「ニキビは青春の証やけん気にせんでええ」
ニキビに悩み、何を試しても効果が出ない私を鼓舞するために祖母がかけた言葉だ。
皮膚科の先生には「おばあちゃんになってもニキビができる人はいないんだからいずれよくなるよ」と慰められた。
「今、この青春を謳歌しなきゃ何の意味もないんだよー!」と心で叫んで、私は適当に感謝の旨を伝えた。
青春の大多数をニキビに奪われた
私は小学5年生から高校2年生までの青春の大多数をニキビに奪われた気がする。
まずはど定番の小学生の頃、男子達に揶揄われるというアレ。
傷心を見抜かれたら虐められると思っていた私は泣いてたまるか!というプライドもあり、笑いながら「コラー!」と男子達を追いかけ回した。
だからいつまで経っても面白がられた。
一発泣いてしまえれば収まったかもしれないのに…。
「子どものやったことだから」と片付けてしまえばそれまでだけど、あの時負った傷が何気一番深い。
それはもう同窓会で再会した時も愛想笑いの裏で「私は覚えているからな。タンスの角に小指を100万回打つけてしまえ!」と呪いを施すくらいに根に持っている。
ああ、当時の私を抱きしめてあげたい…。
中学生になるとニキビ面を隠すためにマスクをつける日が増えた。
人と目が合うと「うわあ、肌汚な」と思われているんだろうなという恐怖で会話が上の空。
やたら距離の近い人がお化けより怖かった。
そんなだから恋の方もだめだめ。
「あ、私この人のこと好きかも」
と気がついた途端、ニキビ面を見られたくないの一心で避けて避けて避けまくった。
その後、高校生になった私はマスクを卒業した。
マスクをつけるとニキビが悪化して、ますますマスクが精神安定剤になるという悪循環から意を決して抜け出したのだ。
ニキビのために出来る努力はしたが全て水の泡だった
ここまでの話を聞いて「どうせ脂ギッシュな食べ物や甘いものばかり食べているんでしょ?ちゃんと洗顔して枕カバー替えてる?睡眠が足りてないんじゃない?」と思う方もいるだろう。
その台詞、耳にタコができるほど聞いた。
もちろんどれも通過済みである。
皮膚科は10軒回った。漢方も試した。即身成仏にでもなるのか?というくらい摂生した食事(小麦や白砂糖等は論外)をしたり、ビーガンになってみたり。母に頼み込み、中学生にして1万円以上するニキビに効くと噂の化粧水を使ったり。かと思えばシンプルが一番だと聞き、無添加にこだわったり…。
取り憑かれたように出来る全ての努力はしたが水の泡だった。
もっと早くピルと出会えていたら…
そんな私が藁にも縋る思いで手を出したのが低容量ピルだ。
暇さえあれば「ニキビ 治す 方法」で検索をかけていた私は、以前からピルがホルモンバランスによる肌荒れに効くことを知っていた。
しかしあの頃、周りにピルを飲んでいる子はいなかったし、ピルに対して懐疑的な目が多くハードルは高かった。
だが長年ニキビに苛まれていた姿を間近で見てきた母の後押しでレディースクリニックへ行き、ピルの服用が現実になった。
すると私の場合は、3ヶ月が過ぎたあたりから今までの苦労が嘘のようにニキビが沈静した。
化粧ノリに感動し、気になる人を見つめちゃったりもできる!
あーーー!!なんて素晴らしい世界なの!
と、同時に「どうしてもっと早く手を出さなかったのだろう」と、とてつもない後悔が襲ってきた。
もしも日本がピルに寛容な社会だったら、「そろそろブラジャーつけた方がいいかもね」くらい普通に「生理辛いならピル飲んでみる?」という会話が生まれて、私は早くピルと出会えたのかな。
そしたら私の青春はもっとちゃんと青春だったのかな、と今でも想像してしまう。
だからもし肌荒れに悩んでいる方がいたらピルという選択肢も視野に入れてほしい。ピルが日本人に受け入れられてほしい。そう切に思う。
ピルが受け入れられるために、3つのことを共有したい
そのためには以下の3つを老若男女みんなで共有したい。
1.ピルを飲む女は不純という考えはむしろ恥ずかしい
2.ピルの目的は避妊だけではない
3.ピルを入手しやすくしよう(費用・売り場)
1.「ピルを飲む女は不純」という考えは世界的に見ても古すぎる。
ピルの避妊率はコンドームより確実でもしもの時自分の身を守れる。
不本意に、もしくは意思に反した性行為のもと、子どもができたとしても「ピルを飲む女は不純」だとか言ってくる人達は私たちを守ってはくれない。
そんな時だって冷ややかな目線を浴びせるだけだ。
ならばそんな人々の声に怯みたくない。
キャッチャーだってファールカップつけるじゃん。
自分の身を自分で守ろうとする、それの何がいけないの?
2.ピルは避妊だけでなく、ホルモンバランスからくる肌荒れ・気分不安定・異様な眠気・ドカ食い等々の月経前症候群(PMS)、生理痛・月経量の改善のために処方されることもある。
私はたまに月の半分しかキラキラできていないな、と感じる。
一週間は生理前でもう一週間は生理中。
それが何十年も続いていくと考えたら、薬使ってちょっとくらい楽させてくれと思う。
そうそう。私は学校帰りに制服姿でレディースクリニックにピルを受け取りに行った時「産婦人科=身篭っている」と勘違いしている人から心ない言葉を投げられたことがある。
ショッキングな出来事だったが「歳食ってそんなことも知らないのか。無知は怖~い」と思った。
3.世界に比べ日本のピル(アフターピルも含め)の値段はほとんどの場合、保険適用外だしべらぼうに高い。
また、世界ではドラッグストアに陳列されているピルも日本では病院に出向いて処方箋を貰わないといけない現状だ。
以上。
月経の悩みがある方は費用や副作用(風邪薬にだって副作用はあります。私は飲み始めの1ヶ月間、時折気持ち悪くなりました)も視野に入れ、自分自身と、あるいは家族やパートナーと相談してみてほしい。
10年後、20年後の女の子達にはつるっつるのお肌で学んでほしい
もう過ぎてしまった青春を受容するため、私は私に「ニキビは青春の証だった」と言い聞かせる。
でも10年後、20年後の女の子達にそんな台詞は言わせたくない。
みんなつるっつるのお肌で学べ!走れ!遊べ!人を好きになることを恐れるな!楽しめ!だけどたまには泣け!どんな青春も抱きしめろ!
そしてそんな未来を残すのは私達の仕事だ。