妹ができるよ。
そう言われたとき、思ってしまった。
え、今?
14歳、それはそれは多感なお年頃。「あらぁー兄弟多いのねえ、お父さんとお母さん仲良くていいわねぇ」なんて言われたら「この人わたしのことおちょくってんのかな?」とひねくれた思いが頭の中をぐるぐる。そういえば、『14才の母』なんてドラマもあった。

私と顔がそっくりの14歳離れた妹。生まれた瞬間から我が家のアイドルだった

ところが、いざ出産に立ち会いをして、生まれた赤ちゃんを目の前にしたらなんだか込み上げてきて、妹は別にいなくてもいいかななんて気持ちはどっかに消えていった。生まれた瞬間から我が家のアイドル。我が家は妹を中心にものすごい速さで回った。
笑った!泣いた!吐いた!なんか喋った!
あまり嫉妬した記憶がないから、年が離れていたのも良かったんだと思う。

妹は、成長するにつれ、私に顔が似てきて、性格はあんまり似てこなかった。別に驚くことじゃない。
けれど、密かに、これは私だけの大事件だった。
サザエさんのエンディングでお腹が痛くなる一時期を過ごした私に、クラスで人気者の妹ができるなんて。自分が可愛くないのは顔のせいだと思ってたけど、自分とそっくりな妹はどう見ても可愛い。「だって私可愛いから」だそうだ、本人が言うなら間違いない。もしかしたら、私が思ってるよりもこの先なんとかなるかもしれない、という希望になった。

小学校で妹はクラスメイトに「わたしには歳の離れた姉と兄がいる」と自慢し、「へーすごい」となっているらしかった。我が家の失敗談はおもしろエピソードとしてすぐクラスメイトに伝わってしまう。見栄っ張りな私は「妹にとってちゃんとした姉っぽくいなければ!」と気合を入れる羽目になり、実際ちょっとだけ頑張れた。

「明日も自分は生きてるって信じてるからだよね」。私は妹の感性が好きだ

ある日、妹が書いた小学校の作文を母が偶然見た。
『私の兄は、話をしていると、すぐ自分の得意分野に話題を持っていこうとします』。
先生からのコメントは『面白いお兄さんですね』。
そういえば妹が兄と話す時の相槌は「ふーん」「なるほど」「たしかに」を絶妙にブレンドしていて、もしかしてこの子話聞いてないなとは思っていたが、そんなことを考えていたのか。

新しく覚えた言葉を書くのがブームだったことがあり、妹の机にあどけない字で「あびきょうかん」と書かれたメモが置いてあった。意味がわからない。

かと思えば、はっとさせるようなことを時々言うことがあった。
「ねえ私この間気づいちゃったんだけどね、目覚まし時計をセットするってことは明日も自分は生きてるって信じてるからだよね」
そんな感性が好きだ。

これからも幸せに生きていて欲しい。私は、妹の幸せを願っている

現在は、お互い離れて暮らしていて、月に1回かそれ以下のペースで手紙のやりとりをしている。学校でこんなことがあった、と書かれた手紙を読んで、どんどん変わっていく妹の筆跡を見て、これからも幸せに生きていて欲しいなと思った。親のような姉のような、不思議な気持ちだ。

私にとって妹は、初めて、純度100で幸せを願うことができた相手だ。一人の尊敬できる人間として。