私に初めて彼氏ができたのは、高校一年生のときだった。同じ学校の男の子で、クラスは違ったが、同じ部活動に所属していたため、ほぼ毎日顔を合わせる仲だった。部活、勉強やそれぞれのクラスのことなど、他愛もない話をするうちに距離が縮まっていったのを覚えている。

高校一年でできた、初めての彼氏。楽しく幸せな関係は受験まで続いた

付き合うことになったきっかけも、今思えば高校生らしいなと思う。バレンタインデーの日、本命とは言わずとも私がチョコを渡したのだが、その夜、「お礼も兼ねて」と彼からメールがきて、その後電話で告白された。私は、いいなと思っていた人から告白されたことと、初めて誰かと付き合うことになった嬉しさでいっぱいだった。電話だったためお互い顔は見えなかったけれど、私の喜びやはにかみは、声に表れていたと思う。

私も彼も、高校生にしては落ち着いているタイプで、付き合っているときも穏やかな時間が過ぎていった。特に問題や大きなケンカもなく、交際は順調に進んだ。

しかし、楽しく幸せな関係も、ずっと続いたわけではなかった。高校3年生の秋、いよいよ受験が近づいてくるというときに、私は勉強と彼との交際のバランスがうまく取れなくなっていたのだ。器用なタイプの人であれば、勉強と恋愛をどちらも完璧に両立できるのかもしれないが、私は、勉強に集中したいときに彼から連絡がきたり、土日にデートに誘われたりすることに、イライラし始めていたのだ。どちらか一つを選ばなきゃいけない、なんてことはなかったのに、私は受験勉強に重きを置きたいと思ったのだ。彼と私の気持ちは少しずつ離れていった。そして、「ごめんなさい」と私から別れを切り出した。そのときなぜか勉強に集中したい、と言えず、理由をうやむやにして関係を終わらせてしまった。彼の存在が日常からなくなったことで私も少しの寂しさは感じたものの、別れた直後に友人から彼が熱で3日も学校を休んでいると聞いたときは、罪悪感を感じたのを覚えている。その後彼とは、直接話すことはほとんどなくなった。廊下ですれ違ったりしても、お互い何と声をかければいいのかわからず、何となく気まずい日々が続いていった。

大学に進んでも、高校3年生のときからの気まずい関係がモヤモヤに

春になり、私たちは別々の大学に進学することになった。日常的に顔を合わせることはなくなり、彼との関わりといえば、高校の部活のOB会で見かけるくらいになった。大学生になり、しばらくしてから、私に新しい恋人ができた。風のうわさで、彼にも大学2年生になったときに同じサークルの後輩の彼女ができたと聞いた。そのとき彼に恋愛感情はなかったし、彼に新しい彼女ができたことを嬉しく思う気持ちもあった。でも、心のどこかで、高校3年生のときに別れたきり、気まずい関係が続いていることにモヤモヤした感情が残っていたのも事実だ。

SNSがあるから、モヤモヤした気持ちに整理をつけることができた

その状態に変化が起きたと感じたのは、SNSがきっかけだった。ある日、何気なくFacebookを見ていたとき、彼が私の知らない人の投稿にタグ付けされているのを見た。写真が複数枚あったので見ていると、そこには彼と女の子が二人で映っている写真があった。その写真には、仲間からのコメントと見られる「いつまでもお幸せに!」という言葉があり、それを見た瞬間、“あ、これが、うわさで聞いた彼女か”と察した。そのままFacebookを閉じてもよかったのだが、私は、投稿に「いいね」を押した。彼の新しいスタートを応援したい気持ちと、自分の中のもやもやに終止符を打ちたい気持ちの両方が混じっていたと思う。

そして数か月後、逆のことが起きた。私と当時付き合っていた恋人が共通の知り合いの食事会に参加したあと、二人で同じ投稿にタグ付けされたのだ。私と恋人が映っている写真には、「○○くんと●●さんカップルも参加してくれました!」と説明がついており、誰が見ても付き合っていることは一目瞭然だった。何となく恥ずかしい気持ちがありながらも、数日後投稿を見てみると、彼も、その投稿に「いいね」を押してくれていた。

私が彼がタグ付けされていた投稿に「いいね」を押したときの気持ちが彼に届いていたとは思わないし、私も彼が「いいね」を押してくれたときの気持ちはわからない。それでも、私は、お互いに「いいね」を押し合えたことで、一歩前に進めた気がしたのだ。

SNSは恋愛と相性が悪いのかもしれない。しばしば、投稿に嫉妬したり、投稿がきっかけで浮気がばれたり、負の出来事を引き起こすこともある。それでも、私はSNSがあるから、気持ちに整理をつけることができた気がする。