「結婚なんてどうでもいい、仕事に生きる」と言えたなら、どんなに格好良かったか
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時々、虚しくなる。
私の「人生ゲーム」が、この7年間、ずっと止まったままだという事実に。
仕事、仕事、仕事。
ひたすら仕事に没頭した20代だった。
新人時代はできないことばかりで、周りに迷惑ばかりかけていた。
家に帰ってから、お風呂でこっそり泣く毎日。
でも、経験をひとつずつ重ねるうちに、こなせる業務の幅はどんどん広がっていった。
苦しいことも多かったけれど、達成感もたっぷりと味わった。
社会人7年目となった今では、ひとつのチームを任されている。
試行錯誤しながらも、もう泣かない。
真っすぐ前を見据えて立っている。
だから、仕事漬けだった20代を、悲しく思うつもりはない。
でも、とある週末。
SNSに投稿された友人の言葉に、なんとなく気持ちが沈み込んだ。
「29歳になりました!そりゃ子どももできるわー」
…そうだよね。
巷の29歳は、結婚して、家庭をつくって、母としての人生を歩みだす頃なんだよね。
ふと見渡せば、SNSはウェディングドレスや赤ちゃんの笑顔で溢れていた。
ちょっと前まで、旅行や飲み会の写真が大半だったはずなのに。
いつの間にか、友人との時間よりも、家族との時間の方が重視されるようになっていた。
結婚、出産、子どもの成長、マイホーム購入…。
みんな順調に人生のルーレットを回して、変わっていく。
なのに、私だけ、時間が止まったまま。
仕事の目標数値ばかり追いかけているうちに、「人生ゲーム」では置いてけぼりになっていたのだ。
「結婚なんてどうでもいいわ、私は仕事に生きるのよ」とでも言えたなら、どんなに格好良かっただろう。
ところが、私は残念ながら、そこまで仕事ひとすじに生きる覚悟も持ち合わせていなかった。
「いつか、私だって人並みに幸せになれる」と盲目的に信じていたのだ。
なんの努力もしないままに。
急に、自分の人生が蝉の抜け殻みたいだと思った。
7年間がむしゃらに働いて、大人の形をした殻だけは作り上げたけれど、肝心の中身が空っぽなのだ。
でも、ちょっと待てよ。
「女は29歳になったら結婚してなきゃいけない、子どもを産んでなきゃいけない」なんて、あまりにも古い考え方じゃないか。
もう令和の時代だ。
人生のあり方は、もっと多様化していいはずだ。
昭和に生まれた「人生ゲーム」みたいに、正解が一方向に規定されている必要はない。
「30歳になった女性は結構です」なんて古臭い偏見を振りかざしてくる人になんて、モテる必要ないだろう。
そんな人、私はきっと好きになれない。こちらから願い下げだ。
私は、これまでの7年間に誇りを持っている。
みんなが従来型の「人生ゲーム」を進めている間、私は仕事という名の「別の舞台」で確実に前進していたのだ。
だったら、その生き方を肯定してくれる人を、これから存分に探せばいいじゃないか。
コロナが落ち着いたら、そんな人を探す旅に出よう。
きっと、20代の仕事のように、苦しいこともたくさん味わうだろうけれど…きっと最後に振り返れば、楽しい旅になるはずだ。
恥ずかしがることなんてない。
胸を張って生きよう。
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