私はアイドルオタクだ。子供の頃からキラキラしたアイドルが好きで、ステージを観るととても感動する。コンサートのチケットを取って、音楽番組を欠かさず観て、雑誌を買って、たまに“ハイタッチ会”なんてものがあれば、「キャーキャー」言いながら参加して。

私は今、純粋にステージを愛するオタク心に加えて、ごくごく健全な範囲内ではあるものの彼らに密かな“トキメキ”を求めている。

私は「トキメキ」を求め、足掛け10年以上アイドルオタクをしてきた

ずっとずっとアイドルオタクをしてきたけれど、“トキメキ”を求めるようになったのは決死の覚悟で挑んだ恋愛が終わった一月後のことだった。

私はその日初めて、あるアイドルグループのコンサートに行った。ステージは素晴らしく、鳥肌が立つほど感動したので、絶対にまた彼らのステージを観に行きたいと思った。終演後にハイタッチ会がついていることをちゃんとチェックしていなかったので、心の準備も楽にできないまま、私はハイタッチに挑む羽目になった。

これまでだって足掛け10年以上、アイドルオタクをしてきたんだ。今をときめくBTSのコンサートだって何度も行ったし、それこそハイタッチの経験もある。素晴らしいステージを観て感動し、キラキラした彼らを近くで見ることができて「キャーキャー」言うだけだ。それだけだ。それだけのはずだった。

なのに、どうしてだろうか。その日だけは違った。ハイタッチをした瞬間に、何か特別なことをされたわけでは決してないのに、グラグラとハマってしまって、彼らの次のスケジュールを心待ちにするような生活に突入してしまった。

推しが私を覚えてくれて「あー!お久しぶりです」と言ってくれた♡

アイドルオタク歴は長かったものの、いわゆる“雑食”のため、何度も同じグループのコンサートやイベントに行くことはあまりなかった私に、新しい厄介な変化があった。

推しが私を覚えたのだ。3回目に会った時、「あー!お久しぶりです」と言ってくれたところから始まり、そのうちに名前も覚え、今では顔を見ると、来た来たと言わんばかりのしたり顔で出迎えてくれる。

ステージはもちろん素晴らしいし一流だけれど、接触の時間がくれるトキメキは全く違う効果がある。まさか本当に恋をしているわけではないが、私は人生に“トキメキ”が欲しかったのだ。

恋愛は苦手だ。もちろんいい人もいるだろうし、いい恋愛をしている人もたくさんいる。その愛が本物ならば。けれど、残念ながら私がこれまでとおった恋愛は、相手の男にとって、わかりやすい言葉で言えば“遊び”でしかなかった。

ゴールのない遊びでも構わない。トキメキがあれば楽しいだろう。でも、トキメキを得るためには、我が身を差し出さなければいけなかった。ご飯も映画もショッピングもイルミネーションも、あくまでその夜のための前座だ。

心も身体も支払って、彼氏とのトキメキを買うのは「コスパが悪い」

私の方から「なくていいよ」と言って、すぐベッドに誘ったら彼らは両手をあげてなしにしただろう。無駄なお金を使いたくないだろうから。無駄なゴマスリをしたくないだろうから。

待ち合わせたときの嬉しそうな表情、疲れたときに聞く優しい声や、笑顔や、くるくると変わる表情や…そんなトキメキは、彼氏が相手でも無償ではないのだ。

それならばいっそ、そのトキメキに払うのは、わかりやすくお金であってほしい。心も身体も支払って、彼氏とやらのトキメキを買うのはあまりにもコスパが悪いだろう。

アイドルにトキメキを求めるのは健全ではないかもしれないし、虚しいだろうと言われるかもしれない。けれど、私はここまで理解した上で、しかも彼らの夢を応援するという清い名目のために気持ちよくお金を払って、トキメキをいただいている。