悲しくないなんて、本当に、そんなわけあると思う?

もう会いません、それが終わりの合図

半年ほど続いたセフレとお別れをした。付き合っていたわけではないので、お別れというほどのものでもないけど、もう会いませんとだけ伝えた。始まりが曖昧であれば、終わりも曖昧だ。

好きで好きでたまらなかった人と、セフレになって半年が経った。クリスマスも、バレンタインも、ホワイトデーも一緒にいた。結局なんなの私達?と思うことはたくさんあったのだけれど、確かめる勇気もなければ、自分から好きだと伝えるほどの可愛げもなかった。

「ずるい」。相手が欲情しているなと感じられる瞬間が、何にも代えがたいくらい好きという悪趣味の私。例に漏れず、行為に及ぶ前ベッドの上で煽りに煽っていたらそう言われた。そんなの、こっちはずっとずっとずるいって思ってるよ。欲しがるのは、身体だけじゃなくて私の全てにしてよ。欲情に満ちた目をして覆いかぶさってくるその瞬間、幸福を感じる反面、いつもちょっとだけ、切なくなる。そしてその切なさをかき消すように、必死に喘ぐ。

「今日で最後にしなくちゃ」、毎回繰り返される無意味な決意は、行為後彼の腕の中で「次で最後にしなくちゃ」にいつも変わっていた。

最初から、終わりだけを考えていた

何かひとつ、魔法が使えたら、ずーっとこの腕の中にいるまま、時間を止めたい。彼女になりたいとか、好きって言って欲しいとか、そんなものはいらないから、とにかくただこのままでいたい。
終わりがくるのがわかりきっているなら、1秒でも長くその時を延ばしたい。
そう願うくらいには子どもだし、どんなに願っても叶わないことを知っているくらいには大人だった。

思えば、ずっと終わりの方法を考えていた。絶望的に合わない箇所があるから、現状の距離感維持がベストの私達。私はなるべく早く結婚したい、だから理性では、なるべく早く離れたほうが良いことは常に理解していた。ずっとどうしたら綺麗に終われるかだけを考えて、その日の準備をしていた。

自分の意思の弱さは知ってる、なにか大きなきっかけがないと、きっと断ち切れない。踏ん切りをつけられるタイミングを見計らっていた時、ちょうど家の更新タイミングだったので、引っ越しをすることにした。彼と同じ街から離れる。前の家も街も気に入っていたのだけど、彼がいる、その一点だけでだめだった。

あなたの言う通り、ちゃんと一人で生きていくね

さよならをいうと決めた日の前夜は、何度もその人の夢を見た。4回くらい、目が覚めては浅い眠りについたのだけど、見事に全部出てきてしまった。未練たらたらじゃないか。
そして、ついにさよならを言うと決めた日である、前の街を出ていく日に彼に会った。「新しい家にも遊びに行くね」、そう言う彼に「今までありがとう、もう会いません」と伝えた。
彼は悲しい目をして、「そんなにばっさり切るの?でも君は、本当に俺がいなくても一人でも生きていけそうだね」と言った。

一人でも生きていけそうなんて、あなたがいなくても大丈夫だなんて、本当にそうだと思ってる?もしそう思ってるのなら、やっぱりあなたは私のことをなんにも分かってなかったんだよ。

今まで甘やかしてくれてありがとう。大好きでした。嘘、今でも本当はまだ好きで、もしラインが来たらきっとどうしたらいいかわからなくて泣いてしまう。でも、私は前に進むね。例え強がりでも、一人で生きていけそう、そのあなたが思うかっこいい私でいるふりをするね。さよなら。