹介させてください。
小学4年生で初潮をむかえたから、生理とはもう20年近い付き合いになるのに、未だうまいかわし方がわからない。
子どものころは特に大変だった。
私の生まれ育った東北の田舎では、「生理=穢れ」という概念が生きていたから、生理は放送禁止用語並みに、口にしてはいけない言葉だった。母曰く、アノ日はアレで、アレだから「アレ、気を付けなさいよ」だった。以上、性教育終わり。
小学生の頃、男性のクラス担任にどうしても生理だと言えなくて、プールの授業でケガをしている、風邪をひいているとウソをつきつづけた。
この日だけはどうしてもはずれてくれと願っても、修学旅行では必ず生理になったし、どうしたらバレずにナプキンを持ち運べるかいつも四苦八苦していた。
生理はつらい。経血は汚い。
毎月の生理も、日々女らしくなっていく自分の身体も、イヤでイヤでたまらなかった。
健康な大人の女性の証であるはずなのに、それが「穢れ」であるという矛盾。
毎月毎月、憂鬱で、しんどくて、つらい。
だから、「生理、どうですか。順調ですか。つらくないですか。なんでこんなにめんどうくさいことが毎月あるのかなあ、って思っていませんか。きっと思っていますよね」で始まる三砂ちづるさんの『少女のための性の話』(ミツイパブリッシング)を読んだときは、ぐーっと少女時代に引き戻されて、涙がぽろぽろ出た。
「初潮がきたとき、びっくりしましたよね。 こんなものがある、というのは小学校の保健の授業とか、おかあさんとかに聞かされてはいたけれど、実際にどういうものがやってくるのか、想像もつかなかったにちがいない。ここから血液が出るなんておそろしいこと、と思っていたかもしれない。最初のときにどっとたくさん出ちゃって、すごく服を汚して、はずかしいことになったらどうしたらいいの、と思っていたかもしれない。 それでもきっとじつは、はじまってみれば、『たいしたことなかった』のではないですか?」
『少女のための性の話』(三砂ちづる/ミツイパブリッシング)
(中略)
「大人の女性になるあなたのからだに起こってくること、これからほんとうにいろいろあるのだけど、たいがいはそんなふうに『すごく心配していたけれど、まあなんとかなった』というふうにすぎていくから、これからも、まずは心配しないでください」
本書の中で、著者は繰り返し『たいしたことないですよ』『心配しなくても大丈夫』と若い読者に向けて語りかける。
少女だったときに欲しかった言葉がそこにあった。
中でも私が最も心打たれたのは、カナディアンインディアンのエピソードだ。
「初潮がきたとき、お祝いをしてもらいましたか。 カナダにもともと住んでいた先住民であるインディアンの女性たちは、初潮をむかえた女の子たちにには盛大にお祝いをしていたそうです。『これであなたも毎月生まれ変わるようになった』と。
『少女のための性の話』(三砂ちづる/ミツイパブリッシング)
(中略)
毎月、毎月、生理がくるたびに、いろいろなことがあったけど、わたしもまた、ここで生まれ変わろう、いいことも悪いこともあったけど、ここで新しい自分になれるのだ、と思ってください。 女性のからだはなんでも流していける。よきことも、そうでないことも、さらさらと流していける。それを毎月くりかえしていると、ある日、生理が終わってしまったとき(それを閉経、っていうのですけれど)、あなたはすっかり成熟していて、やさしい笑みとともにどんなことでも受容できるハラのすわった大人の女性になっていて、毎月の生理がなくても、なんでも流していけるすてきな人になっていることでしょう」
生理を語るとき、私たちは女同士でも「おなか痛い、つらい、休みたい」と言いがちだし、男性やメディアに対しても「女はこんなに大変! この痛みを思い知れ!」と、あたかも生理が「女の負の象徴」であるかのように叫び続けてきた。
生理がとても重い女性もいるし、生理についてとことん無知で理解のない人もいるから、つらさをアピールすることが悪いとは思わない。
しかし、自分にも、周囲にも「つらいつらい」と言い続けるうちに、生理は「悪」だと刷り込まれてしまってはいないか。
生理もPMSも、つらいだけのもので、無ければ無いほうがいいものなのか。
生理のよい側面についてなんて、誰も教えてくれなかった。
『女は毎月生まれ変わる。生理があるからこそ、いいこともそうでないことも、さらさらと流していける』
という著者の言葉に出会ったときの衝撃は、三日三晩かかっても語りつくせない。生理に対する目が、180度変わったのはそれからだ。
毎月、生理のたびに私は新しくなる。先月より今月、今月より来月の私はよりよく、生まれ変わる。そう思うと、毎月の生理がほんの少し、楽しみになる。
かがみよかがみは「私は変わらない、社会を変える」をコンセプトにしたエッセイ投稿メディアです。
「私」が持つ違和感を持ち寄り、社会を変えるムーブメントをつくっていくことが目標です。
恋愛やキャリアなど個人的な経験と、Metooやジェンダーなどの社会的関心が混ざり合ったエッセイやコラム、インタビューを配信しています。