嫉妬するよりも「負けないくらい幸せになろう!」って思いたい
【04】小野美由紀さん×かがみすと
※早川書房よりご恵贈いただきました。 4月16日に発売された作家・小野美由紀さんの短編小説集『ピュア』。「出産するためには女が男を食べなければいけない」という異様な世界を描きながらも、現代と通底するテーマは「性別によって役割が固定された社会での、女の(あるいは男の)生きづらさ」です。かがみよかがみでは、著者の小野美由紀さんを招いて、読書会を開催。参加したかがみすとの感想を紹介します。
※早川書房よりご恵贈いただきました。 4月16日に発売された作家・小野美由紀さんの短編小説集『ピュア』。「出産するためには女が男を食べなければいけない」という異様な世界を描きながらも、現代と通底するテーマは「性別によって役割が固定された社会での、女の(あるいは男の)生きづらさ」です。かがみよかがみでは、著者の小野美由紀さんを招いて、読書会を開催。参加したかがみすとの感想を紹介します。
※『ピュア』(小野美由紀/早川書房)のネタバレを含みます
ルールの中で優秀な成績をだすヒトミ
形だけではルールに乗っ取っているけど不満だらけのマミ
ルールから外れたところで自分の幸せをみつけるユミ
ピュアには上記の3人の女の子が出てくるのだが、今の私は完全にマミだなと思った。
中学・高校時代の私はヒトミだった。常に学年で成績上位を目指していたし、校則を破らない真面目ちゃんだったから。自分の気持ちを丁寧に素直に伝えることにおいてはヒトミに及ばないけど。
敷かれたレールから外れた人生を歩むことを選んだ勇気のあるユミはまさに大学時代の私だ。在籍していた高校の9割が推薦で大学に進む中1人だけ海外の大学を選んだ。そして知り合いが全くいないアメリカで自分らしく生きることを知って人生が楽しいと思うようになった。社会で言われる「普通」から外れていた頃の私だったけれど同時に、無敵でもあった。
今はマミだ。両親が安心してくれる大手企業と言われる会社に就職し、社会人らしく毎日メイクをして出社する。でも不満だらけ。本当は化粧なんてする時間があるならあと10分寝たいし、髪の毛だって自分の好きな色に染めたい。社内で物事を円滑に進めるための根回しなんて面倒だからやりたくないし、下っ端の仕事である飲み会のセッティングなんてもっとやりたくない。
物語でマミはユミを傷つける。そのやり方は極端すぎて正しいと思えないが、今まさにマミ状態である私にはマミの気持ちがとてもよく分かった。
私も自分を置いて次のステージに進む友達がいたら嫉妬してしまう。仲のいい友達に彼氏ができたら置いて行かれた気分になるし、友達から結婚の報告を受けたら(そんなに結婚したい訳でもないのになぜか)羨ましいと思う。自分はルールを守っているのに、ルールを守らずに幸せになっている人がいたらそんなの不公平だと思ってしまう。最近だと外出を自粛しましょうと言われている中で全く気にすることなく外出している人がいることを知るとずるいと思ってしまった。
それでも、私は友達の彼氏との仲を壊したことはない。もしかしたら事情があって出かけているかもしれない人に対して「こんな大変な時に外出しているなんて非常識です」なんて言ったりしない。それは私が人を傷つけることは言うべきではないと自覚し、自制しているからだ。
マミもきっと自制していたのだと思う。でもついに耐えられなくなって、嫉妬が積もり積もってユミを傷つけてしまったのだろう。そんな自分の欲望やわがままに素直になったマミをあなたは悪人だと思うだろうか。
私はマミの最後の行動を100%悪とは思えなかった。友達の大切な人に手を出すという友達としては許されないことをしたかもしれないが、自分の気持ちに従って友達に自分の気持ちを伝え行動を起こすという行為自体は私にかっこよくうつった。
ただ残念に思ったことは、ユミを傷つけたことでマミもユミも決して得はしなかったということだ。誰も得しないのであれば、なぜ私たちは誰かを傷つけてしまうことをしてしまうんだろう。幸せな人を見て嫉妬して傷つけるのではなくて、「私も負けないくらい幸せになってやろう!」と思えないのだろう。どうすればみんながお互いの幸せに素直に喜べるようになるのだろう。
その答えは考えても考えてもやっぱり分からなかったけれど、とりあえず私は、マミはマミでも他人を傷つけないマミでいようと思った。他人が自分と異なった生き方をしていてもそれを尊重したい。
いや、正直なことをいうとマミではなくユミになりたい。自分が一番輝いていたと思えるユミに。
かがみよかがみは「私は変わらない、社会を変える」をコンセプトにしたエッセイ投稿メディアです。
「私」が持つ違和感を持ち寄り、社会を変えるムーブメントをつくっていくことが目標です。
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