誰にも言えてなかったけど、私、ずっと愛に飢えてた。

中3以降、恋人が途切れたことはない。なんの自慢でもない、別に見た目がいいわけでもなかったけど、私の好きなタイプは「私を愛してくれる人」、それだけだったから。
幸か不幸か、どのタイミングでも「誰にでも親切でいつもニコニコしてて尽くしてくれそうな女」には一定の需要があった。日本にいる間に一番長く続いたのは4年。その彼氏も、遠距離になって別れてしまった。

誰から見ても、貞操観念がちょっと足りていなかった

遠距離ができないくせに1年単位で住む国を変え、その新境地で夜は前の国に残してきた彼氏と電話しつつ、昼は新たな「男友達」と出歩く…遠距離の彼氏がいるなんておくびにも出さずに。
そんなこんなで、時には同時に2カ国に恋人がいたりした。乗り換えるのは、いつも必ず一夜を共にしてからだった。誰から見ても、貞操観念がちょっと(日本社会の尺度で見たらあまりにも)足りていなかった。

いつも、いつでも触れあえる距離に守護者が欲しかった。抱きしめて欲しかった、なんなら四六時中「大丈夫だよ」「大好き」「本当に可愛いやつだな」「愛してる」なんて言葉を渇望していた。

そのくせ毎回めちゃくちゃ重い女である。本当にその相手が大好きなのだ。日本の友達から「将来は?」とか聞かれるたびに、「 遅かれ早かれ結婚する」ってリプして、半年後に違う恋人ができてる破天荒ぶり。

私を愛してくれる「彼氏」という存在が欲しかった

なぜ、そんなにも愛に飢えていたのか。

陳腐で月並みで、でも確信を持って言える原因は、「自己肯定感」が低かったから。

友達はいるし、家族もいる。でもみんな、私が見せてる「その関係性に適した面」が好きで一緒にいてくれてるわけであって、裸の自分を360度愛してくれる人ではなかった。少なくとも、私はそう感じていた。だからこそ、たとえ体目当てでもいい、私を愛してくれる「彼氏」という存在が欲しかったのだ。

自分自身も、その場に合わせたキャラづくりのおかげで自分がどんな人間なのか、まるっきり迷子だった。親の前では勉強熱心で夜の話なんて一切知らないウブな娘な顔して微笑むけど、女友達との飲み会はこの前のカーセックスの話で盛り上がってて、彼氏の前では普段大人しいけど夜はドSなギャップキャラで通してた。

こんな多面性を前にすると、果たしてどれが本当の自分なのかわからなくなるのは至極当然で、もっというと自分の長所とか短所とか「え、どのキャラでの長所短所?」みたいな話になってくる。

一言で言うと、自分を見失っていたのだ。

で、その結果として中毒のように他人からの愛を求め、物理的に離れてしまったら恋人を乗り換え、そのくせどんどん落ちていく自分の貞操観念(もっと言うと自分の価値みたいなもの)にますます自己肯定感が下がっていた。悪循環だね。

恋愛依存は変わっていないけれど

さあ長々書いてきたけれど、今の私はどうなのか。

結論から言うと、恋愛依存は変わっていない。変わったものは、自己肯定感、そして(従属的に)彼氏である。
シンプルに、自分を認められるようになった。

いいんだ、これで。私は寂しがりやだけど、少なくともウサギよりはストレスに強い。
誰かに迷惑かけない限り、何をしたっていい。

そんなことを自分に言い聞かせ、前の彼氏を振った。そう、今回は乗り換えじゃない。今まで乗り継ぎ0分の無茶な乗り換えをしてたんだけど、今回は前の電車を降りてから次のチケットを買うまで(次の人とデートするまで)5日くらいさまよった。
…たったの5日って思う?うん、私もそう思う。それでも0よりは長いし、倫理的にやばいポイントは回避してる、そうでしょ?フリーになれば、たとえ多少遊んだって誰にも迷惑はかからない。遊ばなかったけどね。

隠すのも、無理に演じるのも、よくないってことを学んだ

もっというと、今回の彼氏には自分の恋愛遍歴も、彼と付き合えそうだって思ったから5日前に元彼を振ったことも、二股してた時期があったことも、遠距離が全然できなかったことも、全部正直に話した。
その上で、付き合おうって話をした。この時点で、同じ国に居られるのはあと3ヶ月だった。彼が祖国に帰っちゃうから。

隠すのも、無理に演じるのも、よくないってことを学んだ。そんなことするから後々嘘つきだとか契約違反だみたいな、第二の自分からの叱責に苛まれるのであって、事前に「私ってこんな人、付き合うメリットとデメリットはこれとこれ」って相手に言えるようになれば、すごくスッキリした。

その後の3ヶ月は本当に楽しかった。今まで通り恋に溺れ、私この人と結婚すると友達に言いまくる脳内お花畑な日々。
ひとつ変わったのは、失う怖さに苛まれなかったこと。「もし彼が私の恋愛遍歴知ったら…」とか、今までは毎回どこか怯えてる節があったけど、乗り換え歴の多さも織り込み済みの契約なら、もう無敵だ。

で、冗談みたいな「3ヶ月、短かったな」「もっと一緒にいるかい?連れてってよ」って会話を経て、私は10時間超のフライトでお持ち帰りされた。今は彼の祖国にいる。

一番の近道は自分で自分を愛すること

今ならわかるよ、恋と愛の違いも、恋の感情も。

恋は、自分にないものを探し求めた結果の羨望と「このお宝をゲットしたい!」っていう欲。あんまり自分に自信がなくてもできちゃったりするもの。

愛は、相手を丸ごと受け止めて、たとえ短所ばっか集めてこねくり回しても、「あー本当あんたは愛おしいな」って思えて、同じように自分の短所もさらけ出せる、一緒に「その個性はアイデンティティなのか、直したいところなのか」ってのを話し合って、直したいなら努力するし協力する、アイデンティティなら「そんな君を愛してるよー!」ってハグできる、そんな感じ。で、そもそもお互いの短所を見せ合うのって、自分に自信ないとできないんだよね。

自分を客観視して、自分を愛する。それができて初めて、他人との恋→愛のステップアップができるんじゃないかな。

これは、恋愛依存だと思っていた私が、恋と愛の違いを知り、実は今まで他人からの愛の搾取に勤しんでたけど、一番の近道は自分で自分を愛することなんだ、って知るまでのお話。