付き合って3年で結婚した。ゴールインという感覚はまったくなかった。
私は働きすぎで鬱になり、休職してそのまま会社を辞めていた。25歳のこと。結婚どころじゃないのに、親友たちは結婚していく。私だけ、置いてきぼり。
不安に駆られて結婚を急いだ。とはいえそんな状態では、彼も「うん」とはさすがに言えない。自暴自棄になった私は、彼にこう言った。
「カンボジアに移住する」
彼との初めての海外旅行があっけなく決まった
今思えば、本心ではなかった。彼を試すような気持ちと、もうどうにでもなれという諦め。ちょうど、派遣の仕事でよく面倒を見てくれていた方がカンボジアの仕事を紹介してくれたのだ。富裕層向けマンションの管理人の仕事で、面白そうだと思った。私は、全てを投げ出したい気持ちと1人でそんな遠くへ行けやしないという弱音の狭間にいた。
彼に相談すると、反対はされなかった。引き止めてほしいくらいだったのに。やっぱり結婚のことは、全然頭にない。逆に前向きに見えて癪に触ったが、こんなことを言った。
「一度、旅行してみよう。2泊3日くらい」と。そのまま航空券を取り、ホテルを予約し、彼氏と初めての海外旅行があっけなく決まった。
旅行の1週間前、海外耐性のない親に、今までにないくらい怒鳴られ泣かれ、反対されたが、彼が一緒ということで許可が出た。胸が痛かった。愛されてるってこういうことなのかな?
結局私は、どこへ行ったって私のまんま。何も変わらない
旅行当日、すぐにハプニングは起こった。ベトナムでの飛行機の乗り換えで失敗しそうになったのだ。私は、彼がいなければカンボジアの土さえ踏めていなかったのである。出ばなを挫かれた。
こんな奴、1人で海外に住めるわけない!! 焦りと落ち込みに苛まれながら、プノンペンの空港に着いたらタクシーでぼったくられそうになり、また怯える。やっとの思いでホテルにたどり着いたときは、もうクタクタで、部屋の鍵を閉めたときの安堵感は忘れられない。すぐに打ちのめされた。
「怖い!もう帰りたい!」
…涙が出てきた。自分の甘さが恥ずかしくて仕方なかった。日本より貧しい国に来れば、人生変わるんじゃないかなんて、浅はかな考えの自分を見せつけられた。こんなところまで彼を連れてきて、呆れられてるだろうな。結局私は、どこへ行ったって私のまんま。何も変わらない。悔しい。
『結婚を焦ってもいいんじゃない?』と私は声を大にして言いたい
ウジウジする私を、彼は優しく抱きしめてくれた。茶化しもせず「泣いていいよ」と、ポケットからハンカチを取り出した。本当にありがたかった。絶対この人と結婚しようと思った。
「私が変わる!」
帰国後、私は就職活動を始めた。カンボジア旅での喝は、確実に私を変えた。鬱になって会社を辞めてから実に半年後の出来事だった。もうそれからはトントン拍子に話が進み…。
付き合って3年で結婚した。「絶対この人」と思う人と。あとで、私がカンボジアに住むといったときなぜ引き止めなかったのか聞くと「ただ後悔してほしくなかったから」と一言。それ以上は教えてもらえなかった。
今、どうしようもない闇の中にいたとしても、いつか抜け出せる。それは抜け出したと思っても、また飲み込まれることもあるのだが、そのときはまた、立ち止まればいい。アナ雪のエルサみたいに、誰かといたら傷つけてしまう不安が大きいと思うけど、信頼できる人の手は、絶対放さないでほしい。そして、信頼できる人はこれからだって必ずつくれる。
なぜなら、闇を直視したら人生は動き出すから。結論、『結婚を焦ってもいいんじゃない?』と私は声を大にして言いたい。焦ったからこそ前に進めることもあるから。