大好きな人と結ばれて、家族になる。
離れ離れの寂しい夜を過ごさなくてよくなる。
生涯寄り添ってくれる人がいる。
なんて素敵なことなんだろうと、私は思う。

社会人になり、大学時代の同期が婚約したり結婚したりし始めた。そんな友人たちの姿を見て、いつか自分にもそんな日が来るのだろうかと憧れを募らせる。

そんな浮かれた気持ちとは裏腹に、思うこともある。もともと別々の場所にいて、趣味も仕事も将来の夢も違う2人が一緒になるって、たやすいことではない。違って当然なのだけれど、2人が違えば違うほど。

今の恋人と一緒になれたらどれだけ幸せか。しかし譲りたくないものが

私には結婚願望があるし、今の恋人と一緒になれたらどれだけ幸せだろうかと考えることも多々ある。しかしその感情とは全く別に、譲るのをためらうものがいくつかある。

その最たるものが、苗字だ。
たかが苗字されど苗字かもしれないが、私にとっては死活問題なのだ。

私の苗字は珍しい。それに加えて全国展開のとあるお店の略称と同じ音なので、ウケ狙いでそのお店でアルバイトもした。ローソンで働くローソンさんが以前話題になったけれど、ちょうどあんな感じ。

自己紹介をすれば珍しい苗字だねと言われ、先述のお店の社長の娘かと聞かれたことも一度や二度ではない。無論私自身も、親戚以外で同じ苗字の人には出会ったことがない。

この家に生まれただけなのだが、かなり気に入っているし自分のアイデンティティのひとつである。
ニックネームのようでもあるし親しみをこめて苗字で呼んでくれる友達も多いので、一生変えないでいたいと中学生の頃から言っているくらいである。

意地でも相手に変えてもらおう、ではない。変更への抵抗は互いにある

結婚を意識する年齢になり、なんとなく「結婚してもこのままがいいな」と言うと、親世代には「それならお婿に来てもらわないとね」「相手が長男じゃなければできるかもね」と返されるが、どうも引っかかる。

お婿に来てもらうという表現にはお家制度の名残のような時代にそぐわない違和感を感じるし、恋人は残念ながら長男だ。いや何も残念なことはないのだけれど。

この話を恋人にすると、「それならじゃんけんで決めよう」とは言ってくれるが、彼が負けたとて本当に変えてくれるのか。夫婦別姓の事実婚でも…とも思うが「せっかくなら同じ苗字がいい」とも言ってくれるし、なにより何かあったときに法律上の夫婦でないと不利益を被ってしまうケースがありそうだ。

だから意地でも相手に変えてもらおうという話ではない。
苗字を変えることに抵抗があったり、実際に手続きが面倒だったりするのはどちらにとっても同じことだ。

当の本人たちが声をあげていけば、変わっていくのだろうか

ただ、女性だからといって無条件に自分の苗字を犠牲にすることはしたくない。それに結果として私の苗字を残せても、外で何か言われるであろうことは想像に難くない。私以上に彼の方があれこれ言われるだろう。それもあまりいい気はしない。

そんなに珍しいものでなくても、苗字が自分のアイデンティティのひとつであって失ってしまいたくない女性はたくさんいるだろう。そう思っている当の本人たちが声をあげていけば、変わっていくのだろうか。

法律上の夫婦でも別姓を名乗れる社会、女性側の苗字を残す選択も当たり前の社会になることを願って。