文章の冒頭から、身も蓋もないことを言おうと思う。
こんなテーマを掲げたエッセイ募集にこんな喧嘩を売るような文章送り付けたら、もしかしたら大勢を敵に回してしまうかもしれないな。
それでも私は主張したい。
「ふつう」で居たくない、「ふつう」を超えたい。
そう思っている時点で、あなたはどこまでも「ふつう」なんだということを。
誰しもが思春期に一度は通る、個性的な人間になりたい、という道。
その個性的になりたい、という主張がすでに、万人が主張する没個性的なもの。
そんな現象と似た感覚を、「ふつう」を超えたい、という言葉から私は感じてしまう。
「ふつう」で居たくない、という思いは、つまりどこまでも自分が「ふつう」であることの裏返しだと思っている。
私自身「ふつう」な人間に、「ふつう」な女性になりたくないとずっと思っていた。
「ふつう」に大学を卒業して、「ふつう」にその辺の会社に勤めて、「ふつう」に結婚して、「ふつう」に子どもを産んで。
そんな「ふつう」の暮らしをしたくないと思っていた。大学在籍中の20歳前後の当時の私は、紛うことなく「ふつう」の人間で、「ふつう」の大学生で、「ふつう」の1人の女性だったから。
「ふつう」なんてぼんやりとしたわけのわからないもの
結論から言うと、今の私は多分「ふつう」ではないんだろう。
だってあの頃みたいに、「ふつう」を超えたいとは今はもう微塵も思わないのだ。
あと正確に言えば、「ふつう」がいかにぼんやりとしたわけのわからないものなのかが分かったから。
ちょうど今この文章を書きながら、だんだん「ふつう」という言葉がゲシュタルト崩壊してきたみたいに。
そんな「ふつう」でない私の仕事は、四国の片隅という地方に住みながらどこの会社にも所属せず、一応ギリギリ20代という若さでフリーランス業。最近やっとなんとか自分1人の飯代ぐらいは賄えるようになってきた。
都会ならいざ知らず、全国各地の地方在住経験がある人からすればこれが「ふつう」でない事は十二分に理解してもらえるだろう。
去年大好きな人と結婚した。今は当然一つ屋根の下で一緒に暮らしているし、将来的には彼との子どもも確かに欲しい。
けれど夫も私も兼業バンドマンで、財布は生活費以外完全に別々。結婚前から変わらず2人共朝ごはんは食べないし、面倒くさいから弁当も作らないし、夕食だってインスタントの日もざらにある。それを文句の1つも言わず、けらけら笑い飛ばしてくれる夫には正直頭が上がらない。
こんな私は世間的にはきっと、「ふつう」の枠には到底収まりきらない不良妻だろう。昔思い描いていたように確かに「ふつう」に結婚したし、今後「ふつう」に子どもを持つ未来もきっとあるんだけどなあ。
欲しいものを全部全部手に入れる。そうやって生きてきた結果が今の自分
確かに私は昔から常々「ふつう」で居たくない、「ふつう」を超えたいと思いながら生きてきた。
けれど今の「ふつう」じゃない状況を、その一心だけで手に入れたのかと言われると違う。
自分の思うままに、心のままに、全力でやりたいことを叶える。
何かを捨てて何かを手に入れるんじゃない、私は自分の欲しいものを全部全部手に入れる。
そうやって自分の強欲さに忠実に、人に迷惑を掛けない程度に我儘に生きてきた結果が今の「ふつう」を超えた自分なんだと思っている。
「ふつう」じゃない自分になって、「ふつう」が羨ましくなることも正直時々ある。
特に大きく感じるのは仕事についてかな。曜日なんて関係なく自分の身一つで働かなきゃお金は手に入らないし、保険や年金、住民税、年末調整確定申告その他諸々書類仕事も全部自分でしなきゃいけない。しんどくなったら人気のない喫茶店や会社のトイレでサボっていても、一定額の給料が振り込まれていた営業マン時代とは訳が違う。
あとやっぱり、当然「ふつう」でないことに苦言を呈される機会だってもちろんある。
でもその度、昔どこかで手に入れた金言が私の頭の隅をちらつくのだ。
苦言を呈する相手が自分の人生を全て保証してくれるわけじゃないし、全責任を持って自分を幸せにしてくれるわけでもないんだから、と。
やりたい事ややらなきゃいけない事を全部全力でやる
私と同じように、「ふつう」を超えて生きる人たち。あるいは胸を張って「ふつう」を超えずに生きる人たち。
私はそれぞれに強い意志を持った、「ふつう」じゃない人も「ふつう」の人も大好きです。これからも一緒に強くしたたかに、そして我儘に生きていきましょう。
「ふつう」な自分が嫌で「ふつう」を超えたい、と思っている人たち。
「ふつう」を超えようと思いながら生きている限り、多分ずっと「ふつう」のままです。
「ふつう」か「ふつう」じゃないかなんてことは一旦横に置いて、やりたい事ややらなきゃいけない事を、まずは全力で全部やってみて下さい。
きっとそれが多分、あなたが「ふつう」を超える起爆剤の1つになるはずなのですから。