最近、私の中でようやく小さくなった嘘がある。

嘘じゃないけど嘘、の言葉を吐いていた元恋人。私は現場を押さえた

数年前の話だけど、2年半付き合った恋人が浮気未遂をしていた。(本人曰く浮気ではないらしい、認識の違いって難しいね)
後で知ったことだが相手は新しいバイト先で出会ったというめちゃくちゃ可愛い女の子だった。その子からのメッセージ「恋人いるの?」(前後の文脈含めた意訳:あなたのこと恋愛的に気になってますけど、あなたはどうなの?)という問いかけに対して、元恋人は「恋人いるような顔に見える?(笑)」(意訳:オッケー!)と、嘘はついてないけど嘘、みたいな、しかも超絶妙な自虐を含めた私が嫌いなタイプのダサイ言葉を吐いていた。結局その台詞で相手側の女の子は彼のことを「彼女いない」認定し、結果彼の家にお泊り。という現場を私は押さえた。

当時の私は女のカンが冴えていた、というか何でも最悪な状況から推測して考える病みタイプだったので、なんとなく「今恋人の家に女がいる気がする!!」と夜中10時にピンときて、何も証拠はないのにそれなりに距離(片道2時間)のある恋人の家に始発(4時台の電車)で突撃した(アポなし)(非常識)。
道中、事情を話した友人から「素人でもできる効果的なビンタのやり方」について書かれた記事のURLが送られてきた。
到着は朝の6時半で勿論恋人と女の子は寝てたわけだけど、そんなの知らなかったのでとりあえずピンポンを鳴らした。2回目のピンポンで恋人は半目で出てきて、私と気付くなりドアをすぐ閉めようとした。私はその瞬間ドアに足を差し込み(まるで集金に来た怖いお兄さんみたいな手際だった自負がある)、「入っていい?」と一言尋ねた。
恋人は「今、ええと、人がいるけど…フニャフニャ」みたいな言葉にならない言葉を発し、玄関のドアに手をかけ虚空を見つめるマネキンと化したので無視して家の中に入った。普段私の靴があるべき場所には女物のローファーが鎮座し、普段私の歯ブラシが置いてある場所には虚無が広がっていた。心臓を握りつぶされるようなショックを受けたが、「ビンゴ!!!!」と勢いよく内心ガッツポーズをして気持ちに蓋をした。

人生初の修羅場。女の子は一番常識があり、事情を察してくれた

女の子はベッドで寝ていて、とりあえず服を着ているかの確認(?)でもするか、と布団をぺらっと捲った。幸い服は着ていた(不幸中の幸い)。その瞬間彼女は目を覚まし「えっ誰?!?!」とパニックになった。朝目が覚めて目の前に見ず知らずの女がいたら超怖いよね、その気持ちわかる~。こちらも「えっ誰?!」と言いたいところだけど、私は「彼女です」と言うとこの子にショックを与えてしまうのでは?!と変なところで気を配り、あろうことか「○○くんの姉です!!!!すみません彼女さんですか?」と訳の分からない嘘をついた。女の子は「いや彼女じゃないですけど…友達で」と答えてくれて、ほっとすると同時に人生初の修羅場になった。

事情を察した女の子は「異性泊めて彼女さんが傷つくと思わなかったの?!?!」と彼にガチギレをしてくれたりと、とにかくこの中で一番常識のある人で、一番怒ってくれた。しかも博多弁で、怒ってても可愛いので思わず「方言、可愛いですね!」と言うと、「今方言とかそれどころじゃなくないですか?!」と正論を言われ反省した。(空気が読めなかった)
その後、私はというと、ここには書けないくらいのあまりにも失礼な発言に持参した麦茶を彼の頭にかけさせて頂いたりした。(今では本当に反省しています)(友人が送ってくれたビンタの記事で得た知識は活用できなかった)

浮気未遂の現場で分かった、恋人がついていた大きな嘘に打ちのめされた

この時恋人につかれた絶妙な嘘、というか相手の女の子についていた嘘までまるっと含めると、恋人の存在を消したことに始まり、高校時代は文化部だったのになぜかスキー部と陸上部設定だったり、私含め元カノの存在も何名か消されていたりと色々あるのだが、この嘘は私にとって超巨大な嘘で、年単位で苦しめられた。人を傷つける嘘、ついちゃダメって小学生の時習わなかったか?!と本当にキレ散らかしたし、しばらくは重度の鬱状態でただ天井を見上げるだけの日々が続いた。

それでも、人は半分死にながらでも歩けば徐々に回復する。私は半分ゾンビだったけど、心のどこかで冷静な自分が「時間が経てば傷は癒える」、「環境を変えて色んな人と話そう」と働きかけてくれて、突然行動力が5000倍になった。(当社比)
元々インドアで人見知り、引きこもり気味だったのに、片っ端から知り合い(そんなに親密ではない)を遊びに誘い、新しい部活1つ、他大学のインカレサークル2つに突撃し入部、以前からずっと好きだったブランドでのアルバイトを始めた。終いには「元恋人との思い出が蔓延る日本が無理!国外逃亡する!!」と喚き、自分の研究している画家が没後100周年でちょうど良かったので、パスポートを初発行し、初海外初一人旅で彼の生まれ故郷であるウィーンに一ヶ月短期留学した。(そんな不純な動機で?と思われるかもしれない)
行動だけ見ればフッ軽すぎて、完全に別人だった。

ちなみに留学先では、13年連れ添った妻と離婚して3年目の「アルコールでしか傷は癒えない」と死んだ魚の目で話すオーストリア人男性と、5年付き合った彼女と別れてヒッチハイク中の台湾人男性と友達になった(類は友を呼ぶ説)。その後色々あって台湾人男性にせがまれ彼を足で踏んだり(??)、防犯用のドイツ製催涙スプレーを誤って自分の目に噴射して目が使い物にならなくなったり(私を見ていたイタリア人女性にfunny!と言われた。何が?)、帰国後またすぐ台湾に一人で行くことになったりした。インドアな自分が、一年に二度も海外に行くとは思わなかった。

そうこうしていたら、段々天井以外を見られるようになってきた。それでも鬱っぽさは続くので、ある日インカレサークルの先輩(いつもアルコールを摂取している)に、「過去のことで毎日気分が鬱になってしまい抜け出せない」と相談した。
「今は時間をやり過ごしているだけで偉いという感覚を持とう。私は3年(!!!!)かかってようやく些細なことに苦しめられなくなったし、半年じゃまだまだだよ。人生、破綻(!!)してることの方が多いんだからのらりくらりと生きれば?」
そう言われた時に、浮気未遂事件から半年間、とにかく行動!で躍起になっていた自分が、「3年かぁ。気楽にいこう、しばらくは苦しくても仕方ないや。」という気分になり、ストンとようやく落ち着いた。

そして今。元恋人の絶妙な嘘は、当時の自立できないヨチヨチ歩きの自分にとっては本当に大きい嘘で、イメージ的には木星が顔面に直撃したくらいの印象だった。でも年々それは小さい嘘になってきて、冥王星から今ではそこらへんのバスケットボールくらいになった。こうやって小さくなったボールなら私は地面に叩きつけまくるドリブルができるし、ドリブルができるようになったらあとはぶん投げるだけだ。でもせっかくの経験だし投げるのは勿体ないので、この文章を書くことでダンクシュートして、人生にポイントが入ったことにする。