「これって都合のいい女だよね、つらい」、「気づいたら身体だけの関係になっちゃってた」
そんな乙女の嘆きは割と多い。かがみよかがみのエッセイを読んでいても、悲しさを抱えている子が多いなあと感じる。わかる、実は私も約4年間片思いをして、現在も継続して曖昧な関係を続けている相手がいる。だけど私は「都合のいい女」じゃない。むしろ彼を「都合のいい男」だと思っている。

もちろん私だって初めは「私は手のひらで転がされる都合のいい女なんだ」と思っていた。だけど4年の間に考え方ががらっと変わったのだ。

彼と出会って約半月経った夏の暑い日、私たちは身体の関係を持った。私はその前から片思いをしていて、抱かれたその日はドキドキで一睡もできなかったくらい、甘酸っぱくてふわふわしていた。のに、「付き合ってくれる?」という私の告白に「それはなしかな」と返され、その瞬間、私と彼はセフレになった。

悲しみや切なさを受け入れた「敗者」の私

セフレになって1年近くは、「関係を続けていたら彼女になれる日が来るんじゃないか」と期待し続けていた。抱かれるたびに彼が近づいてくるようで、だけどやっぱり再びフラれることが怖くて、好きだという気持ちを隠して、彼の要求に答え続けていた。
心はいつだって不安定で、彼を想ってわんわん泣くなんてしょっちゅうだった。だけど誰にも相談できなかった。セフレが好きだなんて、やめろってすぐに言われる。そう言われたくなくて、じっと黙って悲しみや切なさを受け入れた。

私から求めても良いのかという不安と、明日にも切り捨てられるのではないかという恐怖の中、彼の様子をうかがいながら生きていたように思う。嫌だなって思われたらどうしよう。誘って断られたらどうしよう。だけど一緒にいたくて、すがらずにはいられなくて、頻繁に食事やデートに誘って一緒に出掛けた。
惚れたほうが負けなんて言うけど、あの時の私は圧倒的な敗者だった。

そうこうしていたらあっという間に月日が流れ、3年が経とうとしていた。片思いは止められず、徐々に身体を重ねる回数すら減ってきていたけど、この長い月日で私は少しずつ彼という人間を理解し始めていた。どうやら私のことは嫌いではなくて、誘いを断る時は絶対何かしらわかりやすい理由があるようだった。つまり私が嫌で断る、というわけではないのだ。もしかするとこれは私の思い込みだったかもしれないけど、こう思い込んだほうが楽なのでそうすることにした。
私のことが嫌で誘いを断ることがないとわかると、誘うハードルがぐっと下がった。付きまとっていた「恐怖」が少し薄れていき、気軽に誘いまくった。

そしてさらに転機が訪れる。3年目の夏、彼と大喧嘩をしたのだ。そこから3ヶ月間会話も連絡もせずに断ち切った。ああ、こうやって終われるんだ、好きを捨てられるんだ、と思った。
のに。
ある日彼が体調不良だと聞いて思わず「大丈夫?」とLINEを送ったら、即効元の関係性に戻ってしまったのだ。しまったと思ったが後の祭り。捨てた好きが大集合。しかも前以上に雰囲気が良くなって、まさに雨降って地固まる。全て元どおり。

彼とは対等。もう「敗者」じゃない

だけど喧嘩の前と大きく違ったのは、彼に対しての期待値がぐっと下がっていたことだ。要求レベルが下がったと言ったほうがわかりやすいかもしれない。
一回距離を置いて、全部捨てたことが大きかったみたい。全部捨てて、好きだけが戻ってきた。おかげで変な理想とか全部なくなった。
私は彼に期待していない。彼女にしてとか、優しく抱いてとか、別にもう強く求めてない。
ただ、唯一、一生私との縁を切らないでください。ふらっと上野に飲みに行ったり、谷根千を散歩したりしましょう。時々気が向いたら、また私を抱いて。私を、手放さないで。

え、これって都合のいい女じゃないかって?いやいや違う、これは考え方の話なのだ。「私が可哀想」な恋愛、悲しくない?
私はもう敗者じゃないし、むしろ彼とほぼ対等までたどり着いたと思ってる。都合のいい時に抱かれているだけの女じゃない。
どうせお前はキープだよ、って?うるさい、私だって彼はキープのつもりでいるわ。別で彼氏も探したりするし。今は”たまたま”フリーだから、気が向いたら時々寝るの。好きな時に彼を誘って、面白そうな飲み屋でお互い思う存分好きなお酒を飲んで、私の心を満たすの。愛という名の液体で。

ここにあるのは海のように深い愛と、振り回されない強い心。たくさん遠回りしたけど、ようやく辿り着いた今。もう私は何も怖くない。

けどまあ、今後何かしらの確変が起きて彼が「つきあおう」なんて言ってきたら、「仕方ないから付き合ってあげる」って言ってあげる。
そう言う私の顔はきっと涙でぐしゃぐしゃになっているんだろうな。