「2回だね」。
確かに、買う時彼はそう言った。
「買ってすぐと、しばらくして思い出したように使う2回。それ以外は買ったことすら忘れてるよ」
まぁそれもそうだ、こいつは私のことをよくわかっている、とは思いながらも、結局私はどうしても気に入ってしまったアロマディフューザーを買ったのだった。

気分転換に始めた模様替えで、部屋の奥から見つけた物たち

リモートワークになって、ちょうど一週間が経った。最初は「わーい朝ギリギリまで寝れる!」「家から出ないから節約できる!」と、どちらかというとプラスなことの方がいいのかと思っていた。しかし、もう二日目には飽きていた。景色が一切変わらず、朝から晩まで部屋にいる。思いの外苦痛だった。
どうにか気分をあげられないものか上げられないものか。そこで、久しぶりに部屋の模様替えをすることにした。

するとまあ、出てくる出てくる。お店で見たときは、「これはもう運命の出会い!買わなかったら一生後悔する!!」と思った品々。家に帰ってしばらくはうきうきで眺めるものの、いつしかそこにあることが当たり前になるとともに、そっと忘れていき、棚の中に片付けられ、そのまま忘れ去られるのだった。

好きなものに囲まれるということは、幸福感をとても高めてくれる

あ、これヨーロッパに旅行したときに買った、鳥の羽根のペン。これはディズニーで買ったシール。たくさん出てくる素敵な物たち。模様替えは、出てきた小物たち一つ一つの想い出を辿っていたから、なかなか終わらなかった。
模様替えが終わった後、とても気分が晴れやかになった。3段ボックスを縦から横にし直して、物を飾るスペースを増やした。いらない物は処分した。自分のお気に入りだけに囲まれた空間。なんて素敵なんだろう。

これまで、平日は家と会社の往復、家に帰っても寝るだけ。土日はひたすら寝るか、外に遊びに行くか。そんな生活で、部屋が綺麗に保たれるわけも、愛着が湧くわけもない。
でも、模様替えをきっかけに、自分の日常がとても愛おしくなった。

おしゃれなティーポットで紅茶を蒸して(いつもは家で紅茶を入れる余裕がない、入れてもマグカップにティーバッグを入れるだけ)、花びらの入浴剤を浮かべて(いつもはシャワー、しかも朝)、そして眠るときにはアロマディフューザーを焚く(私の人生で3回目の登場)。
部屋にいるのがとても大好きになってしまった。それどころか、起きるのも、寝るのも、食べるのも。一つ一つの動作を大切に行えるようになった。

家にいる時間が増えたからこそ、日常を大切にしようと気づいた

コロナのせいで、行きたかったライブも、研修で4月だけ東京にいた友達との約束も、いろいろな楽しみがだめになってしまった。もともとずっと家にいたら気が狂ってしまうタイプの、圧倒的アウトドアの私。でも、これ以上被害を減らすためにも、そして、大切な人たちの大切な人である私自身を守るためにも、家にちゃんといようと思う。でも、大丈夫。好きなことに囲まれて、外に出られるよになったらやりたいことや行きたいことリストを作って、遠くて会えない友達とzoom飲みをして。家にいる時間もちゃんと充実させていく。

そういえば、アロマディフューザーを買おうとする私を嗜めてくれた彼は、今は元気でいるだろうか。電話したら、きっと会いたくなってしまうからできなかったのだけれど。今なら、絶対に会えないから、電話してみてもいいかもしれない。